「私の正しいお兄ちゃん」第8話レビュー:ハッピーエンドか、バットエンドか。海利と理世が辿り着いた幸せの形(※ストーリーネタバレあり)
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古川雄大主演の「私の正しいお兄ちゃん」(フジテレビ系)が2022年1月10日(月)より放送スタート。
モリエサトシによる同名漫画を原作とした、ジェットコースター・クライムサスペンス&ラブドラマで、ヒロインを山谷花純が務める。
本記事では、第8話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
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「私の正しいお兄ちゃん」第8話レビュー
こんなにモヤモヤとした終わりがあっただろうか。大学生の理世(山谷花純)が幼い頃に生き別れた最愛の兄を殺害したバイト先の先輩・海利(古川雄大)と恋に落ちてしまう様を描いたドラマ「私の正しいお兄ちゃん」が最終回を迎えた。
しかし、私たち視聴者は「これが果たしてハッピーエンドか、はたまたバットエンドなのか」とひどく頭を悩ませることになる。
前回、刑事の立花(堀井新太)に2年前見つかった兄・正己(長谷川純)との血縁関係を調べるために無理やりDNAを採取されそうになった理世。その瞬間に海利が現れ、間一髪で理世を救い出す。直後、立花の元に先輩の佐久間(飯田基祐)から「遺体が徳本正己ではないと証言している人物が現れた」と連絡が入ったのだ。
その人物とは、正己の殺害現場に居合わせた女性・長谷川京香(橋本マナミ)。彼女はナンパを冷たくあしらったことで正己から見るも無惨な扱いを受け、意識を失っているかと思いきや、実は密かに一部始終を目撃していた。佐久間は正己が失踪する直前、京香にしつこく声をかけていたという証言を聞き、彼女をわざわざ富山から東京に呼び寄せたのだ。
自分が犯した罪を知る人物が現れて動揺を隠せない海利だが、意外にも自ら彼に協力を申し出る京香。正己に暴力で人権を侵害され、自分のことが物であるかのように感じていた彼女は海利に優しくしてもらったことで心を取り戻したという。
きっと、卑劣な父親との違いを証明しなければと必死だった海利は京香からの感謝の言葉に救われたことだろう。手段は間違っていたかもしれないが、彼の正義感が一人の人間を絶望の淵から救ったのだ。
京香はあの日、自分に声をかけてきたのは“徳本正己”を名乗る海利だったと取り調べで証言。以前から正己は海利の名前を悪用していたため、度々二人が入れ替わっていたということにしても不自然ではないからだ。しかし、この嘘の証言が思わぬ勘違いを生むことになる。
事件がふりだしに戻る一方、あることを確信した佐久間は海利に接触。
「もう嘘はやめにしましょう。あなたは徳本正己さん本人でしょう?」
“徳本正己”を名乗る内田海利が身元不明のまま死亡したことで、徳本正己は人生をやり直すために内田海利を名乗って妹の前に現れた……そう解釈した佐久間は海利の母親に遺体を確認させていた。もちろん、遺体は正己のものなのだから母親は息子ではないと否定するはずだ。
しかし、父親が交通事故で半身不随になったことで両親は離婚。母親はすべてを忘れて新たなスタートを切るため、「死んだのは息子で間違いない」と証言した。自ら家を飛び出した海利だったが、このことで彼は家族から本当の意味で“捨てられた”と思ったのだろう。理世と家族になるため、海利は徳本正己になることを決意する。
一方、理世の方は家族を“捨てる”覚悟を決める。海利が正己になることを受け入れるということは、本物の正己、つまりはお兄ちゃんを消し去ることになるからだ。幻影となって現れた兄に泣きながら謝罪し、理世は正己を名乗る海利と新たな家庭を築く。
まさか海利の罪が裁かれることなく、二人の幸せが貫かれることになるとは。同じ布団で抱き合いながら眠る海利と理世は本当に幸せそうで微笑ましくなる。でも、この先ずっと二人は一人の人生を奪った罪悪感と向き合っていかなければならないだろう。
ハッピーエンドか、バットエンドか。その判断は視聴者一人ひとりに委ねられている。
(文:苫とり子)
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