「ちむどんどん」第18回 だめ、絶対! お金が倍になる政府の重要秘密に食いつく賢秀(竜星涼)
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第18回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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比嘉きょうだいの魂を燃やすもの
歌子(上白石萌歌)ピンチ!と思ったらかぶった布の渦巻で下地先生(片桐はいり)が目を回し、ことなきを得ます。そんな〜
布のなかに隠れたままで歌子は下地先生の「音楽は人の心を動かし人生を豊かにときに弱い者を勇気づけてくれます」という言葉を聞きます。
先生は、産業まつりで歌子の”魂の歌”を歌ってほしいと希望を語っていったん引き上げます。
逃げながらもじつは先生のことは嫌いじゃないと家族に明かす歌子。歌子も意外と屈折した性格です。はにかみ屋で素直に他者に向き合えないんですね。
素直になれない代表格の賢秀(竜星涼)は素直にコツコツ働かず、どかーんと大きな仕事をしたいと豪語していて、それにつけこんだ謎の男・我那覇(田久保宗稔)に、お金が倍になる政府の秘密に基づいた儲け話を持ちかけられ、1000ドルをつぎ込もうとします。
眉唾であると良子(川口春奈)は猛反対。当然の反応です。が、沖縄が日本に返還されると通貨がドルから日本円に変わり、それによる貨幣価値の変動は気になる問題ではあったでしょう。2022年の現代だってまさに円安が問題になっていますし。だからこういうあやしい話もあったのでしょうけれど、なんでこういうことに引っかかってしまうんでしょうか、賢秀は……。
時代といえば、60〜70年にかけて民衆による政治運動が活発でした。石川博夫(山田裕貴)は良子とのサンセットバーガーでの勉強会で「封建的な現代社会を変えるのは言葉。ある熱量と気概に溢れた言霊こそが変化をもたらし、あらゆる意味での革命につながる」と語ります。革命の時代の余熱に石川はまだ影響されているのでしょう。
石川の考え方と下地先生の考えはある意味、共通です。人間の魂の発露が世界を変革すると彼らは信じてやまないのだと推測します。下地先生のハキハキしたしゃべり方もきっとこの”ある熱量と気概に溢れた言霊”なのでしょう。
学ぶこと、恋すること、歌うことは魂を燃やすこと。一方、料理に魂を注ぐ暢子(黒島結菜)は、産業まつりの料理コンテストの最大ライバルに闘志を燃やします。
前田早苗(高田夏帆)をはじめ料理部員の女の子たちがにぎやかで、とりわけ宮城珠子(井上向日葵)が高校演劇部みたいなムードで微笑ましいと思ったら、京都造形大学(現:京都芸術大学)出身で、さいたまゴールド・シアターの最終公演「水の駅」にも出演した演劇の人でした。「水の駅」筆者も観ていましたが、「ちむどんどん」ではメガネっ子役だったのでクレジットを見るまで気づきませんでした。
余談ですが、さいたまゴールド・シアターは故・蜷川幸雄さんがつくった劇団です。蜷川さんはまさに60〜70年代の政治闘争の時代に演劇活動を行い、その頃の想いを晩年までずっと持ち続けた人でした。その言葉には”ある熱量と気概に溢れた言霊”がありました。71年に初演した代表作で、民衆の闘争を描いた「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」を2014年、雨傘革命を行っていた香港で上演しています。そのゴールド・シアターの俳優たちと共に芝居をした井上さんが71年の沖縄を描いたドラマに出演していることに不思議な偶然を感じます。
さて、ライバル校・南山原高校料理部のリーダー屋良ひとみ(池間夏海)はまたいかにもなツンとした美人(言い方)で。女子高生たちのきらめきがまぶしぃ〜。
お話の流れや、キャラ造形が、かなり一昔前の雰囲気ながら、じょじょにそのなつかしさが味わいに感じるようになってきました。慣れるっておそろしいですね。
(文:木俣冬)
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