ティモシー・シャラメの魅力 ハリウッドの若き貴公子はディカプリオの後継となるか


年の離れたクリエイターたちに愛される才能

心に葛藤を抱え、もがき苦しむ少年。シャラメが『君の名前で僕を呼んで』で見せた内向的な演技は、その後も数々の映画で披露されることになる。

『ビューティフル・ボーイ』(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

『ビューティフル・ボーイ』(2019年日本公開)では、必死に薬物依存症から立ち直ろうとする少年ニック役を、『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』』(2019年日本公開)では、父の死から立ち直ることができず、うまく人付き合いをすることもできないダニエル役を、ガラス細工のように繊細な表現で演じきっている。

その一方で、経済的に恵まれ、勝手気ままなモラトリアム生活を送る青年役も得意中の得意。

Netflix映画『キング』(2019年)では、父親ヘンリー四世に反発して放蕩三昧の日々を送るハル王子(ヘンリー5世)役を、巨匠ウッディ・アレン監督が手がけた『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2020年日本公開)では、成り上がりの富豪の両親に反抗心を抱き、ギャンブラーとしてゼニを稼ぐ大学生ギャツビーを好演(この役名は、レオナルド・ディカプリオが主演した『華麗なるギャツビー』から拝借しているのだろう)。

ある意味で、この“勝手気ままなモラトリアム生活を送る青年”も、“心に葛藤を抱え、もがき苦しむ少年”の延長線上にあるのかもしれない。ぬぐい切れない虚無感を、刹那的な享楽でごまかしているだけなのだから。陰キャであろうと、陽キャであろうと、ティモシー・シャラメが演じる役の内面では、実存的な葛藤が渦巻いている

もう一つ特筆すべきは、いま最も注目されている女優であり映画監督のグレタ・ガーウィグとの出会いだろう。シャラメは、彼女が発表した『レディ・バード』(2018年日本公開)、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2020年日本公開)に出演。

両作で主演を務めたシアーシャ・ローナンとのタッグは、映画ファンにとって眼福のひとときだ。グレタ・ガーウィグは、若く才能に溢れた俳優たちの瑞々しい演技を、とってもナチュラルにフィルムへと焼き付ける。そこには、何の混じり気のない、溌剌(はつらつ)としたシャラメの姿がある。

「グレタとは何でも一緒に仕事をしたいと思っています。(中略)僕は彼女に完全に畏敬の念を抱いています。彼女から学んだことをずっと話していたいくらい、素晴らしい人です」(引用元:https://www.silverkris.com/interview-timothee-chalamet/

グレタ・ガーウィグも、シャラメへの賞賛を惜しまない。彼女のインタビューを読むと、彼を一人の友人として愛していることがよく分かる。

「彼(シャラメ)と話すことは大好きよ。電話で1時間以上話していても、気づかないうちに話題が飛び交い、ジョークを交わすから、私は幸せな気分になるし、彼も面白くて楽しくて仕方がない感じなの」(引用元:https://www.gq.com/story/timothee-chalamet-november-2020-cover-profile

ティモシー・シャラメは同世代の俳優ではなく、年の離れたクリエイターたちに愛される存在なのかもしれない。彼がニューヨークにいる祖母を訪ねると、「あなたにはもっと同年代の人たちと一緒にいてほしいわ」と言われたことがあるんだとか。

「思わず笑ってしまいました。おばあちゃんも気づいていたんですね。彼女の言うとおりかもしれない。だけど昔から憧れていた、物事をよく知っている天才たちの軌道に乗ることに、抵抗することはできないんです」(引用元:https://www.gq.com/story/timothee-chalamet-november-2020-cover-profile

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