「最高の教師」3話:もっとも心のケアが必要なのは相楽(加藤清史郎)説

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松岡茉優主演の“土10”ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」が2023年7月15日放送スタート。松岡茉優演じる高校教師・九条里奈が、卒業式の日に教え子から突き落とされ、殺されてしまった。次の瞬間、彼女は1年前の始業式に戻る。自分を殺したのは誰なのか、30名の生徒=容疑者を前に、犯人探しと“最高の教育”を目指す1年が始まる。

本記事では、第3話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」3話レビュー

九条(松岡茉優)に殺害予告を出したのは、工学研究会の部員である眉村紘一(福崎那由他)と日暮有河(萩原護)だった。てっきり相楽琉偉(加藤清史郎)を中心とする一派の仕業かと思っていたところへ、まさかの展開。

なんでもする、と腹を決めた九条は、起こった問題をなあなあにはしておかない。さっそく二人を呼び出し、理由を聞く。

眉村と日暮は、ふつふつと不満を溜め込んでいた。九条がおかしなことをしたせいで(教室にカメラをつけるなど)、彼ら工学研究会の部室に相楽たちが入り浸るようになってしまった。好きなものに没頭できる聖域のような場所が侵害されれば、誰でも気分は良くないだろう。

彼らは、その恨みを相楽たちではなく、“おかしなことをした”九条に向けたのだ。黒板に大きく殺害予告を書けば、誰かしら行動を起こしてくれる。おかしくなった日常が、元に戻る。

九条は言う。なぜ、誰かがどうにかしてくれるのを待つばかりなのか。なぜ顔と声を出して、九条自身に直接意見を言わなかったのか、と。眉村・日暮は返す。「僕らなんかが声をあげても、勝手なことをするな、調子に乗るなと攻撃されるからです」と。

彼らは諦めている。声なんかあげたって無意味で、行動すればするだけ痛い目を見ると。そんな彼らに九条は「僕らなんかと、自分を下に感じるその順番は、一体どこにあるんでしょうか。少なくとも私の目には、お二人の順番を示す数字など、どこにも書いてあるようには見えません」と真っ直ぐに伝える。

学校は特殊な場所だ。年齢が一緒というだけの人間たちが十把一絡げにされる。育ってきた環境も、物事に対する考え方や趣味嗜好も違う生徒たちが、同じ箱に入れられ同じ教育を受ける。問題が起きないほうが不思議なのかもしれない。

クラス内ヒエラルキーも、よくよく考えれば不思議なものだ。目には見えないのに、そこには確実に、ある。教室に入った瞬間に肌で感じる格差、階級。眉村と日暮が感じる「俺らなんて」といった諦めは、そういった“言葉にできない空気”から醸成されたものだ。

九条からの言葉を受け、眉村たちは少しずつ気づき始める。

なぜ自分たちは、こうも遠慮しているのか。入学当初はクラス内のヒエラルキーなんて感じなかった。交流していくうちに少しずつ、気づいたら、いつの間にか、“それ”は確実にあったのだ。

「あいつら、勝手に楽しくしてりゃいいじゃん」「なんでわざわざ俺らの邪魔して笑うんだよ」……この気づきがすべてで、九条の言葉が引き金となる。

「あなた方にとって、彼らに嫌われるということは、そんなに嫌なことなんでしょうか?」

九条は言う。自分を蔑ろにした人間を尊重する理由はどこにあるのか? 人に嫌われることは、時に傷つくこともある。けれど、そんな人間がどこで何をしているかなんて、知りもしない日々が訪れる。

眉村たちは、これ以上余計なことをすると「ネクスト鵜久森(芦田愛菜)」にするぞ、と相楽たちに脅されていた。しかし、反対に、お願いだから自分たちをちゃんとハブってくれ、と土下座までして請うた。相手も会話もせずに、関わらないでくれ、と。

本来であれば、気が合わない人間同士なんて、必要がない限りは関わり合わずに生きていったほうがいい。なかには「価値観の合わない相手の話を聞くことで、人間性が磨かれる」といった考え方もあるが、気の合う人間同士でだって人間性は磨こうと思えば磨けるのではないか。

無視してくれ、関わらないでくれ、と懇願された相楽たちの表情は、なんとも形容し難いものだった。ふと、ドラマ化もされた漫画「ミステリと言う勿れ」内に出てくる、とある話が浮かぶ。イジメ問題における“加害者”と“被害者”のうち、心のケアが必要なのは前者のほうである、と。

そう考えると、もっとも心のケアが必要なのは相楽だろう。クラスのヒエラルキーの頂点に立ち、他の生徒を見下し、何事も思い通りにならないと気が済まない。十中八九、彼は家庭に何かしらの問題を抱えているはずだ。

関わらないでくれ、と頼まれた相楽たちは、今後どんな動きに出るのか。眉村や鵜久森らに働きかけるほど、彼らに自ら積極的に“構っている”ことになってしまう。それはきっと、相楽自身のプライドが許さない。プライドをこじらせた彼が、これ以上深みにハマらないことを祈る。

(文:北村有)

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