映画ビジネスコラム

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2022年06月25日

是枝監督らが設立を求める日本版「CNC」とは?|映画界にもサステナビリティを

是枝監督らが設立を求める日本版「CNC」とは?|映画界にもサステナビリティを


労働環境改善のためにCNCは有効

アメリカのように世界市場を席巻して民間予算がものすごい国なら支援はなくともなんとかなるでしょうが、日本の場合は支援も少なければ、(実写に限れば)世界市場も少ない状態ですから、制作現場が苦境に陥るのは当然で、そのしわ寄せがスタッフの「重労働・低賃金」に跳ね返ってきているようです。

会見に出席した30代の内山拓也監督は、「日本映画の製作本数は著しく増加している代わりに低予算化が進んでいて、環境が悪化していて、若い仲間がどんどん業界を離れている」と述べていました。

韓国で『ベイビー・ブローカー』を製作した是枝監督は(この作品は韓国版のCNC、KOFICの支援は特別受けていないそうですが)、スタッフに20代、30代が多かったと言っていました。反対に日本の映画業界は高齢化が進んでいると指摘しており、現場の労働環境悪化によって、新しい人材が確保できなくなっている現実があるようです。

会見では、2019年に日本の年間興行収入が過去最高を記録したことに触れていました。しかし、その恩恵が現場に還元されておらず、それを促す組織として日本にもCNCのような組織が必要だというわけです。

またCNCでは、男女間の均等を尊守しているプログラムに関しては投信金額を増額するという措置も行っているようで、映画産業で働く人々の環境を守り、ジェンダーの均衡も促すことにも貢献しています。

Action4Cinemaでは、日本映画の労働問題の改善のため、映画業界に特化したハラスメント対策ガイドラインの草案を作成、公開しています。仮に日本版CNCができたとして、支援条件にこうしたガイドラインにきちんと則ることを条件にすれば、ハラスメントの抑止につながっていくでしょう。

コロナ禍でのCNCの映画館支援

フランスでの映画製作経験がある諏訪敦彦監督は、日本版CNC設立の必要性を、コロナ禍で映画館が休館に追い込まれても国から充分な支援がなかったことで痛感したようです。この時、映画館を救おうと動いたのは「ミニシアター・エイド基金」などのクラウドファンディングを立ち上げた民間有志であり映画ファンでした。これも一種の共助ですが、こういう危機が起きた時に毎回クラウドファンディングするというわけにもいかず、この共助をシステム化する必要がある、それがCNCなのではないかということのようです。

CNCは実際に、製作、配給、そして映画館へとそれぞれ特別予算を編成して救済に当たっています。映画館支援に3430万ユーロを用意していました。ミニシアター・エイド基金では約3億円集まりましたが、フランスは元々持っていた共助的なシステムでその10倍以上の支援額を用意していたのです。

CNCは海外プロモーション助成も行っているので、日本映画が国内マーケット頼みで海外市場を切り開けていない問題も改善できる可能性があります。労働問題、マーケットの問題、産業規模と現場の人材への還元の問題など、日本の映画業界は様々な問題を抱えていますが、それらの問題に包括的に対処してきたのがCNCだと言えるでしょう。

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