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2021-10-26

『燃えよ剣』レビュー:同業者が驚愕するほどの岡田准一のすごさ

■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。

91回目の更新、今回もどうぞよろしくお願い致します。

時間は、伸びもするし縮みもする。

物理的にはそんな摩訶不思議なことは起こらないものの、感覚の中では、それが起こるもの。楽しい時間はあっという間にすぎ、辛く苦しい時間は5分ですら永遠に感じる。

最近は短い動画に慣れていき、長い動画を見ることに慣れない人が多くなっていると聞く。(わたしとしては本当に信じられないが)それが時代の変化だというのなら、口を挟むことは出来ないのでしょうか。

しかし、そんな方々には、傑作を観ていただきたい。

2時間半と聞くと長いかもしれない。でも、感覚的には本当にあっという間。

騙されたと思って今すぐスマホをオフにし、映画館へ行き、チケット買って、座席座ってもらいたい。こういった体験があるのだと感動してもらいたい。

騙されてと思って、是非。

傑作に触れてください。

感動を分け合いたいと思わせてくれた、コチラの作品を今回はご紹介いたします!

『燃えよ剣』



原作は司馬遼太郎の同名小説。新撰組副長 土方歳三を主人公に激動の時代を生き抜いた男たちの生き様が描かれたベストセラー作品。累計部数は500万部を超え、もはや知らない人はいないのではないかと言えるほどの小説を映画化。

監督は、『関ヶ原』『検察側の罪人』『日本のいちばん長い日』『クライマーズ・ハイ』など次々に話題作を生み出す日本を代表する監督のひとり、原田眞人。

出演は、新撰組副長・土方歳三に岡田准一。土方と思いを交わすお雪に柴咲コウ。新撰組局長・近藤勇には、鈴木亮平。沖田総司に、山田涼介。新撰組筆頭局長・芹沢鴨に、伊藤英明。他にも、藤堂平助には金田哲、斎藤一には松下洸平、山﨑烝には村本大輔、永倉新八に谷田歩、山南敬助に安井順平、岡田以蔵に村上虹郎。さらには、高嶋政宏、市村正親、柄本明などの名優が名を連ねている。



まだまだ書ききれていませんが、俳優陣は適材適所にピタリとハマる実力派ばかりが揃っています。どこをみても過不足ないチームに、まさに日本を代表し世界で通用する作品。

有名時代小説『燃えよ剣』。わたし自身、昔から何度も読んでいまして、映画化の話、そしてそれを原田監督がメガホンを取ることを聞いてから、今か今かと待ち望んでおりました。

見事な"完全"映画化でした。原作の良さを残しつつ、監督のエッセンスも加味され、後世に語り継がれる作品となるでしょう。

濃密な約6年の激動の幕末を148分という尺の中に、ギュッと詰め込まれ、削がれることのない勢い、顔の横を時代が駆け抜けていくほどの迫力でした。

冒頭から、ラストまで止まることもなく、緩まることのないスピード感。台詞の応酬、流れるような役者同士の交わり、美しい画、目まぐるしく変わっていく情勢とそれぞれの胸の内、土方が回想しながら新撰組のことを語り、仲間たちを懐かしみながら自身の最期へと向かう構成に、見事というしかありません。

早いテンポで進んでいくものの、早すぎるということは決してなく、その時代に生きる息遣いをそのまま感じ進んでいくようで、観ている側は、自然と受け入れずっと張り詰めた緊迫した状態で集中を削がれることなく没入する。気づいたときにはエンドロール、、そのくらいの一瞬の出来事でした。

あまりの早さではあるが、しっかりと、どのシーンも印象深く残っているのがすごいこと。画面に映るひとりひとりが自立し、表情の裏に持つ本心での鍔迫り合いがアチコチで起こっているというのがそういったことを生み出すひとつの要素なのかもしれません。

池田屋事件をはじめ、様々な殺陣も見所のひとつ。




土方が絡んでいる殺陣では、主演の岡田准一が殺陣のデザインもしている。殺陣にはそのキャラクターが培ってきた行動、経験、思想が出るため各々らしさが増幅するように動きを作り、各俳優陣につけていると岡田は語っています。

同じような動きをする者は誰もいなく、それぞれの個性の延長線上に殺陣があり、だからこそどこの斬り合いを見ても目を離すことが出来なくなるほどのシーンの連続だったのかもしれません。

「今回岡田准一さんと共演したことで、自分の甘さが露呈し、申し訳なくなった」と俳優陣が語るインタビューを多く見かけました。岡田准一はそれくらいどの役者よりも、芝居だけではなく、現場を引いて見ており、このカメラアングルではどういう効果があるのか、監督の要求する画はなんなのか、役者の動きをどうすれば効果的なのか、などを理解した上で現場に向かったといいます。あの名優陣が、それを語るということはどれだけすごいことなのかは言わずもがな。

土方の歩き方の変化ひとつとっても、岡田の身体表現の高さに驚かされます。それは監督が「武芸者が俳優のふりをしている」と絶賛するほど。田舎出の土方のヒョコヒョコと小股で猫のように歩く動作は、殺陣にもそのまま生かされており、ただの癖の表現に収まらず、土方の生き様とそれまでの経験がそこから立ち上って見えるものにまで、落とし込んでいることのすごみに、同業者は驚愕するでしょう。(その1人です、わたし)

濃ゆい共演者の中でも、ブレることなくどっしりとした主役という幹が、個性豊かな助演陣をイキイキと魅せるという図は珍しく、そしてとても美しいのです。(多くの作品はその逆)

印象深いシーンは、これまた多く。試衛館時代からの4人の関係性、特に近藤、土方、沖田が美しく流れる組手で遊びながら台詞を交わすシーンであったり、土方、近藤、山南がお雪の素性について問い詰めるシーンでの3人の早口のセリフを発しながら、複雑に絡み合うような動きを見せるスリリングな展開であったり、と様々残っています。

個人的には、山﨑烝を演じた村本大輔の個性が光っていたとも思います。商人あがりで、他とは違う異色な存在。ほぼアドリブだという彼のセリフにも、是非注目してもらいたいです。

本格時代劇であり、至極のエンターテインメント作品まで昇華されている本作、ぜひ多くの方に触れてもらいたいものです。

それでは今回も、おこがましくも紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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