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2022年06月10日

『CUBE 一度入ったら、最後』で注目したい、“3人”の演技の魅力

『CUBE 一度入ったら、最後』で注目したい、“3人”の演技の魅力



1997年公開映画『CUBE』(ヴィンチェンゾ・ナタリ監督)が、菅田将暉主演で邦画リメイクを果たしたのは記憶に新しい。

本記事では、主役級に光る演技を見せる斎藤工、杏の両名と、決してスルーできない存在感を見せつけた子役・田代輝の魅力をあらためて解説。この機会に、ぜひとも『CUBE 一度入ったら、最後』に触れてほしい。

知的かつ冷淡、終始クールな斎藤工



本作で斎藤工が演じるのは、終始クールな姿勢を崩さず、淡々と論理的に目の前の問題に向き合う整備士の男・井手寛。

得体の知れない箱のなか、素性の知れない男女と顔を付き合わせなければならない状況にあっても、常に冷静な態度である。「箱から脱出するためには、どうすべきか?」を端的に考え、進むべき方向へ進む様は視聴者にさえも安心感をもたらしてくれる。

彼が演じる井手の冷静さを強く感じるのは、まず「箱にはトラップが仕掛けられていることを早々に見抜いている点」だろう。

人が足を踏み入れたら最後、火炎放射器のような機材から炎が噴き出たり、刃が飛び出してきたりする。井手は、身体よりも先に自分の靴を投げ入れることによって、トラップの有無を判断するのだ。

その頼りがいのある性格は、どこか斎藤工本人のパーソナルな面さえも彷彿とさせる。

物語が進むにつれ、多少感情的になったり、その腕っぷしの強さから他の者たちを押さえつけようとしたりする様も見受けられる。

しかし、そんな点を踏まえても、知的かつ冷淡なおかつクールな斎藤工を見られるのは、この作品だけと言ってもいいのではないだろうか。

映画『シン・ウルトラマン』の公開が話題になったばかりの斎藤工。主役級はもちろん、脇役としても上質な存在感を残している。

美人だが底知れず不気味な杏



杏が演じるのは、謎の箱に閉じ込められた面々のなかでも唯一の女性。とある団体職員を名乗る甲斐麻子である。

命の危機が迫っているにも関わらず、感情の浮き沈みが少ない。少ないというより、まったくないと言ってもいい。積極的に箱からの脱出を試みるでもなく、かといって諦めた様子も見受けられないのだ。ただ静かに、ほかの5人を観察している。

美人で紅一点とも言える存在。殺伐とした状況で唯一の花を添えてくれるように思えるが、井手とはまた違う冷静沈着さが、底知れず不気味に感じられてならない。

物語が進むにつれ、私たちは次第に彼女への“疑惑”を強めることになるだろう。

果たして甲斐麻子は味方なのか、それとも敵なのか?

そんな疑念を生まれさせるのも、役者・杏が持つミステリアスな魅力によるものである。

2015年に結婚、その後3人の子を出産した彼女は、一時期ドラマや映画の世界から遠のいていた。しかし本作『CUBE』やドラマ「日本沈没-希望のひと-」(21)そして映画『とんび』(22)などへの出演を通して、さらにオーラに磨きがかかったようにも見える。

あえて言葉にするなら、凄みが増したと言えるだろうか。

とくに「日本沈没」では、急激な地盤変化により沈没の危機に陥る日本と、それによって明るみに出る政治の腐敗に切りかかるジャーナリスト役を、見事に演じきってみせた。

2022年7月にはドラマ「競争の番人」にて、坂口健太郎とのW主演も決まっている。ますます目が離せない役者となることは、間違いないだろう。

世の中の鬱屈と向き合う13歳を演じきった田代輝



杏が演じる甲斐麻子がたったひとりの女性なら、田代輝演じる宇野千陽はたったひとりの子どもだった。13歳という若さで、いきなり謎の箱へ閉じ込められる恐怖はいかばかりだろう。まだ役者としてのイメージがついていない彼だからこそ、まっさらな状態で表現できたのではないだろうか。

千陽は、箱に閉じ込められる以前、学校でいじめに遭う経験を負っていた。もともとは明るく、13歳の少年らしい陽気さを持っていたものの、不当に抑圧された生々しい過去がそれを消し去ってしまう。

はっきりと言葉にはしないものの、本作の主人公・後藤(菅田将暉)は、その“闇”を感じとった。自分と同じように数字に長ける千陽を見て、自己を投影するような描写もある。千陽自身も、最初こそ殻に閉じこもり一言も発さずにいたが、やがて後藤を信頼し協力する姿勢を見せる。

6人の男女が閉じ込められる箱のなかは、まるで社会の縮図のようだ。

どうしてか力関係が浮き彫りになり、上に立つ者と下に落ちる者とに分けられる。その構図は図らずも、箱の外=現実世界における自身の立ち位置と共通していく

自らの地頭の良さで箱のトリックを解き、脱出を試みる千陽は、そんな不当さを打ち壊すかのように力を発揮していくのだ。

大人が決めたルールや、知らないうちに振り分けられた力関係には応じない。自分の力は自分で見極め、自分の人生は自分の選択によって作り上げていく。13歳の若さだからこそ生み出せる推進力で、千陽は“大人にも負けない自分”を知っていく。

2007年生まれの田代輝は、作中で演じた千陽と同世代。自分自身を千陽に投影する過程で、大人に対する反骨精神が芽生えたのではないかと想像できる。だからこそ、物語が進むにつれ彼の目には力が宿り、あの結末に繋がったと考えられるからだ。

謎の箱に閉じ込められ、命の危機と隣り合わせになりながらも脱出を試みる男女の物語。この機会に、人間の精神を揺るがす脱出サスペンスの虜になっていただきたい。

(文:北村有)

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| 2021年 | 日本 | 108分 | (C)2021「CUBE」製作委員会 | 監督:清水康彦 |菅田将暉/杏/岡田将生/田代輝/斎藤工/吉田鋼太郎 |

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©️2021「CUBE」製作委員会

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