「ちむどんどん」第63回:和彦の倫理観はどうなってるのか。「2人でもいいけど」って!
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第63回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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「ちむどんどん」第63回レビュー
第63回は、良子(川口春奈)の反省からはじまりました。「誰よりエゴイスト」と自覚した良子。
こんな自分が教師でいられるのかと弱気になった良子は博夫(山田裕貴)に会いに行き、彼から助言をもらいます。
家庭のことになるとからきしの博夫ですが、教職の話になると実にまともなことを語ります。良子が博夫に惹かれるのは、彼のこの理想を論理的に話すことなのでしょう。頭がすっきり整理されるのだと思います。だからこそ、なぜか散らかりっぱなしの家庭の問題には苛立ってしまう。
良子は悪い人ではないけれど、正義感が強く、自分の理想を曲げられない人。今回の生徒との問題を経て、柔軟性を獲得できるようになるといいですね。生徒ともようやく近づけました。ただ、別居解消は未だしません。やっぱり曲げられない人のようです。
その頃、沖縄のお盆の季節が近づいていて、鶴見でもエイサーの練習が行われています。
和彦(宮沢氷魚)は沖縄戦で亡くなった方々の遺骨収集に関して取材を進めていました。
エイサーを沖縄で観たい和彦。「一緒に行ってみる?」と暢子に聞きます。暢子は愛さんと行けばいいとはぐらかしますが、鍋では豚肉がグツグツ煮込まれています。これは暗喩? では、良子と博夫の煮こぼれたラーメンも暗喩?
和彦は思わせぶりなことを言ったもののすぐ切り替えて、自分の夢を語りだします。沖縄に対して強い興味をもって取材を深めていきたいという和彦を見つめる暢子の瞳は恋する瞳です。黒島さん、純粋な感情を真っ直ぐ出すと魅力的。一途さが伝わってきます。
奥手の暢子が和彦を意識するのは、和彦の熱い沖縄トークを聞いて……のほうが良かったのではないでしょうか。でも和彦の沖縄トークで暢子の忘れたい恋心が募ってしまいます。
引っ越す前にみんなで海に行こうと暢子が必死で和彦の想いを振り切ろうとしますが、和彦は「2人でもいいけど」などと言い出します。
暢子はびっくりして包丁で指を切ってしまいます。
近づいて傷を見る和彦、ふたりの顔が接近して……。
ベタな展開です。これ、夜放送のドラマだったらキュンとなるのかもしれないですが、朝だから覚めた目で観てしまうような気がします。
「一緒に行ってみる?」「2人でもいいけど」と畳み掛けてくる和彦。完全に愛(飯豊まりえ)よりもいまは暢子に惹かれているとしか思えません。そうでなく結婚前にもうすこし恋しておきたいというような気持ちだったらいや過ぎます。
一視聴者の勝手な妄想ですが、和彦は子どものとき、暢子を守ると決意して手を握ったときからずっと暢子を想っていたのでしょう。沖縄と東京と離れ離れになってもつねに暢子のことが心の片隅にあって(手紙は出さなくなったけど)、いつか沖縄に行こうと思っていて。彼にとって沖縄=暢子なのでしょう。沖縄の魅力を教えてくれたのが暢子だったから。
たまたま東京で再会してびっくりして、そのときは恋人・愛がいたけれど、暢子は特別なので、気持ちがどんどん大きくなってしまった。
思うようにいかないのが人生とはいえ、愛がお気の毒です。
暢子は愛に和彦のことを好きだけれど諦めると宣言しています。SNSではわざわざ言うことだろうかと疑問を呈する声も上がっていました。
ライバル宣言ならともかく諦め宣言は確かに言わなくてもいい気もします。
そもそも和彦と暢子はひとつ屋根の下で暮らしていて、今回のように下宿で心を通わせてしまうのです。愛にしてみれば気が気でない状況です。愛はそういうことを想像して嫉妬に燃えることはなく、あくまで穏やか。だからこそ、愛の株が上がり、和彦と暢子の株が下がってしまうのですが。
主人公だから愛(飯豊さんのことではありません、概念のほうです)は正義ではなく、主人公が人としてどうかと思うような罪深い愛(概念のほう)に走りそうであるところに、「ちむどんどん」の面白さがあります。
(文:木俣冬)
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