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『ロスト・ボディ〜消失〜』あなたは耐えられるか?ウナギのような敵に!

(C)2020. SABADO PELÍCULAS, BARRY FILMS, THE PROJECT



あなたは、「完璧な敵」に出会ったことがあるだろうか?


どんなに攻略を試みても、ウナギのようにヌルッと手から滑り落ちていくような敵に。

2022年5月11日(水)よりレンタルが開始された『ロスト・ボディ〜消失〜』は、まさしくウナギのような敵に遭遇してしまう話であった。今回はジメジメとする梅雨にぴったりなこのサスペンス映画を紹介していくとする。

制御不能!?「完璧な敵」に主導権を奪われる物語

■女がタクシーに乗り込んだ時、全ての歯車が狂った



主人公は建築家ジェレミー・アングスト(トマシュ・コット)。彼は20年前にある悲劇を経験したそうだ。それ以来、建築における完璧さとは美しい建物を造るのではないと思い、利用者に寄り添ったデザイン造りを意識するようになった。「完璧さ」を追求し続けてきた彼は、「完璧さ」の壁を打ち破ることで更なる完璧な存在となったのである。

ジェレミーは講演会の後、思わぬ出来事に遭遇する。タクシーで空港を目指す。天気は雨。道は渋滞。フラストレーションが溜まるばかりだ。なんて不運な日なんだ。そこへ、コンコンコンコンコンと音がする。横を振り向くと、窓の外にはびしょ濡れの女性が立っていた。彼女は空港へ行きたいようだ。乗せてくれないかとお願いをしてくる。

今にも泣き出しそうな瞳を向けながら。ここは紳士にと中へ招き入れるジェレミー。彼女の名はテセル・テクスター(アシーナ・ストラテス)。彼を恐怖に陥れる女であった。

■豹変する女、彼女は何者だ?



タクシーをしばらく走らせていると、荷物を積むのを忘れたと騒ぎ始めるテセル。しかたなく引き返す。やっとのことで空港に着くが、結局ジェレミーは飛行機に乗れなかった。実はこの空港は、大昔に彼がデザインしたもの。よりによって自分が建てた空港に閉じ込められるなんて気分が悪い。そんな彼はふと空港の模型を眺める。すると血のようなものを見つけてしまう。彼の不安を示しているのだろうか。気を取り戻そう。ラウンジの椅子に腰掛ける。すると、あの女・テセルが現れてしまうのだ。しかも彼女はタクシーの時の態度とは異なり、挑発的に話しかけてくる。それも周りの人に聞こえるような声で。

「今は話したくない。」

とジェレミーが言えば、

「失礼ね。」
「私の話をするしかないわね。」

と煽りながら、この会話から逃さぬよう言葉を叩き込んでくる。しまいには、

「ぶん殴りたい?」

と彼の怒りを見抜いたような言葉まで投げかけてくるのだ。しかたなく付き合うことにするのだが、どうもおかしい。講演会には来ていないと語る彼女だが、講演で話したサン=テグジュペリの名言を自然な形で引用してくる。彼女は吐き気をも抱くほどグロテスクな猫の餌を貪り食ったり、ストーカーした女性に対して更なる追い討ちをかけたりしたと語るのだ。もちろん、これらの話も周りの人に聞こえるような声で。

彼女は誰だ?
実は自分と関係ある人なのでは?
ひょっとして20年前の悲劇について何か知っているのでは?



このような疑惑と不安は、空港の模型に不気味な変化を与える。そしてジェレミーはテセルの手の上で転がされていくのであった。

『ロスト・ボディ〜消失〜』は粘着質に話しかけてくるが、絶妙な会話の切り返しでなかなか真実を掴むことができないイヤらしさを描いた作品だ。そしてそのイヤらしさ盛り上げる装置として空間が効果的に使われている。

バーカウンターで周囲に聞こえるギリギリの大きさで恐ろしい話をした際の緊迫感はもちろん、テセラがビュッフェ会場で素手でクッキーを取り、食べながら、話しながら、汚く料理を盛り付ける様にもイヤらしさが宿る。

このような空間をじっくり捉えていくことで、完璧主義者がコントロールできないモンスターのような存在に感じる不安を擬似的に抱くことができるのだ。

トマシュ・コットとアシーナ・ストラテスの演技に注目



本作は、トマシュ・コットとアシーナ・ストラテスにとってマスターピースともいえる作品だろう。

ジェレミー役を演じたトマシュ・コットは『COLD WAR あの歌、2つの心』で激動の時代に揉まれながら歌手を夢見るズーラに恋する音楽舞踊団の男ヴィクトルを演じている。第二次世界大戦後のポーランドを舞台に、激動の時代に飲み込まれながらも静かに恋情を醸造していく渋い演技をしていた。

社会情勢に引き裂かれ、再び会った時には互いに婚約者がいた。恋愛感情はまだ残っており、気持ちを抑えながらも接する繊細な演技が印象的であった。そんな彼が、冷静に振舞おうとするのだが、段々と内なる建造物の底に押し殺していたものが噴き出そうとする衝動的行為の片鱗を魅せていく。

『COLD WAR あの歌、2つの心』で「静」の演技を魅せていた彼が、「静」から「動」へとギアチェンジしていくアクションは本作の見どころである。



またトマシュ・コットの演技を引き出したのは、魔性の女テセル役を怪演したアシーナ・ストラテスといっても過言ではないだろう。南アフリカ出身のアシーナ・ストラテスは『ジーニアス・ピカソ』でパブロ・ピカソの娘・マヤを演じている。

ドラマ・シリーズを中心とした活動してきた彼女は、2019年の『グッドライアー 偽りのゲーム』で映画デビューを果たし、『ロスト・ボディ〜消失〜』では物語の中心人物として抜擢された。

虎柄の服をまとい、鋭い眼光でジェレミーを見つめる彼女には魔性の香りがする。ジェレミー同様、危ないと分かりつつも、同情してしまう瞬間があり、その隙間を見逃さずコントロールしていく。油断したくなるような軽さと言葉の重さのヒット&アウェイが鋭く、まるで総合格闘技の試合を見ているような興奮が彼女の演技から感じ取れるのだ。

また、彼女はただその場にいるだけなのに怖かったりする。例えば、心理的恐怖を植え付けられたジェレミーがある場所に逃げ込む場面。彼女はそこへヌルッと侵入してきて、居座り始める。その空間には居心地の悪さが流れている。次に彼女が何を仕掛けてくるのかがわからない恐怖があるのだ。

ユラユラと身体を動かしながらジェレミーの近くにいるだけで恐怖を醸し出すアシーナ・ストラテスの演技は魅力的である。

彼女の得体の知れなさが、ジェレミーの内なる負の感情を引きずりだす。トマシュ・コットはアシーナ・ストラテスのアクションに対応して、怒りや怯えを顔に表していく。

『ロスト・ボディ〜消失〜』は、最初から最後まで俳優の高度な演技合戦に息をつく暇もない作品でもあったのだ。

緑色の沼に埋められる恐怖



ところで、ポスターの強烈なビジュアルにそそられて観てみるものの、全くそのような場面がなく残念に思った経験はないだろうか。

『ロスト・ボディ〜消失〜』のポスターは、緑色の沼のようなものにジェレミーとテセラが埋まっており、彼女が彼の首を絞めようとしている。このような描写は果たしてあるのだろうか?

答えは、“YES”だ。

ネタバレになってしまうので詳細は避けるが、ポスターのような確かにある。空港のラウンジからどのようなプロセスを経て、ジェレミーがこのようなシチュエーションになるのかは是非映画を観て確認してほしい。あまりに斬新な展開で彼が埋まっていくのできっと驚くことだろう。

『ロスト・ボディ〜消失〜』はこんな方にオススメ


・胸糞映画を観てどんよりしたい方

・映画は俳優の演技で観る派な方

・『ファニーゲーム』『本気のしるし』『岸辺露伴は動かない』が好きな方

もし、このようなキーワードにピンと来たら、是非『ロスト・ボディ〜消失〜』に挑戦してみてください。きっと、楽しい映画体験ができることでしょう。

(文:CHE BUNBUN )

■『ロスト・ボディ〜消失〜』配信サービス一覧



| 2020年 | 日本 | 90分 | (C)2020. SABADO PELICULAS, BARRY FILMS, THE PROJECT | 監督:キケ・マイーヨ | トマシュ・コット/アシーナ・ストラテス/マルタ・ニエト/ドミニク・ピノン |

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