傑作『さよなら、ティラノ』はポケモン、コナンファンにもおすすめの理由がある!3つの魅力を解説!
2:超豪華声優陣が超ハマり役!ポケモンコンビの共演も
超豪華な声優陣も本作の大きな魅力だ。三木眞一郎の強面だが優しいティラノサウルスはカッコよく、石原夏織の天真爛漫で一生懸命なプテラノドンは超絶かわいらしく、悠木碧の甘えん坊で健気なトリケラトプスの子どもも身悶えしそうなほどにキュートで庇護欲が全開になるなど、大人気声優それぞれが過去作を振り返っても得意だとわかるキャラに完璧なまでにハマっていて、その熱演もあってかわいいキャラそれぞれが大好きになれるのだ。さらには小西克幸、井上喜久子、森川智之、檜山修之というベテラン声優が個性的な役柄を演じており、さらには島本須美、竹達彩奈、津田健次郎、上田燿司、柴田秀勝、斉藤貴美子といった面々も脇を固めている。もちろん演技そのものも最高レベルで、ずっと「耳が幸せ」状態だった。また、オープニングのナレーションを原作者の宮西達也が担当している。
そして、本作は 2018年8月に亡くなった石塚運昇の遺作であり、おそらくはその出演作でもっとも遅く世に出る作品だろう。劇中の演じているのは主人公たちに重要な助言をするおじいさんであり、「年の功」を感じさせる役柄としてもハマっていた。アニメ『ポケットモンスター』シリーズでコジロウを演じていた三木眞一郎と、オーキド博士役の石塚運昇の共演が聴けるというのも貴重な機会だ。かわいいキャラの掛け合いもポケモンに通じるところもあるし、それぞれの声優のファンも、ぜひ劇場で観ていただきたい。
3:劇場版『名探偵コナン』の監督によるアクション&坂本龍一が33年ぶりにアニメ映画を担当した音楽にも注目!
静野孔文監督は劇場版『名探偵コナン』シリーズで有名であり、今回もテンポの良い物語運びと、スケール感のあるアクション描写という手腕が遺憾無く発揮されていた。特に終盤の「ギミック」のあるハラハラドキドキの展開や、クライマックスの本気の恐怖を覚えるほどの演出に期待してほしい。『銀河鉄道の夜』(85)でキャラクターデザインと作画監督を担当した江口摩吏介がアニメーションディレクターも務めており、クオリティのさらなる向上につながったのは間違いない。そして、坂本龍一がアニメーション音楽を手掛けるのは、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(87)以来、実に33年ぶりとなる。その荘厳で流麗さのある音楽は、過酷な世界観や、終盤の衝撃的でもある作劇に存分にマッチしていた。それでいてハラハラドキドキするアクションシーンや、マヌケなギャングたちによるコミカルなシーンにも合う楽曲もあり、「鳴りっぱなし」にもしないメリハリのある音楽演出ができていることも素晴らしい。坂本龍一が今回の依頼を受けたのは、本作が日本と韓国と中国の合作のプロジェクトであり、家族向け映画としてのクオリティの高さやメッセージ性の秀逸さも理由にあったようだ。
手塚プロダクションの鈴木良美プロデューサーはリサーチを続ける中で、原作の絵本が未就学の小さな子をターゲットにしていながらも、実は大人の胸にも刺さるメッセージ性もあり、母親層からの支持も高いことを実感していたそう。そのメッセージ性を土台に物語を構成し洗練された演出を加え、子どもだけでなく、若者や大人まで楽しめるエンターテイメント作品に発展させてほしいというエグゼクティブプロデューサーからの明確な要望のおかげもあって、前述した超豪華なスタッフやキャストを集結できたところもあるようだ。
そして、メインスタッフが共通して大事にしたいと考えていたのは、宮西達也による原作絵本の「世界」だった。 「肉食恐竜と草食恐竜は本来そもそも交えないもの、そのような象徴が交流し何か共通するシンパシーを感じることで愛が生まれ、そして最後に別れがある」ということ、それを軸にしながら物語の開発を行う会議を重ねていったという。
本作のアニメとしてのクオリティの高さ、子どもの教育上も素晴らしく大人も感涙できるメッセージ性の尊さは、超豪華なスタッフとキャストによる集合知の賜物。どれが欠けても、ここまでのものは作れなかっただろう。物語だけでなく、アニメそのものの表現にも感動がある、そんな映画体験も期待してほしい。きっと、クライマックスからラストにかけては、一生忘れられないほどの感動があることだろう。
まとめ:これだけで楽しめるアニメ映画がもっと観られてほしい
2021年はテレビシリーズが展開していない、劇場でいきなり観て楽しめるアニメ映画が豊作だった。『映画大好きポンポさん』や『トゥルーノース』や『漁港の肉子ちゃん』や『アイの歌声を聴かせて』や『フラ・フラダンス』などなど……いずれも評価は高いが、まだまだ広く知られた作品とは言い難い。『さよなら、ティラノ』もまた、絶対に埋もれさせてはいけない傑作だったのだ。「誰もが知る」コンテンツを楽しむのも良いが、広い範囲に目を向けてみれば、作り手が多大な情熱を捧げたアニメ映画があるということ、それをまずは知ってほしいと願うばかり。また、U-NEXTで配信中の、同絵本シリーズのアニメ映画化第一弾『おまえうまそうだな』も「子育て」描写が楽しく、またシビアな恐竜の世界がしっかり描かれている秀作なので、併せて観てみるといいだろう。
(文:ヒナタカ)
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