「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第20回を紐解いていく。
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逆や、逆
白壁の家と呼ばれる次郎丸家の法事に出ることになったスズ子(趣里)は、六郎(黒崎煌代)と連れ立って香川にやってきます。
ツヤ(水川あさみ)の実家ではみんな孫を別け隔てなく歓迎しますが、どちらかといえば、スズ子に親しげに接しているような印象。でもそれは六郎がややコミュニケーションが得意ではなく独特のリアクションだからとも言えます。
小学校以来の田舎。父母もいない中でよく親戚と親しげに振る舞えるなあと思ってしまいますが、そこがスズ子のあっけらかんとしたところでしょうか。
ちらし寿司を食べながら、ツヤと梅吉(柳葉敏郎)の過去を知るスズ子たち。実は、梅吉は役者を目指していたこと、ツヤが梅吉が好きで、追いかけて上京したこと……。
ツヤと梅吉が不在だからこそ知る真実。それはふたりから聞かされていたことと逆でありました。
「逆や、逆」
ほかにも、思い込んでいたことと逆なことがあることを、スズ子はこのとき、思いもよりません。
何も知らずにスズ子は、六郎が、彼とスズ子がほんとうのきょうだいではないことを蒸し返そうとするたび、必死に話題を変えます。親戚の人々も何やら微妙な空気。微笑ましいドタバタ展開ですが、本質的には、笑えない、切実な話であるのですが……。
そして、法事の日。
白壁の次郎丸家はとても大きい(ツヤの実家もそれなりに大きい家でした)。
当主の次郎丸(石倉三郎)は酔って、スズ子に踊ってくれないかと言いだします。スターにそんなこと言うのは失礼と咎められると、お金なら払うと言い出し……。酔っているからとはいえ、お金を払えばいいという考えや、踊らせたり御酌させたりと、現代ならハラスメント扱いされるようなことであります。
でもスズ子は、そこにカチンとはならず、にこにこと「金毘羅船々」を歌い踊り、みんなを盛り上げます。
興が乗った次郎丸は、真実を口にして、スズ子は愕然。
実は、スズ子は、次郎丸家の子であるという衝撃の(視聴者はすでに察している)真実!
このとき、六郎が、次郎丸の家にたくさんの動物がいることを喜んで、うさぎを抱えてきたりして、そのうち、数羽の鶏を座敷に放って、場が混乱するなかでスズ子が真実を知るという流れになっています。
スズ子の驚きや混乱を、宴会場と化した法事と、鶏たちの乱入の狂乱で表しています。ただただ、筋を進めるのではなく、その出来事に合った何かを起こすところがよくできた脚本であります。筋とセリフだけでは面白くない。身体感覚にアプローチしていくことが肝要です。
ツヤの母・トシを演じている三林京子さんは、「スカーレット」で、
貴美子(戸田恵梨香)が大阪に働きに出たとき、家政婦の先輩として厳しくあたたかく教えてくれた大久保さんで絶大な支持を得ました。
三林さんは大阪出身なので、大阪弁も自然で、大阪の人のたくましさが感じられます。今回は、職業婦人ではなく、家の女当主として、どっしり構える、前作「らんまん」の松坂慶子さん的な雰囲気で、大久保さんとはまた違う雰囲気です。どんな役でも三林さんが演じると安心感があり、魅力的です。真実を話そうとする次郎丸の耳を掴む動きとか最高でした。
(文:木俣冬)
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–{「ブギウギ」第4週あらすじ}–
「ブギウギ」第4週あらすじ
大和礼子(蒼井優)は、待遇改善を訴えて山寺にこもってストライキを始める。スズ子(趣里)たち多くの劇団員もそれに従った。会社と正面から対立し、「桃色争議」として世間に大きく取り上げられるが、その代償はとても大きなものだった…。 桃色争議から1年、スズ子は法事で本家がある香川へ行くことになる。久しぶりに会う香川の親戚たち、しかし、皆なにか様子がおかしい。そこで、スズ子はある衝撃の事実を知ることになる。
–{「ブギウギ」作品情報}–
「ブギウギ」作品情報
放送予定
2023年10月2日(月)より放送開始
出演
趣里、水上恒司 、草彅 剛、蒼井 優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎 ほか
作
足立紳、櫻井剛<オリジナル作品>
音楽
服部隆之
主題歌
中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」(作詞・作曲:服部隆之)
ロゴ・タイトル制作
牧野惇
歌劇音楽
甲斐正人
舞台演出
荻田浩一
メインビジュアル
浅田政志
語り
高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
制作統括
福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー
橋爪國臣
演出
福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠 ほか