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2021-10-21

映画『CUBE 一度入ったら、最後』箱の中は社会の縮図!?脱出劇で浮き彫りになる人類の闇



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菅田将暉主演、清水康彦監督作品『CUBE 一度入ったら、最後』。ヴィンチェンゾ・ナタリが監督した1997年公開映画『CUBE』の邦画リメイクだ。入口も出口も見当たらない、謎の立方体の部屋=箱(CUBE)に閉じ込められた6人の男女を起点に、物語は進む。

菅田将暉が演じるのは29歳のエンジニア・後藤。そのほか、岡田将生演じるフリーター・越智、杏演じる団体職員・甲斐、斎藤工演じる整備士・井手、吉田鋼太郎演じる会社役員・安東、田代輝演じる中学生・宇野など、多彩な役者陣が登場する。

なぜ6人は、箱の中に閉じ込められてしまったのか。ここから出る方法はあるのか。

情報が少なすぎる小さな環境で、それぞれのアイデンティティを奪われた6人が、手探りで脱出を試みる。その過程で浮き彫りになったのは、人類の醜い闇だった。

箱の中=社会の縮図!?関係性の変化が恐怖を増幅

気づいたら閉じ込められていた立方体の部屋。それはまるで小さな箱のよう。手動ハッチで天井や床、四方の壁に通じた別の箱へ移動できるようになっているが、命を奪う危険なトラップが仕掛けられている部屋もある。



どの部屋にどんなトラップが仕掛けられているのか、入ってみないとわからない。大した自己紹介もできないまま、初対面の人間とともに、生きるか死ぬかの博打を何度も打たないといけないのだ。気が狂っても仕方ない状況である。

お互いの顔と名前、最低限の情報を共有しただけなのに、会話を重ねるにつれ「関係性」が浮かび上がってくるのが不思議だ。箱の中は社会の縮図のようになっていく。



たとえば、会社役員をしている安東(吉田鋼太郎)。箱の中は会社ではないのに、自分が最年長というだけで妙に偉そうな態度をとる。居丈高に振る舞い、年長者を敬うことを言下に要求するのだ。

そんな態度に対して密かに不満を募らせるのは、コンビニでバイトをするフリーターの越智(岡田将生)。常に自信なさげで落ち着きがなく、周りに合わせて行動し、自分で物事を決めようとしない。この二人はことあるごとに衝突し合う。現代でもよく見られる「年長者 VS 若者」という縮図が浮かび上がって見える。



周りのことはお構いなしでグイグイと行動力を見せる者もいれば、限りある情報から何かを得ようと慎重に行動する者、社会や大人に抑圧されロクに意見も言えなくなっている子供、そして、一歩引いて全体を観察するだけにとどめる者もいるーー小さな箱が社会、そして6人の男女が箱の中に生きる人類だ。面白いほどに関係性が浮かび上がってくる。そして、その関係性の変化が、密閉された空間内にはびこる恐怖を増幅させる。


箱の外に出られるのは「成功者」なのか?

次々と襲いかかってくるトラップに立ち向かいながら、ヒントを集めつつ進んでいく6人。目指すは箱からの脱出だ。どこへ向かえば出られるのか、トラップを避けるにはどうすればいいのか……。限られた情報を頼りに少しずつゴールへ近づいていく気配は感じとれる。

しかし、心身ともに疲弊していく6人の脳裏には、ある思いが掠めたはずだ。

自分はこの箱の中で死んでしまうんじゃないだろうか。

限られた人間しか出られない仕組みになっているんじゃないだろうか。



生きていると、いま自分がいる組織、家庭、仲間、社会そのものが大きな「箱」のように思える瞬間がある。人は、近くにいる人間と物の見方や感じ方が似てくるらしい。価値観が似通っていて、一緒にいると安心できる相手を選び、グループを作る習性もある。それは古来より人類が生き残る術のひとつだった。

箱に閉じ込められた6人の男女。一人の心で恐怖が増幅するにつれ、それが周りに伝播するまでに多くの時間はかからない。「死ぬかもしれない」と誰かが思えば、「死」の方からこちらへ擦り寄ってくる予感がする。誰かを殺してでも外へ出たいと願う人間が現れても、おかしくない環境下だ。



箱を社会にたとえてきたが、誰かを蹴落としでもしないと這い上がれないと本能的に感じる構図は、まさに私たちが生きている社会と同一ではないだろうか?

この「箱=社会」は、限られた成功者か、ある一定の条件を満たした者しか、生き抜けない構図になっているーーそんなやるせない予感さえ覚えてしまう。

決して「観た後にとってもハッピーになる!」映画ではない。けれど、この社会を生き抜く上での「姿勢」や「居住まい」のようなものを、根本から正すきっかけになる映画だ。

(文・北村有)

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