「シジュウカラ」第10話レビュー:缶コーヒーを何度も飲む千秋…彼の苦しみはいつまで続くのか(※ストーリーネタバレあり)
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山口紗弥加主演のドラマ「シジュウカラ」が2022年1月7日深夜にスタートした。
坂井恵理原作、「JOUR」(双葉社)で連載中の同名漫画を実写化した本作は、漫画家の女性が、恋と仕事を通して自身の不確かな人生観と向き合っていくストーリー。人生のセカンドチャンスに戸惑いながらも生きる主人公を山口紗弥加、忍と18歳差の恋に落ちる若きアシスタントを板垣李光人が演じる。
本記事では、第10話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
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「シジュウカラ」第10話レビュー
かつて千秋(板垣李光人)はコーヒーが苦手だった。
忍(山口紗弥加)と初めて会ったときはジュースを飲んでいた彼。コーヒーが飲めないのを忍に知られた後、一人缶コーヒーを買って「苦い」と顔をしかめながら飲んでいた。
たぶん、忍に近づきたくて、ちゃんと大人として見てほしくて、背伸びするようにコーヒーに挑んでいた千秋。そのうちに慣れてきたのか、成長した彼はたびたび缶コーヒーを飲むようになっていた。
この10話で、千秋はこれまで以上に何度も缶コーヒーで喉を潤す。たぶん、苦しすぎる現実からほんの少しでも逃れるために。
みひろ(山口まゆ)からの着信を受けて千秋が忍とともに家に戻ると、そこにいたのは失意に暮れたみひろ。みかねた忍は彼女を預かることを申し出た。
みひろとはひとまず距離を置いた千秋。だが、彼にはもう一人依存してくる存在がいた。母親の冬子(酒井若菜)だ。
勤め先で商品を盗んで解雇された母親を迎えに行く千秋。その後も千秋がバイトするレストランに来て泥酔するなど、冬子は息子を困らせ続ける。
一方みひろを預かった忍は、食事を用意したりカップを買ってあげたりと何かと世話を焼く。おかげでみひろも心が和らいだのか、コーヒーを淹れたり忍の寝床をかわいく整えたりするようになる。ただ、みひろに優しく接する忍のそばで穏やかでない顔をするのが岡野(池内博之)。忍と千秋の絆をすでに察しているのだろう。
忍がみひろとともに仕事場で寝泊まりする中、まだマンションに居座っていた元夫・洋平(宮崎吐夢)。彼の元へ涼子(和田光沙)が訪れてくる。彼女は冗談めかしつつ「一緒にマンションでも買っちゃう?」と洋平を誘う。
離婚したとき、妙にサバサバしていた洋平。あれは涼子がいてくれたおかげだったのだろう。だが、この彼女、前話で冬子を追い出すようにスナックのママになりかわったのが明らかになっていた。洋平に近づいたのも何か裏があるのではと思えてしまう。もしかすると、この先洋平は痛い目を見るかもしれない。
今回、荒木(後藤ユウミ)から連載打ち切りを告げられる忍。これに岡野と千秋は異なる反応を示す。自分のところで復讐劇のようなスピンオフを描いたらと提案する岡野。これを忍は「誰かの傷の上に成り立つ作品を今は描きたくない」と拒否。対して千秋は、「新しいものを描くチャンスかも」と言う忍の言葉に顔を輝かせ、「先生の漫画読みたいです。ファンなんで」と伝える。
現・編集者(岡野)と元アシスタント(千秋)で、もちろん立場や事情が違うのだが、それを差し引いても忍を理解しているのは、果たしてどちらなのか。
忍と千秋の間のことに苛立ちを覚えているせいか、岡野は千秋につらく当たる。打ち合わせに遅刻してネームの修正もしてこなかった千秋に、みひろのことを持ち出して「佐々木先生にも仕事や生活があるんですよ」と責め、「漫画、そんなんじゃ続けられないでしょ。やめます?」と厳しい言葉を投げかけた。千秋にも非はあるが、岡野も仕事に個人的感情を持ち込んでいる感ありで若干大人げない気がする。
みひろとの生活が楽しくなってきている忍。二人で過ごしながら「娘ができたみたい」と喜ぶ。
忍の前で、最初は「私のことなんて娘にしないほうがいい」と頑なだったみひろだが、次第に「なんでみんな私のことちゃんと見てくれないの……」とつらさを吐露。忍は思わず彼女を抱きしめる。
かつて千秋にしたように、みひろをちゃんと子ども扱いして大人として包み込んだ忍。彼女は母性が深い優しい女性なのだと改めて気づかされた。これでみひろは少し救われたはずだ。
だが、千秋のほうはそうはいかない。母の泣き声を耳にしたときも缶コーヒーを飲み干して耐えていた彼だが、冬子から「もっと稼げんのに。昔みたいに」と言われてたまらずに実家を出ていく。こういう言葉を息子にかけてしまうあたり、以前も書いたがやはり冬子は天性の魔女なのだと思う。
忍の仕事場であるマンションのベンチで缶コーヒーを飲む千秋。そこへ岡野が現れる。マンションに入る彼を見て笑い出す千秋。まるで報われないおのれの運命を呪っているかのよう。彼の苦しみは一体いつまで続くのか。
忍をたずねた岡野。千秋のネームを「理想の母親像を描いてるだけ。恋愛と錯覚してる」と評する。忍も同調するが、うなずき方に力がない。
その流れで、岡野からプロポーズされる忍。彼女はこれを受けてしまうのだろうか。
(文:田下愛)
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