『ブラックホーク・ダウン』記憶に刻まれるべき名セリフの数々! 名匠リドリー・スコット監督が生み出した極限の世界
『ブラックホーク・ダウン』記憶に刻まれるべき名セリフの数々! 名匠リドリー・スコット監督が生み出した極限の世界
『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』と新作が相次ぐリドリー・スコット監督。その多作ぶりは以前から変わっておらず、特に2000年代に入ってからの製作ペースは目を見張るものがある。そんな名匠がハリウッドエンターテインメントを牽引するプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーと手を組み、2001年に監督・製作したのが『ブラックホーク・ダウン』だ。
本作は1993年10月に起きた、アメリカ軍とソマリア民兵による“モガディシオの戦闘”を描いた戦争映画。ソマリア内戦に介入した米軍の敗戦・撤退というセンセーショナルな史実を基にしており、有無を言わさず観客を戦地へ放り込むような圧倒的臨場感が大きな注目を集めた。
主演のジョシュ・ハートネットを筆頭に、ユアン・マクレガー、トム・サイズモア、エリック・バナ、サム・シェパード、ジェイソン・アイザックスら名優がずらりと並ぶ本作(若かりしオーランド・ブルームやトム・ハーディの名前も)。筆者にとっては戦争映画の傑作であると同時に、“名言・印象に残るフレーズの宝庫”として強く脳裏に刻まれた作品でもある。生と死を分かつ戦争を題材にする映画ならではの、緊迫した状況から生まれるセリフの数々。映画史に残るような名言とは違うかもしれないが、本作にまつわる印象的なセリフの数々をご紹介していきたい。
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1.死者だけが戦争の終わりを見た
1発目からセリフではない文言で恐縮だが、これは映画冒頭で引用された哲学者・プラトンの名言であり、いきなり深い。本作がソマリア内戦という事実に基づいた作品だからこそ、実景が映し出される前から観客を“戦争の絶えない世界”へと誘う。もちろんそれは舞台となったソマリアを指しているだけでなく、一向に戦争がなくならないこの現実世界そのものに対する警鐘としても捉えることができるだろう。人類は絶えず争い続け、プラトンの言葉どおり死してようやくその終わりを迎えるのだ。2.「これは戦争ではない。民族虐殺だ」
ババルギディル族の指導者アイディード将軍を捕獲するため、武器商人のオスマン・アットを拉致したタスク・フォース・レンジャー司令官のウィリアム・F・ガリソン少将。1対1の緊迫感漂う対話シーンでアットはアメリカの介入を批判し、「これは内戦だ。我々の戦争だ」と告げる。しかしガリソン少将も黙ってはいない。飢餓により30万人以上が犠牲となっている事実から「これは戦争ではない。民族虐殺だ」とアットに告げる姿は、ソマリア紛争をただの戦争として捉えて介入しているわけではないガリソン少将の冷静な目線と、ピュリッツァー賞受賞経験を持つサム・シェパードの威厳にあふれた演技が光る重要な場面となっている。ところでこれは余談だが、最近似たようなセリフを聞いた覚えはないだろうか。そう、クロエ・ジャオ監督の『エターナルズ』でバリー・コーガン演じるドルイグもほぼ同じようなセリフを発している。ドルイグの立ち位置を表す意味でも重要なシーンであり、『ブラックホーク・ダウン』から約20年の時を経て改めて人類の業を思い知らされるセリフだ。
3.「ブラックホークダウン、ブラックホークダウン」
まさに本作を象徴するセリフ。ロケット弾をテールローターに浴びたMH60L・ブラックホーク(スーパー61)がモガディシオ市内に墜落するシーンは思わず息を飲むほどで、上空で不安定に旋回したのち地上に激突・横倒しになる一連の流れは衝撃が大きい(しかも本作では史実どおり2機目となるスーパー64の撃墜シーンも描かれている)。そもそもアメリカ各軍が特殊作戦用に所有するブラックホークが撃墜される事態など起きてはならないことなのだが、「We got a Black Hawk down,We got a Black Hawk down」とブラックホーク墜落を冷静に伝えるトム・マシューズ中佐のトーンも印象的。芯に熱いものを持つガリソン少将とは異なり、どのような状況でも表情1つ崩さない態度はどこか冷淡にも映る。血と砂埃にまみれる地上の兵士とは対称的に淡々としたマシューズ中佐の存在感は異質だが、戦場では感情的に物事を推し進める人物よりもマシューズ中佐のような軍人こそ状況監視・指示系統に必要なのだろう。
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