「マイファミリー」で深化。二宮和也に役が馴染むワケ
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どこか本音が見えないような、穏やかな表情の下に隠している情熱。
役者・二宮和也を論じるのは難しいと思いつつ、ひと言で表すなら「繊細」かもしれない。
クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』(2006年)でハリウッドデビュー。映画『母と暮せば』(2015年)で第39回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。
映画だけでなく、数多くのドラマにも出演してきた二宮が「マイファミリー」で演じているのが、娘を誘拐される父親・鳴沢温人。さらにほかの誘拐事件にも巻き込まれて行き、被害者だったはずなのにいつしか事件の最重要人物へとポジションが変化していっている。
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その顔には、裏がある
二宮が出演してきたドラマの中で今回、注目したいのが「マイファミリー」と同じTBS系列で放送されていた「山田太郎ものがたり」と「流星の絆」だ。
「山田太郎ものがたり」で二宮が演じているのは「山田太郎」。容姿端麗、学業優秀、運動神経抜群。だが実は大家族の長男で、ふわふわとした両親のもとで、自然としっかりとした性格に育ち、家族のため、アルバイトに精を出している。
日々、家族や周りのくせのある人たちに振り回されているが、それで嫌な顔をすることもない。
「流星の絆」では3人兄妹の長男、有明功一を演じている。普段はカレー屋で働いているが、実は有明兄妹は詐欺を働いており、功一はリーダー。弟の泰輔と妹の静奈が実行役で、功一はその裏で詐欺のシナリオを組み立てていく。そんな彼らの本当の目的は小さいころに両親を惨殺した真犯人を見つけることだった。
兄として責任感を持ち、どっしりと構えながらも、できる限り弟・妹たちに自由にさせてやる。ちょっと舐められることがあっても参ったな、とふにゃりと笑い、気にしない。いつでも一歩引いたところで見守っている。
だが、何かあったときには駆けつける。理不尽なことがあれば怒りを爆発させる。普段はクールというより、どこか諦めているようにも見えるのにいざとなると、誰よりも強いパッションをぶつける。家族に振り回されているように見えつつも、実は大きな愛を持っている。
不思議と、その様子は「役」でありながらも「二宮和也」の延長線上にも見える。
のぞくお茶目さとの自然なギャップ
最近の二宮の活動でパッと思い出すのは、自身のYouTubeチャンネルだ。
KAT-TUNの中丸雄一、Hey!Say!JUMPの山田涼介、SexyZoneの菊池風磨で定期的に更新されている「ジャにのちゃんねる」は現在、チャンネル登録者数は329万人。4人がわちゃわちゃとしている様子が微笑ましい。
チャンネル内での二宮はとてもお茶目な様子で見ていて楽しい。ここに来て、新しい表情を見たような気がする。
でも、ふとしたときに見せる「何を考えているかわからなさ」がすごい。(が、だいたいこういうときは誰かにいたずらを仕掛けようとしていることが多いように思う)
本音が見えないことで、他のメンバーは自然と探る。それは視聴者も同じ。どんなときでも自分の“底”を見せない感じに興味を惹かれてしまう。
もちろん、誰だって人前で自分をさらけ出すことは少ないが「“二宮和也”としても演じている部分がありそう」だと感じさせることで、役柄と二宮和也の境界線があいまいになる。
よく“役が憑依する”というフレーズを聞くが、二宮の印象はグラデーション。
二宮和也から徐々に役に変化していく。だから、ふとしたときに「二宮和也っぽさ」が覗いても、「そのキャラクターならこういう表情をしそう」と思わせられる。
物語の中だけに存在するキャラクターではなく、実在する人物の延長線上に役があると思えると、急に作品が「近く」なる。
そして、それだけ観ている側は作品に惹き込まれるのだ。
二宮和也が“目”で見せる感情の揺れ動き
「マイファミリー」で二宮が演じる温人はとんでもないことに巻き込まれていく。
娘が誘拐され、取り戻すために大きな金を動かし、挙句の果てに誘拐事件の片棒を担がされそうになっている。
もちろん、感情の大きな揺れ幅を表に出すこともある。が、犯人とのやりとりの中での動揺、相手に悟らせないように隠し事をしている様子。
表情を変えずに目が動く……その動きがなんともリアルだ。
視聴者側は、温人がどういう状況に置かれているかを知っている。真実を隠しながら行動している中で、言動に違和感はないものの、目だけが雄弁だ。感情が滲みだす。クールに見えるのに、感情表現が豊かに見える理由はそこにあるのではないか。
もうひとつ、あんなに頭がよさそうなのに嘘が下手だという演技がうますぎる。なんだかんだで妻に弱く、妻には嘘をつけない夫なんだということがわかり、可愛く見えてしまう。
また意外だったのが、中学生の娘がいる父親という役どころだ。妻の未知留を演じる多部未華子も、中学生の娘がいるようには見えない。正直、設定を見たときに違和感なく見られるだろうか、と思っていたが完全に杞憂だった。
徐々に、ではなく最初から12~13歳の娘がいる夫婦だった。理由は、温人と未知留の間に一緒に過ごした長い時間がちゃんと存在しているように見えたから。
「山田太郎ものがり」で共演していた、あのときの2人がそのまま夫婦になったのではないか、と考えたくなるような熟年感がある。
また、一度離れていった夫婦の心が戻っていく過程もごく自然だった。2人の関係の変化が大々的に描かれる場面はなかったが、ちょっと仕草やセリフで過ごした時間を感じさせる。
見た目はずっと変わらない。それでも、時間の流れをこのように演じて説得力があるように作れるのは、二宮和也、多部未華子それぞれの演技力だからこそ、かもしれない。
これからの二宮和也の進化
長くさまざまな役柄を演じてきたとしても「二宮和也」を知っている人が多いからこそ、演じにくい側面もあるだろう。役者・二宮和也であり、嵐・二宮和也でもあるから。
ただ、彼の演技は自身の延長上に役があるからこそ、年齢を重ねるにつれて演じる役柄が変わってくる。
「二宮和也が役に馴染む」というより「役が二宮和也に馴染む」というほうが正しいのかもしれない。きっと、このタイミングで「鳴沢温人」を演じたのは必然だった。
温人を見たことで、視聴者の期待は膨らんだはず。この先、まだまだ新しい二宮和也が見られるぞ、と。
(文:ふくだりょうこ)
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