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2022-02-24

<河合優実インタビュー>映画『愛なのに』で演じた女子高生は「この作品における純粋の象徴」



『mellow』(2020)『あの頃。』(2021)などの話題作を数多く監督した今泉⼒哉が脚本を務め、『アルプススタンドのはしの⽅』(2020)の城定秀夫がメガホンをとった映画『愛なのに』。異色のタッグが実現したラブストーリーにおいて、一回りも歳が上の30代男性に恋をする女子高生・岬を、河合優実が演じている。

河合優実といえば、これまで『サマーフィルムにのって』(2021)や『由宇子の天秤』(2021)などで鮮烈な印象を残してきた。大人の恋愛特有の”難しさ”を感じる本作において、彼女はまたもや新境地を見せている。役作りで意識したこと、映画づくりに対する思いを聞いた。
 

演じた女子高生・岬は「一番真っ当なことをしている」



――10以上も歳上の男性・多田(瀬戸康史)に求婚する女子高生という役柄ですが、演じる感覚は早めにつかめましたか?

河合優実(以下、河合):瀬戸さんがお相手ということもあり、あまり苦労はしなかったです。前もって本読みができたのも良かったのか「岬はこういう子なんだろうな」と何となく思い描いていた人物像が、現場でハマった感覚がありました。

――岬の人物像について、具体的にはどんな想像をされたんでしょうか?

河合:「多田さんのことが好き!」っていう強い思いを軸に、想像を広げていきました。

多田さんの気を引きたくて古本を万引きしてしまったりと、突拍子もないことをする子に見えるけど、あくまでも彼女は、ただ好きな人に「好き」って言いたいだけの女子高生。この作品内で一番真っ当なことをしているのは、実は岬なんじゃないか……と私は思います。

それぞれに事情を抱えて屈折した大人の恋愛が繰り広げられる本作で、”純粋の象徴”のようなキャラクターなんじゃないでしょうか。 



――岬の、多田に対する思いの強さが、行動や言動から伝わってきます。その根源は、どこにあると思いますか?

河合:ある意味おかしくなっちゃってると思うんです、岬は。16歳、狂っちゃってる真っ最中というか。「何がなんでもこの人の心を手に入れる」って強い信念よりも、衝動に任せて始まった恋の病なんじゃないでしょうか。少なくとも、多田さんをものにするために、あざとく頑張ろうっていう打算的な子ではないんですよね。

古本を万引きしてしまったのも、たまたま「好きって言いたい恋心MAXの日」に当たってしまっただけ。「結婚してください」って口に出しちゃったのも、思いの強さゆえに「つい」やってしまったこと。そして、その後戻りできない自分に半分くらいは気付いているんじゃないかって想像しながら演じていました。

――瀬戸さんとは今回が初共演ですね。瀬戸さんに対するイメージに変化はありましたか?

河合:今回、瀬戸さんが演じられた多田という役は、これまで瀬戸さんが演じてこられたどの役ともイメージが違うんですよね。だけど不思議としっくりくる点が、すごく良いと思いました。

瀬戸さんが演じる多田には、岬が好きになるのも納得の人柄があるし、かつ、他の女性に翻弄される情けなさもある。瀬戸さんが本作のようなラブストーリーで主演をされることで、相互作用というか、絶妙な効果をもたらしている気がします。

痛感した”笑いの難しさ”


――岬に好意を寄せる同級生の男の子が、ちょっとかわいそうなことになっていたシーンが印象的でした。

河合:せっかく岬に薔薇の花束をプレゼントしたのに、告白を断られたあと、それを一本一本地面に刺すシーンですよね。私も印象に残っています。

花束を投げた後に「ちょっと待って、一回、地面に刺してみようか」って、監督と細かくやりとりするのを見ていました。どう表現するか難しいだろうな……と思ったんですけど、完成した映像を見たら、とっても面白かったです。

――そのシーン同様に、コメディチックなやりとりも多い作品ですよね。多田との年の差を物ともしない岬の姿勢も面白いです。

河合:岬に関しては、ほとんど監督からの演出はありませんでした。本読みの段階で「もう少しこのセリフの温度を上げてみましょうか」といったやりとりはあったかもしれません。ただ、基本的に役者のどんな表現も受け入れてくれる監督でした。

試写でも、しっかり細部まで拾って、面白くなるように繋いでくださっていて。監督の中に「役」や「表現」に対する明確な答えがあると信頼しながら臨んでいたので、ついてきてよかったと感じました。



――”笑い”については、難しさを感じましたか?

河合:怖かったです。笑いに限らずどんなシナリオにも言えることですが、せっかく面白いセリフがあるんだから、それを無駄にしたくないってずっと思っていました。不安はありましたね。一度撮ってしまったら、もう他の表現は選べないですから……。

ですが、今回ご一緒した脚本の今泉さんは「真剣な人ほど面白い」を追求されている方なので、シンプルに真っ直ぐでいいんだなと気づいてからは、あまり可笑しさを表現することについて深く考えすぎずに演じられたと思います。

共作の映画、独作の小説。エンタメ界隈に思うこと



――多田と岬の関係は、手紙のやりとりで少しずつ深まっていきますよね。河合さんはいわゆるスマホ世代ですが、この設定に違和感はなかったですか?

河合:「手紙のやりとり、良いな〜」って思いながら、自然と受け入れました。気持ちを伝える手段として身近にあるものですし、もらえたら嬉しいですし、離れた存在ではありません。

手紙って、手元に残るし字も見えるし、書いてくれた人のことも想像できますよね。どこでこの便箋を選んでくれたのか、どこで書いてくれたのか、いろいろと考えていると嬉しさも増す気がします。

――これまでにもらった手紙で、特に印象的だったものはありますか?

河合:先日誕生日だったので(12月19日)、友人やファンの方からたくさん手紙をいただきました。どの手紙も嬉しいんですが、特にファンの方から届いたものに対しては、不思議な感覚を覚えます。「ちゃんと見てくれている人がいるんだなあ」って。

直に会ったことがない方から手紙を受け取るって、すごく貴重な体験だと思います。普段お話しできる機会もないのに、自分のことを応援してくれている人がいると実感できる。画面の向こうにいる方たちに、より人間味を感じられる。そんな、限られた体験だと実感しました。

――岬と多田は古本屋で出会います。河合さんは、古本屋にはよく行かれますか?

河合:事務所の前にも古本屋さんがあるので、よく行きます。ここ1〜2年は特に時間ができたので、読書する機会も増えました。

最近読んだのは村上春樹さんの「1Q84」です。3部に分かれる長編だから、こういう時じゃないと読めないと思って。やっぱりトップを走り続けている人の作るものは抜群に面白いなとかなり心に残っていて、たまに思い返します。



――小説や映画などエンタメに触れていると、仕事のことを考えてしまって集中できない方もいらっしゃると聞きますが。

河合:面白い作品、良い作品に触れていると、ちゃんと世界観に引き込んでくれるので没頭できますし、そもそもこの職業は私生活と繋がっている感覚があるので、私は仕事が浮かぶと集中できないということはあまりないかもしれません。

映画と違って、小説は一人で作るもの。そのぶん自由なところがあると感じます。映画には共作による難しさがあるけれど、小説には「書きたいものを一人で書いている」自由さがある。そういった点で、映画と小説とでは受け取る感覚が違います。 

――今後ご一緒したい監督さんがいらっしゃったら、教えてください。

河合:良いものを観るたびにこういう映画に出たいと思うので挙げるのはなかなか難しいのですが、最近では、映画祭で濱口竜介監督の『偶然と想像』を観て以来、一度出会ってみたいと思うようになりました。これまでご一緒されているどの役者さんも「あんな経験はしたことがない」「あんな風にセリフを口にできたのは初めて」と仰っていて。役者としては、ぜひ体験してみたいです。

(ヘアメイク=たかきまりこ/スタイリング=𠮷田 達哉/撮影=Marco Perboni/取材・文=北村有)

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