<疑問>「実話の映画」は、どの程度実話なのか|“Based on” VS “Inspired by”


日本映画には定型文はない?

「日本のいちばん長い日」(C)2015「日本のいちばん長い日」製作委員会

アメリカ映画には上記のような定型文がありますが、日本映画の場合はどうなのでしょうか。あまり、決まった文言は見かけませんよね。

「実話にもとづく」とか「実話から生まれた」などのように、いろいろな書かれ方をしていますが、どのように使い分けられているのでしょうか。

いくつかの配給会社や宣伝の仕事をしている人に聞いてみたのですが、日本では事実の度合いに応じた表記の仕方に明確な決まりはないようです。

ある配給会社の方は、「各々の配給・宣伝会社が、事実にどれくらい即しているかだったり、作品の特色によって決めている気がする」とのことでした。

例えば、恋愛もの・ヒューマンドラマ系は「実話」、歴史ものや社会派映画などは「事実」や「実際の事件」といった言葉を使うことが多いのではないか、とのことです。

また別の方は、劇映画で「実話に基づく」と大きく表記したことはなく、事実とされているものが、どれくらい忠実かの度合いや描き方によって、解説の中で「歴史の真実を描き出そうと試みた」とか「実際の未解決事件の真相に挑む」など様々な書き方をしているそうです。

いずれにしても、事実の度合いを宣伝部は事前に調べて、それぞれの会社や宣伝部の基準に応じて表記を考えているようです。しかし、そこには決まった文言はないので、その都度の各会社・各人の裁量によって決まるようです。
「凶悪」(C)2013「凶悪」製作委員会

面白いのは、「実話」の場合はドラマ系、「事実」は社会派系で使い分ける点ですね。これは事実の度合いよりも、その単語が持つイメージを作品にマッチさせようということですね。確かに「事実」は「実話」よりも固い感じがして、社会派や歴史ものに向いている気がします。

逆に感動のドラマとかで「実話」と書かれると、より一層感動できる気がします。「事実」と書かれるより「実話」と書かれた方が泣けそうな気がするのはなぜでしょうね。

ただ、どの程度事実に即しているのかによって、「実話」と書けるのかについての共通の理解というのは、どうもないようで。その辺りは曖昧なようで、表記によって事実の度合いを事前に把握するのは、アメリカ映画より難しそうです。

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