2022年06月20日

BiSH短編オムニバス映画インタビュー:アイナ・ジ・エンド「私のルーツを描き出した映画」

BiSH短編オムニバス映画インタビュー:アイナ・ジ・エンド「私のルーツを描き出した映画」


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“楽器を持たないパンクバンド”BiSHが、2023年をもって解散を発表しているこのタイミングでオムニバス映画『BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK'N'ROLL』を公開。

cinemas PLUSでは、BiSHが所属する音楽プロダクションWACKの渡辺淳之介代表を含め、メンバー全員にインタビューを実施。本記事では、映画『リノベーション』で主演を務めるアイナ・ジ・エンドの言葉をお届けする。

BiSHではリードボーカルとして存在感を発揮、振り付けも担当するアイナ。ソロでの音楽活動はもちろんのこと、2022年公開『SING/シング:ネクストステージ』で吹き替え声優を行うなど、活動の幅を広げ続けている。

彼女にとって、映画『リノベーション』はどんな意味合いを持つのだろうか。 

この映画を理解する鍵は「音楽とダンス」


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――アイナさんの映画『リノベーション』は映像+ダンスが融合していて、独特な異世界に誘い込まれていく感覚がありました。


アイナ・ジ・エンド(以下、アイナ):最初に田辺(秀伸)監督から、短編映画にしてはものすごく分厚い脚本をもらったんです。説明書きや絵コンテがバ〜っと書かれていて。それを見ながら周りのスタッフさんと、手探りで作り上げていく感覚がありました。何しろ、監督にしか正解がわからなかったので。

その中でも、友人と一緒につくった挿入曲は、しっかり考えられたと思います。どんな曲を作るか、どのタイミングで入れるか、田辺監督としっかり話し合いました。

挿入曲をつくっていた時期が、ちょうどソロファーストアルバムのリリース時期だったんです。作詞作曲について右も左もわからない状態から、友人と一緒に朝から晩までスタジオにこもって、頑張ってつくりました。


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――挿入曲が、映画を理解するカギにもなっているんでしょうか。

アイナ:私たちのつくった音楽と、坂口涼太郎さんのお芝居。このふたつを中心に見てほしいです。この『リノベーション』は、6本のなかでも一番「よくわからない映画だな」と思われそうなので。

――アイナさんにとって、音楽活動と演技表現との間に共通点はありますか?

アイナ:演技については、まったく掴めなかったです。「演技をしてる」って意識もなく、ただ田辺監督を信頼して、アイナ・ジ・エンドとしてしゃべっていた感覚でした。坂口さんのセリフの言い回しや仕草を見ながら「これが演技なんだ!」と感動しちゃって。

以前に行定(勲)監督とリモートでお芝居をやらせてもらったときは、制限があるなかで自由を表現する大切さを教えてもらったんです。「このタイミングでコップを手に取って」とか、ひとつひとつの仕草に指示があって。

田辺監督からは何も指示がなく「アイナの好きにしていいから」と言われていました。私に対して信頼してくださっている感覚があって、とてもありがたかったです。いろいろな監督とご一緒する経験を通して、演技と自分の感情がリンクする感覚が掴めるのかもしれないって思いました。


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――音楽、お芝居、ダンス。いろいろな要素が詰まっている映画ですね。

アイナ:田辺監督は「アイナ・ジ・エンドのダンスの原点を描きたい」と思ってくださっていたはずなので、その点も汲み取ってもらえたら嬉しいです。

田辺監督の発想には、音楽やダンスに詳しくない一般の人も置いてきぼりにしない優しさがあると思います。でも今回の映画に関しては、理解を求められる面もあるのかな、と。ある意味、田辺監督の挑戦でもあると思うので、その熱も一緒に感じてほしいです。

人は「言葉」で生死を選べる


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――先ほど「ダンスの原点」といったお話がありましたが、撮影中にご自身のルーツを振り返る瞬間はありましたか?


アイナ:割と毎日、情緒というかマインドが変わっていきやすいんです。なので、この映画の撮影時期に限らず、毎日ルーツや自分自身について考えています。例えば、「今日はこういう人を傷つけないようにしたい」とか、自分が言われて嫌だった言葉を思い出して「自分は言わないようにしよう」とか。

日頃から自分のことを振り返って、「ここを直したい」と考えるのが癖になっていますね。


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――それは元々の癖ですか? そう考えるようになるきっかけがあったのでしょうか。

アイナ:とくに、ここ1〜2年で増えたと思います。きっかけは、自分で作詞・作曲をするようになってからかな。

人の「生きる」「死ぬ」って選択は、言葉でも左右されると思うんです。しんどい気持ちのときに「死ね」って歌詞の曲を聞いちゃったら、本当に死にたくなる人もいるかもしれない。そう想像したら、生半可な気持ちで歌詞を書いちゃいけないって思うようになりました。


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――アイナさんが演じられた『リノベーション』の主人公も、ダンスが上手く踊れない動画を見ながら、自分の内にこもっているように感じますね。

アイナ:私もすごく気持ちが落ちちゃう夜があって、この主人公と重なる点は多々あります。彼女がやったのは「気分転換に家でも借りようかな」って家を探しに行く行動で、それが新しい一歩になってる。タイトルの『リノベーション』とも繋がってくるのかな、と思っていて。

内にこもっちゃう夜があっても、一歩踏み出してみたら不思議な世界が見られたり、勇気がもらえたりするかもしれない。そんなメッセージも読み取ってもらえたら嬉しいです。

すべて”まっさら”にしたい衝動がある



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――この映画では主人公が引っ越しするのをきっかけに、さまざまな”不思議な世界”に誘われます。アイナさんは、引っ越しにまつわる思い出はありますか?

アイナ:私、引っ越しが好きなんです。1年に1〜2回したこともあるくらい好きで。なんとなく気分を変えたくて引っ越しするときもあれば、苦情を受けて仕方なく引っ越しするときもあるんですけど。

――苦情ですか?

アイナ:家のなかで歌うから、苦情をいただいたことがあって。時間を調整したり、クローゼットのなかに防音室をつくったり、自分なりに工夫してみるんですけど、なかなか……。でも、そのおかげで引っ越しを繰り返していたら、いつの間にか好きになってました。

――引っ越しのどういうところに、とくに魅力を感じますか?

アイナ:たとえばノートとかも、描き潰していくと汚くなっていきますよね。最後まで書き終えると、書いた内容がぜんぶ自分の脳に入ってるんだって可視化できる。だけど、使い終える前の段階でまっさらにしたくなる衝動に駆られるんです。

引っ越しも同じだと思います。ぜんぶ、まっさらにしたくなる。


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――自分の気持ちごと新しく、スッキリさせたいんですね。

アイナ:そうかもしれないです。よく清掃員のみんなにも「落ち込んだときはどうやって気分を変えてる?」って聞かれるんですよ。むしゃくしゃしたときとかも、わざと絶望系の音楽を聞いてドン底まで落ちたほうがいいと思っていて。そうすれば、そこから逃げ出したい衝動によって自然と身体が動くはずだから。

――これから映画をご覧になる方へ、メッセージをお願いします。

アイナ:6人それぞれの個性が出た映画ばかりなので「画面で見てもBiSHは個性的だな」と思ってもらいたいです。

あと、映画の途中でトイレに行かないでほしい(笑)。アユニやチッチの映画はじっくり見たくなる反面、私の映画は「難しいからトイレ行っとこう」って思われそうだから(笑)。最後までしっかり見てくださいって伝えたいです。

(撮影⁼Marco Perboni/取材・文=北村有)

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