『ウェディング・ハイ』天才バカリズムが披露する「結婚式あるある」の世界!


お笑い芸人としてのセンスを巧みに活かした脚本術


(C)2012 バカリズムTHE MOVIE製作委員会

さて、そんなバカリズムのキャリアを遡っていきますと、1995年から2005年までお笑いコンビ“バカリズム”として活動し、その後ピン芸人となり、コンビ名をそのまま自身の芸名とします。

2006年の「R-1ぐらんぷり」をはじめ、フリップネタ“トツギーノ”の新鮮かつ衝撃的な笑いは今も忘れられないものがありますが、その後も都道府県の地形そのものをギャグにした“地理バカ先生”のシュールなセンスにも脱帽したものでした。

一方では2006年よりアイドルユニット“アイドリング!!!”の看板番組「アイドリング!!!」でMCを務めましたが、およそアイドル番組とは思えない体育会系ノリで、アイドリング!!!の女の子たちに徹底した試練を与えていく温かくも厳しい鬼教官ぶり(?)は、番組をおよそ9年の長きにわたって継続させる人気のポイント足り得ていたと思います。

(昨年、久々にメンバーやMCたちが集まっての特番も催されましたが、コロナ禍にもめげず、そのパワーは俄然健在でしたね)


(C)2012 バカリズムTHE MOVIE製作委員会

そんなバカリズムですが、実は日本映画学校の出身で(もっとも本人は「あまり映画に興味はない」とコメントしているようですが)、2012年には『バカリズムTHE MOVIE』で(ほぼ)監督・脚本・出演を務めています。これは彼のお笑いを5本のオムニバス形式で映画化したもので、このときはまだ自身のお笑いを映像のドラマとして変換させようとする意欲に技術が追いついてなかった憾みもありましたが、それでも今後の可能性みたいなものは強く感じさせられたものです。

この後、彼は脚本にも映像の仕事の軸足を傾けるようになり、そちらの方面で才気を開花させていきます。

個人的には時間を逆戻りさせるタクシー運転手(竹野内豊)を主人公にした「素敵な選TAXI」(14)や、市川崑監督の名作映画を原作にしつつ、かなりの改変を施して連続ドラマ化した「黒い十人の女」(16)に目を見張りました。


(C)2020「架空OL日記」製作委員会

そして自身がOLになりきって架空の日常を綴ったブログ(後に書籍化)をドラマ化した「架空OL日記」(17)では、何と自らがOLの「私」に扮して、普通に他の女優たちと一緒に日常を過ごすというぶっとび技を披露。

これによって本作は2017年6月度のギャラクシー賞月刊賞を、バカリズムも第55回ギャラクシー賞テレビ部門特別賞を、さらには脚本家として第36回向田邦子賞まで受賞!

ここに至り、お笑い芸人としての矜持を保ったまま、脚本家バカリズムとしての存在が広く世に知れ渡るようになっていきます。


(C)2020「架空OL日記」製作委員会

2020年には彼の原作・脚本・主演劇場版『架空OL日記』が公開。

同年秋に脚本を手掛けたWOWWOWドラマ「殺意の道程」では、父を自殺に追いやった者を殺害すべく主人公(井浦新)とそのいとこ(バカリズム)が犯行計画を練っていくというシリアスなストーリーながら、その打ち合わせ場所をどこにするかとか、凶器は何にするかとか、普段の犯罪ドラマでは描かれない日常の細部にこだわりまくることで不可思議な笑いをもたらすという、今回の『ウェディング・ハイ』ともどこか共通する「あるある」作品としてユニークな仕上がりでした。
(2021年には再編集した『劇場版殺意の道程』も公開)


(C)2021「地獄の花園」製作委員会

2021年には、ヤンキーOLたちの派閥闘争を壮絶なアクションと笑いで描く『地獄の花園』脚本を担当。こちらは『架空OL日記』とはまた別路線の、いわゆるヤンキー・バトル映画の世界をOL界隈に移行させた秀逸なアイデアのもので、永野芽衣をはじめとする女優陣がきちっと激しいアクションに取り組んでいるのも嬉しければ、コワモテの遠藤憲一らがOLに扮しているという設定も大笑いの作品でした。



そして今回の『ウェディング・ハイ』ですが、改めて彼の非凡な才能を面白おかしく楽しめる作品に仕上がっています。

と、ここまでくると彼が監督した映画作品をまた見てみたくもなってきますが、本人にその意欲はあるや否や?

ただ、多くのファンがその実現を心待ちにしていることも紛れもない事実でしょう!

(文:増當竜也)

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(C)2022「ウェディング・ハイ」製作委員会

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