2021年10月16日

生きづらさを自分で解消する方法とは?『プリテンダーズ』小野花梨×見上愛が自己肯定感について語る

生きづらさを自分で解消する方法とは?『プリテンダーズ』小野花梨×見上愛が自己肯定感について語る

映画『プリテンダーズ』が2021年10月16日に公開される。映画『人狼ゲーム』シリーズやドラマ『カラフラブル〜ジェンダーレス男子に愛されています。〜』などを手がけてきた熊坂出監督の長編映画だ。


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主演・花田花梨を務めるのは、ドラマ『親バカ青春白書』(日テレ)や11/1から放送が開始となるNHK朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』に出演する小野花梨。


5歳から子役として活躍する彼女初の長編映画主演作となる。花田花梨は、学校生活に馴染めない不登校気味の女子高生。尊敬するアーティスト・ゴッホのような生き方を理想とし創作活動をするも、なかなか世界に認められないことに鬱屈としている。


そんな花梨の友人・風子を見上愛が演じる。ドラマ『きれいのくに』でも小野花梨と共演しており、またCM「クラフトボス 抹茶ラテ」への抜擢も記憶に新しい。風子は、両親がシンガポールに赴任しているため、一人で暮らす自立した女子高生。あえて周りに馴染もうとせず我が道を貫く花田花梨を面白がり、行動を共にする。

ある日、電車内で人に席を譲り達成感を得た経験から「人は他人に優しくするチャンスを求めているのでは?」と仮説を立てた花梨。わざと視覚障害者のふりをしたり、足が不自由な人のふりをしたりすると、周りの人が”気持ちよさそうに”助けてくれることに気づいた。


他人の揚げ足取りや不平不満がはびこった世界を、優しい世界に変えたいーーこうして、花梨と風子、二人の女子高生によって発足された「プリテンダーズ」の活動がスタートする。「プリテンド=○○のふりをする」が由来のチームだ。

しかし、SNSでバズったのを機に、彼女たちの活動は当初の方向性から外れていく。乗客同士が喧嘩をし殺伐とした電車内に祭りの男たちを送り込んだり、街中にゾンビを出現させて人を混乱させたり……。エスカレートする花梨を風子はたしなめるが、注目を集めている状況に執着する花梨は止まらない。

世界に優しい人を増やすために結成されたはずのプリテンダーズ。花梨の心の奥にある本当の願いは「自分を認めてほしい」という欲求だった。

花梨を演じた小野花梨、風子を演じた見上愛にインタビュー。自分を認めてほしいがゆえに暴走してしまう役を演じた小野、そんな親友を見守る役を演じた見上は、自己肯定感についてどう捉えているのだろうか。


小野「役柄がどんどん素の自分に寄ってきたように思えた」

——小野さん演じる花田花梨と見上さん演じる風子が、渋谷スクランブル交差点で思いの丈を叫ぶシーンを筆頭に、涙を流したり声を張ったりと、感情を強く出すシーンが今作には多いように思いました。感情を作るうえで意識したことはありますか?

小野花梨(以下、小野):撮影前から、監督と話す時間をたくさん作ってもらいました。その過程で脚本もどんどん変わっていったんです。役柄がどんどん素の自分に寄ってきたように思えたので、「大幅に役作りをしなくてもいいように監督が立ち回ってくれたのかな」と思いました。そのおかげで、役作りで苦労することはなかったですね。


見上愛(以下、見上):役を深く理解するための時間を長くとっていただけたので、とても助かりました。撮影に入ってからはスムーズに進んだと思います。

——監督と話し合いながら役柄を作りつつ、脚本の内容も変わっていったんですね。

小野:最初の脚本と比べると、風子の設定も、年齢も変わってます。コロナの影響もあり撮影を中断せざるを得なかったんですけど、その間にも台本が変わりましたね。台本を柔軟に変えられる監督って……。

見上:すごいよね!

小野:本当にすごい。その寛容さや器用さ、すべてにおいて「すごいな……」の一言でした。

再共演した『きれいのくに』での印象の変化

——お二人は『きれいのくに』(2021)でも共演されていますが、撮影されたのは『プリテンダーズ』が先でしょうか?

見上:はい、1年ほど先ですね。『プリテンダーズ』で初共演して、その後『きれいのくに』で再共演させてもらった形です。撮影した場所もたまたま一緒だったので、ご縁を感じました。


小野:そうそう! 2作品で、ロケ地が一緒だったんですよ。『プリテンダーズ』で(村上)虹郎くんと撮ったシーンと、『きれいのくに』でのバーのシーン。どちらも一緒の場所だったんです。

——『きれいのくに』で、凛(演:見上愛)と恵理(演:小野花梨)が整形の相談をするシーンですよね。『きれいのくに』と『プリテンダーズ』2作の間で、お互いの印象に変化は感じますか?


見上:それぞれの作品で、真反対の役を演じていると感じました。私が『きれいのくに』で演じた凛というキャラクターは、自分の顔に自信が持てずに整形をしたいと悩む役。花梨ちゃんが演じた恵理はすでに整形を経験していて、凛の悩みに寄り添う役でした。


でも『プリテンダーズ』では、その関係性が逆になるんです。私が演じる風子は自己肯定感が高い役で、花梨ちゃんが演じる花田花梨は自信が持てずに「世界に認めてもらいたい!」と願う役。風子が花梨を引っ張っていく構図なんです。あまりに真逆の役柄だったので、演じる役に引っ張られて、花梨ちゃんへの印象も変わった感覚がありました。

小野:『プリテンダーズ』で愛ちゃんと共演できていたからこそ、『きれいのくに』の撮影にも不安要素なしで臨めたんだと思います。演じていて安心感がありましたから。何年もご一緒できない役者さんもたくさんいるなかで、短期間で再共演できたことに運命のようなものを感じます。

20代前半の彼女たちが語る自己肯定感との向き合い方

——映画『プリテンダーズ』のテーマに「自己肯定感」があると思います。ご自身の自己肯定感についてどう捉えていらっしゃいますか?

小野:自信が持てる自分になれるように頑張って生きているので、今は「自己肯定感が持てない!」って悩むことはありません。でも、そんな努力をしなければならなかった理由は、きっと自己肯定感が低かったからなんだろうな、と思います。


目の前のことを頑張ってきたからこそ悩むことは減ったけど、過去を振り返ると、不安や満たされない気持ちは確かにありました。今は、年々少しずつ解消されてきているようなイメージです。自分を好きになれるように、毎日頑張って生きてます!

見上:私はなぜか、生まれながらにして自己肯定感が高いんです。自分がやっていることすべてに「頑張ってるね!」って思ってあげられる。自分だけは自分の味方だと思ってるから、他人からの評価で気持ちが揺らぐこともないですね。自分でちゃんと「やり切った!」と思えるかどうかを大事にしているというか。

小野:愛ちゃんは生まれながらにして自己肯定感が高い、レアなタイプだよね、きっと。

見上:そうだと思う。自己肯定感の高低で悩んだことすらないのかも。


——小野さんも、見上さんは自己肯定感が高いタイプだと感じますか?

小野:感じますね。一緒にお芝居をしていても「愛ちゃんは自己肯定感が高い」と感じます。そういった意味でも、貴重で衝撃的な出会いだったと思います。

——熊坂出監督が「キネマ旬報」(10月上旬号)掲載のロングインタビューで、お二人それぞれの印象を語られています。監督も見上さんのことを「自己肯定感が高く、メンタルの強い大人の女性」だと。

見上:そう言われるとちょっと恥ずかしいですね! でも、自己肯定感が高くて悪いことはないと思います。それを盾にして人を傷つけるようなことをしたらダメですけど。自分で自分に「いいね!」と言えること、誰かに評価基準を頼らないことは、この世の中で生きやすいんじゃないかと思ってます。

反対に、自己肯定感が低いことが悪いことだとも私は思いません。自己肯定感を上げた方がいい風潮も感じますけど、無理に自己肯定感を上げる必要もないんじゃないでしょうか。


——その言葉で、ホッと楽になる人が多いと思います。同じインタビューで熊坂監督は小野さんのことを「しっかり経験を積み、スタッフにも細やかな配慮ができる大人になったぶん、何かを我慢してるようにも感じる」と仰っています。

小野:わ〜、なるほど。確かにいろいろなことに対して諦めてるのかもしれません。だけど、それも悪いことじゃないと思います。そりゃ100点がいいけど、諦めが肝心な時だってある。98点の自分でも許してあげられるようになってきました。

誰かが我慢しなきゃならない場面ってたくさんあるし、私だけじゃなくてみんなも我慢してる。みんなで助け合って、少しずつ補い合いながら生きていけたらいいな、と思いますね。みんな我慢せずに生きるなんて、きっと無理だから。

きっと私、究極の平和主義なんです。みんなで少しずつ我慢して、少しずつ助け合えば、もっと優しい世界になるんじゃないかな。


見上「生きづらさを抱えずに生きているつもりでも、それなりには苦しさを覚えている」

——この映画を通して、その願いがたくさんの人に伝わると思います。これから『プリテンダーズ』をご覧になる方に、一言メッセージをお願いします。

小野:この映画は、観る方によって感想がガラッと変わる作品になっていると思います。主人公の花田花梨にまったく共感できず、嫌悪感を覚える方もいるかもしれない。風子ちゃんの気持ちにものすごく共感する方もいるかもしれない。


でも、それでいいし、それがいいんです。自分のことを否定せずに、思いのままに観て、思いのままに感じてくださればうれしいです。

ただ、私自身、花田花梨にものすごく共感して、救われたと思っています。もし同じように花田花梨に共感して「苦しいのは自分だけじゃないんだ」って、少しでも救われる方がいたら最高です。


見上:私も花梨ちゃんと同じ気持ちです。自由に観てもらえたらうれしいし、自由にしか観られない映画だとも思います。

花梨ちゃんが花田花梨に共感するのと同じように、私自身も風子に似ているなと感じます。生きづらさを抱えずに生きているつもりの人でも、それなりには苦しさを覚えている。自分と同じように悩みを抱えながら生きている人がいるんだと想像しながら、優しく世界と向き合いたい。そんな風に思ってくれる人が増えたらハッピーです。この『プリテンダーズ』がきっかけのひとつになったらうれしいですね。

(撮影:冨永智子、取材・文:北村有)

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(C)2021「プリテンダーズ」製作委員会

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