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<小松菜奈の抗えない魅力>を“涙”から紐解く|『余命10年』公開記念



(C)2022映画「余命10年」製作委員会

2022年3月4日(金)公開の映画『余命10年』

20歳で難病を発症し「余命10年」だと宣告を受けたヒロイン・茉莉と、生きる意味を見失い自殺を図ろうとした和人が出会い、恋に落ちていくラブストーリーである。

本作品を観ていて一番印象的だったのは、茉莉役・小松菜奈の「涙の演技」だ。

『余命10年』の小松菜奈の涙の演技を観ていると、「涙を堪える演技」「泣きじゃくる演技」の2通りがあった。どちらも観客の心を揺さぶるような迫真の演技で、筆者も思わず涙が溢れた。

本記事では、別作品の小松菜奈の演技も例に挙げながら、彼女が観客を魅了する「涙の演技」について綴っていきたい。

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『余命10年』:涙を堪える


(C)2022映画「余命10年」製作委員会

最初に『余命10年』の小松菜奈の「涙を堪える演技」を紹介していく。

長い期間入院していた病院を退院したばかりの茉莉は、何種類もの薬を服用しながら自宅で「余命10年」の残りを過ごし始める。いつ何が起きるかわからない茉莉の体を、家族はみんな心配していた。

そんな家族の憂慮を日々肌で感じている茉莉は、あえて気丈に振る舞ったり、「遺書に書くよ」と不謹慎な冗談を言ったりしていた。

闘病生活の中で、しんどいことや辛いことがないはずがなかった。だが、彼女は家族に心配をかけないために、家族の前で「辛い」と吐露したり泣いたりするのを抑えていたのだろう。

家族の前で泣く場面はあまりなかったが、和人の前で「涙を堪える」場面は度々観られた。茉莉は余命宣告を受けてから、生きることに執着しないため「恋はしない」と心に決めていた。


(C)2022映画「余命10年」製作委員会

だが茉莉の余命を知らない和人と出会い、「好き」だと伝えられる度に何度も心が揺れ動いてしまう。毎回、あふれるほどの涙を溜めて必死に気持ちを抑えていた。

相手に気づかれないようにそっと涙を堪えている様子は、相手の前で思いっきり泣いて感情を訴える姿よりも遥かに切なく、苦しい。

茉莉が涙を堪える代わりに、観客である筆者が思いっきり泣いてしまった。

『余命10年』:泣きじゃくる



『余命10年』では「涙を堪える演技」が印象的だったが、一箇所だけ思いっきり「泣きじゃくる」場面があった。

それは、和人と一夜を過ごした雪山のコテージから帰宅し、家族と話している時である。

「スノボ、どうだった?」と聞く母の質問に茉莉はなかなか答えなかった。必死に涙を抑えようとしていたのだろうか。

しばらく経った後、母の肩に頭を乗せて「死にたくない」と言葉を漏らした。それからは、堰を切ったようにどっと涙があふれ「死にたくないよ」と激しく泣いたのだった。

和人との時間は、死ぬのが怖くなるほど幸せだったのだろう。


(C)2022映画「余命10年」製作委員会

何度も涙を堪える場面を観てきたからこそ、初めて目にした泣きじゃくる茉莉の様子は、観ていて胸が押し潰されそうなほど苦しかった。

あの時の小松菜奈の涙は、演技ではなかった。茉莉、そして今は亡き原作者・小坂流加の「生きたい」という切実な想いを、小松菜奈が代弁したのだと思う。

それほど、魂が込められた涙だった。

『さくら』:涙ながらに訴える


(C)西加奈子/小学館 (C)2020 「さくら」製作委員会

『さくら』で見せた小松菜奈の「涙ながらに訴える」演技も印象的だった。小松菜奈は『さくら』では、3兄弟の末っ子・美貴役を演じている。

美貴は長男・ー(はじめ)に恋をしていた。だが、その気持ちを伝える前にはじめは自殺してしまう。


(C)西加奈子/小学館 (C)2020 「さくら」製作委員会

美貴は、はじめが亡くなる前に想いを伝えられなかったことをずっと後悔していたのだと思う。はじめの死後、突然調子が悪くなった愛犬「さくら」を診てもらう動物病院を探している車内で、家族に初めて告白した。

「(自分の子どもに)好きな人ができたらな、好きって言いなさいっていう」
「その人、お兄ちゃんみたいにどっか行ってしまうかもしれへんよ。早く好きって言いなさいって」涙を堪えながら、ポツリポツリと呟き始める。



そして「お母さん、お父さん。お兄ちゃんは死んだけどやっぱり思うたやろ、生まれてきてくれてありがとう」で目から涙があふれた。

美貴のセリフ中、カメラはずっと小松菜奈に向けられていたので、彼女の表情の変化がこと細かに伝わってきた。最初は穏やかに、何かを悟ったような表情で語り始めたが、徐々に声を出すのさえ辛そうな表情になっていく。

涙を抑えながらも声を振り絞って自分の想いを伝えようとしている姿から、彼女の心の苦しみや後悔がものすごく伝わってきた。兄を心から想って流した涙には、尊さがある。

『糸』:泣きながら食べる


(C)2020映画「糸」製作委員会

『糸』で「泣きながらカツ丼を食べていた」小松菜奈の姿もよく覚えている。

小松菜奈演じる葵は、一緒にビジネスを立ち上げた友人に裏切られ、会社も、地位も、財産も失ってしまう。だが、部下の前では一切涙を見せず、最後まで「強い社長」の姿を見せていた。

肩代わりした友人の借金の返済を終えると、1人でシンガポールの街を歩き、ふらっと日本料理店に立ち寄る。その店で「カツ丼ください」と頼むと、中島みゆきさんの『糸』が流れてきた。



「いただきます」とカツ丼を口に運んだ途端、口角を上げて「まっず」と呟く。だが、箸を止めなかった。

シンガポールでの成功と失敗、裏切られた友人のことを思い出していたのだろうか。それとも、『糸』を聴きながらカツ丼を食べて、故郷の日本を思い出していたのかもしれない。

しばらくすると、目から涙が流れた。

それでも「大丈夫」と言いながら、涙も拭かずにひたすらカツ丼を食べ続ける。「涙に構うものか」と心に決めているようで、どこか逞しさもあった。

泣きながらカツ丼を食べる姿から、どんなに今が辛くても、将来がどうなるかわからなくても「前に進む」という彼女の強い覚悟が見えた気がして、心にグッときた。

『溺れるナイフ』:泣きながら笑う


(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

最後に、泣きながら笑顔の表情を見せた『溺れるナイフ』の小松菜奈の演技を紹介したい。

小松菜奈演じる夏芽は、自分に好意を寄せるクラスメイトの大友に「嫌いになって」と告げる。その理由を「東京で仕事に専念したいから」と伝えるが、大友は夏芽が別の人(コウ)に好意があるのを見抜いていた。

大友の好意に応えられない申し訳なさ、本心を正直に伝えられずに誤魔化してしまった罪悪感からか夏芽の涙は止まらなかった。


(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

そんな夏芽を励まそうと、大友は「笑えよ」とカラオケを歌い始める。しばらく泣いていた夏芽だったが、大友が全力で歌う姿を見て次第に笑顔になっていく。

涙を流しながらも段々と表情が明るくなっていく様子から、最後くらいは暗い顔を見せず、目の前にいる大友と向き合おうと前向きな気持ちになっているように感じた。

曲が終わると、きちんと大友の目を見て「ありがとう」と握手をした夏芽。表情からは、暗い気持ちはすっかりと消え、新しい道を歩んでいこうと心に決めたことが分かる。

泣いた後に見せた笑顔はどこか凛々しく、思わず見惚れてしまった。

劇中の小松菜奈の喜怒哀楽に、今後も期待


(C)2022映画「余命10年」製作委員会

ひとくちに「涙の演技」と言っても、その時の心情によって見せ方は大きく異なっていた。小松菜奈はどんな状況だとしても、きちんと気持ちを込めて涙を流しているので、こちらの心まで揺れ動く。

今回は「涙」の演技に注目して小松菜奈について語ったが、彼女の魅力はもちろんそれだけではない。喜怒哀楽の表現がどれも素直で、観ているといつの間にかキャラクターに感情移入している。

画面に映ると目が離せなくなるほど、魅力あふれる彼女の演技。今度はどんな顔を見せてくれるのだろうか、楽しみだ。

(文:きどみ)

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