お笑い

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2022年01月11日

マヂカルラブリー、快進撃が続く5つの理由

マヂカルラブリー、快進撃が続く5つの理由

錦鯉の涙の優勝で幕を閉じた「M-1グランプリ2021」。

前年の優勝者・マヂカルラブリーは、新王者誕生の瞬間を同じ会場で見守っていた。

この「M-1グランプリ2021」の決勝前にマヂカルラブリーの野田クリスタルさんは、自身のラジオで「今年のM-1の優勝者によって、お笑い情勢がガラッと変わる可能性がある」と発言。「2022年以降の仕事や芸能界の(自身の)立ち位置に影響があるのでは…」とも危惧していた。

しかし筆者は、そんな心配は杞憂だと思っている。



2022年も「M-1王者」としての肩書きを引っさげ、マヂカルラブリーはさらに進化する。そう明言する5つの理由を挙げていきたい。

イメージを覆す、順能力の高さ

2020年のM-1で、ほぼ言葉を発さず自身の体の動きのみでボケ続けた野田さん。そして、その動きにひたすらつっこむ村上さん。この唯一無二の漫才スタイルや、野田さんの尖ったボケのイメージからとっつきにくい2人と思った方もいるのではないだろうか。

しかし2人はM-1優勝後、これまでお笑いライブで培ってきた瞬発力をあらゆるメディアで発揮。

スタジオでVTRを見ながら的確なコメントが求められるバラエティ番組や、TBSの朝を彩る「ラヴィット」のロケVTRでも高い順応力を見せ、それぞれ人気を博している。

特筆すべきは、日本テレビの「THE突破ファイル」の1コーナー「突破市役所 なんでもスグやる課」の再現VTRで、野田さんは市役所の熱い課長役を好演。市民の悩みに真摯に向き合う、作業着姿の頼れる課長を演じ、新境地を開拓している。

また、4月からレギュラー放送が始まったラジオ『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0』では、2人ともリスナーの名前を丁寧に呼ぶ場面が印象的だ。特に村上さんは、リスナーのメール一通一通に対して「ありがとう」と感謝の言葉を添えることが多い。リスナーを巻き込み、盛り上げる力が2人ともとても高く、個人的にずっと続いてほしいラジオ番組のひとつだ。

朝の番組からファミリー層がよく見るゴールデン帯の番組での活躍、それに加えラジオやMCを務める番組「マヂカルクリエイターズ」では新たなゲーム企画やお笑い企画を作る攻めたこともしっかりする…。
マヂカルラブリーにとって2021年は子どもからコアなお笑いファンまで一気にファン層が拡大した年になったのではないだろうか。

この順能力の高さで、さらに彼らは活躍の幅を広げていくだろう。

売れっ子になっても劇場愛が深い

マヂカルラブリーはM-1王者となる何年も前から、埼玉にある「大宮ラクーンよしもと劇場」を主な活動拠点としている。この劇場では囲碁将棋・GAG・タモンズ・すゑひろがりず・ジェラードンとマヂカルラブリー含む6組※で「大宮セブン」という名のユニットでライブをすることも多い。
(※2022年1月現在。以前はユニット名通り、7組で活動している時期もあった。)

賞レースで優勝すると、テレビ・配信番組などの出演が多くなり、劇場での出番が極端に減る(もしくは自分たちの意思で劇場の出番を減らす)コンビも多い。

しかし、マヂカルラブリーはM-1優勝後も「大宮が自分達の本拠地」と公言。王者の称号を手にした後も「大宮セブン」のメンバーとして劇場でも精力的に活動している。

いや、むしろM-1優勝ではずみが付いたと言ってもいい。2021年には大宮セブンのメンバーで「アメトーーク!」やロックフェス「VIVA LA ROCK」へ出演。また、大宮セブンで初めての全国ツアーを行うなど、ユニット自体の勢いが増した1年となった。

新M-1王者、錦鯉の著書のタイトルは「くすぶり中年の逆襲」だが、その前年度の王者マヂカルラブリーは「くすぶり大宮の逆襲」を体現していると言えるかもしれない。

野田クリスタルの行動力

2020年のM-1決勝の出番直前にとっさの判断をし、土下座スタイルで舞台に現れた男・野田クリスタル。

純度100%のお笑いを追求する野田さんの側面には、いつも行動力と真面目さが同居しているように思う。

昨年は野田さん自身が開発に携わったNintendo Switchのゲームソフト「スーパー野田ゲーPARTY」が発売。加えて野田さん発案のパーソナルジム「クリスタルジム」もオープンした。「クリスタルジム」に関しては、M-1優勝後に行われた吉本興業の社長との会食で直々にプレゼンして実現。ジムの候補物件の内見やトレーニング機器の選定など多忙な中、野田さん自身が行ったそう。

また、「クリスタルジム」はいつでも自分が筋トレができる場所を作りたかったということ以外にも、目的があると話す野田さん。

それは、他のマッチョ芸人たちの新たな活躍の場を作ること。マッチョ芸人たちが筋トレ先生(トレーナー)となり、楽しくお客さんと体を動かす場を提供できたら…という願いもこめられたジムなのだ。

隙あらば自分のやりたいことを伝え、迅速に実行していく。

頭では分かっていても、なかなか凡人が行動に移せないことを野田さんはいくつも並行してやり遂げる。そんな経営者的な視点や行動力をあわせ持つ野田さんが次に何を始めるのか、2022年も目が離せない。

▼マッチョ芸人らが先生となり、楽しく筋トレを教えてくれる「クリスタルジム」についての発表動画

村上のMC力と狂気性


マヂカルラブリーというと、まだまだ野田さんにスポットライトが当たることが多い。しかし、相方の村上さんも(いろんな意味で)相当な能力の持ち主だ。ライブでのMC・進行力には定評があり、中でも筆者は村上さんのレポーター力の高さに注目している。

心地よいトーンの喋りと、相手に警戒心を抱かせないトーク。数年後には、村上さんの街ブラ番組が始まっているんじゃないか…という気すらしている。

▼よしもとの劇場の楽屋裏をレポートする村上さん


ここまで読んで「村上さんは、野田さんの隣でニコニコ微笑んでいる従順そうな男性」
そういった印象を抱いている方がいたら、申し訳ない…。

「マヂカルラブリー・村上」という男は、一筋縄で語れる存在ではない。

そもそも彼が名乗っている「村上」という名前は芸名で、本名は「鈴木」である。

また、国語の教員免許を持っているが活字だけの本は一冊も読んだことがないらしい。さらに「村上ガールズ」という名のとりまきの女性10人と共に、コロナ禍前は夜中に独自のパレードをしていた…など、村上さんのパーソナルな情報を知れば知るほど頭に「?」が浮かび、あの微笑みも相まって一種の狂気を感じてしまう。

人が良さそうなあの微笑みの裏には何が隠されているのか…どんな意図があるのか…村上さんの魅力は未知数だ。

2022年以降、村上さんの新たな一面がフィーチャーされた際、マヂカルラブリーはまた新たなステージに到達する。そんな気がしてならない。

地下ライブ芸人をメジャーに送り出す凄腕

過去を振り返ると野田さんの破天荒なピン芸人時代だけでなく、コンビ結成後も小規模なインディーズライブの舞台に立つことが多かった2人。その舞台は、別名「地下ライブ」とも呼ばれている。野田さんが師匠として崇める「モダンタイムス」との出会いも地下ライブだった。

有象無象な芸人が集うライブで、独特の芸風が形成されたマヂカルラブリー。そのため2人は、同じ吉本興業所属の芸人とだけでなく、地下ライブによく出演している芸人とも親交が深い。

「ゴッホより普通にラッセンが好き〜」のフレーズでブレイクした、孤高のピン芸人・永野。2021年のM-1で審査員や視聴者に大きな衝撃を与えたランジャタイといった仲間たちとともに、「マヂカルラブリーno寄席」という無観客配信ライブを元旦に開催。無観客ゆえ、芸人同士の野次がとびかうカオスな配信ライブは、昨年・今年ともにお笑いファンの間で話題沸騰中だ。

▼無観客ライブの新機軸「マヂカルラブリーno寄席」

インディーズライブで活躍していた芸人らが、マヂカルラブリーの活躍を皮切りにメジャーな場に躍り出つつある。

これまでは地下ライブ芸人に注目の兆しがあっても、注目が一時的だったり世間に浸透する前にたち消えてしまったりすることがままあった。

例えるなら「地下ライブ芸人=独特な風味を醸し出す食材」といった存在ではないだろうか。そのため、彼らを上手に調理できる芸人や「自分が調理してやるぜ!」と積極的に腕をふるう(絡みに行く)芸人がメジャーの場にあまりいなかったように思う。

そこで登場するのが、凄腕料理人のマヂカルラブリーだ。地下ライブ芸人であろうと、くすぶっている芸人であろうと、繊細かつ愛を込めた調理と味付けをしてお客様を楽しませる。彼らの数々の舞台経験から培われた「地下芸人との絡み方・扱い方の技術」は、他の芸人が簡単に真似できるものではないだろう。

これは筆者の勝手な予想だが、これからマヂカルラブリーはインディーズ芸人とメジャーな場をつなぐコンシェルジュ・ソムリエ的な役割も果たすのではないだろうか。

2022年以降も進化が止まらないマヂカルラブリー

第16代目M-1王者として激動の1年を過ごした、マヂカルラブリー。お笑いファンだけでなく、お茶の間における知名度・人気度ともに急上昇した1年だった。

「マヂカルラブリー」は自身が求められている場所はもちろん、こちらの想定を超えてくる新たな活躍の場を自分たちで作り出せる2人だ。特異な芸風からチラ見えする面をのぞくと、そこには一つひとつの仕事に誠実に取り組み、まわりの芸人へ常に愛を持った2人が垣間見れる。

2022年も、マヂカルラブリーの進化はきっと止まらない。テレビでも劇場でも新たな笑いを作り出す、2人の快進撃が今年も楽しみだ。

(文:ふじい)

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