<新作レビュー>『決戦は日曜日』、政治風刺&批判を笑いに転化させた選挙コメディ



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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT


アメリカなどに比べて日本の劇映画は、特に最近は政治を風刺&批判したエンタメ作品が作られにくくなっているのか、せいぜい政界を舞台にしたラブストーリーだったり、問題の本質をすり替えたり、どこか逃げ腰及び腰のものばかりが目立っていたように思われます。

実は本作もまたそのパターンではないかと、見る前は斜に構えていた部分もあったのですが、それでも見てみようという気にさせられたのは、監督が『東京ウィンドオーケストラ』(17)や『ピンカートンに会いに行く』(18)の才人・坂下雄一郎であったこと。

笑いの中にもシビアな現実を見据えた彼の秀逸な才覚が、こうした選挙コメディでどう発揮されるのか?



結論としては、日本映画に久しく欠如していた風刺と批判の数々が、見事に笑いに昇華された快作に仕上がっていました!

しかも、批判の矛先は立候補者だけでなく、秘書チームや後援会など応援する人々、さらには投票する一般庶民、マスコミ、迷惑ユーチューバーなどなど、言ってみればすべての国民に向けられています。

しかもそれらの風刺がすべて笑いに転化されつつ、少しばかり心をチクッと刺してしまうあたりも素晴らしいものがあります。
(何であんな輩が当選するのか?といったカラクリも、本作を見ればすこぶる納得できてしまうとともに、どこかしら忸怩たる想いにも囚われてしまう!)

坂下監督自ら5年の歳月を費やして完成させたという本作のオリジナル脚本の素晴らしさと、それを具現化させる上での飄々とした演出も実に妙味!



さらには漢字もまともに読めない傲慢わがまま二世候補者を演じる宮沢りえの(特に前半部の)佇まいは如実に現実の政治家たちを参考にしたと思しく、彼女がもうそこにいるだけでどこかしら笑えてしまうという、さすがの大女優のオーラに脱帽させられます。

そんな彼女に振り回される窪田正孝も前半「秘書はつらいよ」的な悲哀を漂わせつつ、次第にルーティーン化した選挙の腐敗に気づかされていく過程などを巧みに演じています。



秘書チームに小市漫太郎や内田慈、音尾琢真、赤楚衛二とそれぞれの個性もいかんなく発揮されており、実力のあるキャストを活かすことで脚本の良さもさらに引き立って秀逸な映画になるという、そんな当たり前のことがなかなか上手く実践できない日本映画界の中で、これまた快挙であったともいえるでしょう。

そして1時間47分の上映時間が終わり、ふと気づくと今の日本が抱えているさまざまな問題がすべて網羅されている驚異にも気づかされ、ここでまた坂下監督の才能に唸らされた次第。

これぞ、今の日本に住む人々がもっとも見ておくべき1本ではないかと、勝手に太鼓判を押させていただきます!

(文:増當竜也)

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(C)2021「決戦は日曜日」製作委員会

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