特撮向上委員会
『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』最大の魅力にして一番の難解点を考察!
『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』最大の魅力にして一番の難解点を考察!
■オジンオズボーン・篠宮暁の“特撮”向上委員会
前回はネタバレ無しで、『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』の感想を書きました。
擬音が多くて読みづらかったかもしれません。
今回は公開から日も経っているということで、内容に踏み込んで感想を書きたいと思います。
作品を見てない方は絶対に読まないでください。
「絶対に」です。
おせっかいかもしれませんが、僕はただ自分が映画館で感じた感動を1ミリも損なうことなく見てほしいのです。
制作スタッフでも何でもないのに、どの立場から言ってんねんとお思いでしょう。
その通りです。
ただのファンの戯言です。
まずはいろいろ書く前に、最初はこれを言わせてください。
カミホリ監督すげー!
今や東映特撮の中心監督であり、監督ならではの演出で特撮作品以外にも活躍の場を広げてらっしゃる上堀内佳寿也監督なわけですが、今作はそんな上堀内監督の演出濃度が120パーセント、激濃でした。
冒頭の数十分、派手なバトルはなく、音楽なしで進んでいく会話劇。
あまりにも自然なドラマを見せられて、途中でハッと「いやこれ『セイバー』やんな?」と疑う始末。
「セイバー」の醍醐味って対ストリウスのときも、対マスターロゴスのときも団結して立ち向かっていくところだと思っていて、44章ラストの最終決戦に向かうシーンでどんどん剣士たちが集まり、朝日に向かって最後歩いていくシーンなんかはもう、言葉を失うくらい美しかったりするんですが、「深罪の三重奏」のスゴいところはとにかく集まらない。
しかも記憶が改ざんされたり抜き取られたりしてるから、仲間を想ってみたいなこともない。
それぞれ三つの個の戦い。
交わらない。
このポイントがテレビシリーズとの対比になっていて、「セイバー」のよさが新たに引き出されていました。
初っ端からミステリー要素全開で進んでいく「深罪の三重奏」。
ファルシオンの正体は一体誰なのか。
まさかでした。
勝手にファルシオンは一人だと決めつけていました。
その先入観をきれいに裏切ってくれる展開。
倫太郎の父ちゃんがファルシオンと判明したとき、犠牲者の弔いのために剣士を消そうとする修羅の道に堕ちた元剣士かと思っていました。
ファルシオンが3人もいたとは。
それぞれ戦う相手が違っていたとは。
倫太郎の父ちゃんが一人で剣士の罪を清算する戦いをしていたとしたら、「深い罪の三重奏」はもっとこじんまりして、チープなものになっていたかもしれません。
しかし賢人の婚約者、そして間宮がそれぞれいたことで、セイバー後半の世界を救う戦いというものが、いかに大規模だったのか感じることができました。
犠牲者たちが這ってブレイズに寄ってくる、もはやホラー映画のようなシーンにはゾッとしましたし、どの仮面ライダーの世界でも絶対に犠牲者は発生してるだろうけども、その部分を斬新な切り口で真正面からしっかり描いているのがとても新鮮でした。
倫太郎の父ちゃんも賢人の婚約者、そして間宮も悪人じゃない。
むしろ結果として小さい命を無視してでも、世界を救うための大義名分を掲げて戦った飛羽真たちの方が非道とすら思ってしまう。
まさにポスターに書かれてある「正義は罪なのか」が頭に浮かぶ。
この映画の最大の魅力にして一番の難解点は、間宮と陸の関係性でしょう。
終盤に間宮と陸は実は同一人物だったことが判明しますが、わかったようで、感動したようで、でも実は疑問点もあったりして。
見た人それぞれの捉え方ができて、ここの各々の考察を話し合いながらお酒を飲みたい気分。
相当お酒が進みそうな気配。
せっかくなので、僕の考えがどんな感じなのか書かせていただきます。
あくまで僕の勝手な考えです。
作品から一旦整理すると、間宮は飛羽真に親父を殺されたと思っていて、でも間宮が陸ということは親父が飛羽真になるわけだから、親父を殺したの間宮自身ということになってるわけです。
間宮が飛羽真を殺した時間軸が別にあって、その殺された飛羽真を陸は見てるということでしょう。
キーポイントはラッキーだと思っていて、陸はラッキーを心の拠り所にしているのに対して間宮は犬が嫌いと言っています。
なので、克服しているという点から、時系列で言うと陸の方が後かと思います。
つまり間宮と陸は、同じ時間軸を無銘剣虚無によって無限に繰り返されていたのではないかというのが僕の考察です。
陸がラッキーのことを平気なのは、アメイジングセイレーンによって書き換えられたから。
なぜ書き換えられたか。
ラッキーによって導かれたり感情が動かされたりしないと、お父さんと叫べなかったから。
お父さんと叫ぶことで、間宮に自分が陸であることを気づかせる必要があったのでは。
では、誰が書き換えたのか。
飛羽真という考えは乱暴でしょうか。
僕は意外と遠くないのかなと思っています。
エンディングで飛羽真の脇にアメイジングセイレーンがあったとこからも、飛羽真がアメイジングセイレーンを使用した可能性は大いにあります。
そうすると間宮がファルシオンだったことが判明したときに飛羽真が驚かなかったのも、自分のシナリオだから、で説明できますし、冒頭襲われるシーンがどこか淡々としてるのもシナリオを遂行してるからということで辻褄が合います。
当然これが正解ではないでしょうし、しばらく経ってみてみたら僕自身、また違う見方になってる可能性も多分にあります。
しかし、これこそが「深罪の三重奏」の魅力なのだと思います。
ラストでタイトルに細工される演出、本っ当に最高なんですが、僕は間宮だと思ったカルテットを、芽依ちゃんにしてもいいし、誰にするかということも考えてみると、さらに楽しめそうです。
(文:篠宮暁)
【オジンオズボーン・篠宮暁の“特撮”向上委員会】
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