続・朝ドライフ

SPECIAL

2022年08月02日

「ちむどんどん」第82回:重子が前菜をひと口食べたところで、房子と暢子の長話し。料理を楽しませてあげて。

「ちむどんどん」第82回:重子が前菜をひと口食べたところで、房子と暢子の長話し。料理を楽しませてあげて。


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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第82回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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フォンターナ営業妨害される

矢作(井之脇海)が盗んだフォンターナの権利書を1千万で買い取れと迫る権田(利重剛)

房子(原田美枝子)は実印がなければ権利書だけでは土地を自由にできないことをわかっているので軽く断ります。

「さすがは天下のフォンターナのオーナーだ」と脅しが効かないことをわかってビジネスの話に切り替える権田。

権利書だけであたふたしてお金を払ってはいけませんよという、沖縄編以来の「ストップザ詐欺被害私達は騙されない」コーナーでしょうか。

みかじめ料を要求されても、房子は毅然と断ります。「書類はいずれ取り戻します」と言う、このときテーブルのうえに乗った権利書をさっと取り返してしまえばいいのにと思いましたが(コピーだったの?)、結局、権利書は権田の手元に……。

戦後の闇市からたたきあげて銀座に店をもった房子。バックに強力な助けてくれる人がいるものと思っていましたが、彼女だけでこれまで一度もこわい目に遭わずにやってこれたのでしょうか。すごいですねえ。

昔は沖縄県人会に入っていたようなので、その頃は、三郎(片岡鶴太郎)の世話になっていたののでしょう。第81回で、揉め事の仲裁が三郎の仕事と言われていました。とはいえ三郎は銀座までは力及ばずとは思いますが。

従業員は、動揺して次の就職先を探すと言う者、お金を払えばいいと言う者、様々です。
オーナー、そっちのけで「闘うんすよ」「金払いましょうよ」と自分ごとのように大騒ぎ。
いまは何時なんでしょうね。少なくとも閉店(10時)以降ですよね。

帰宅した暢子(黒島結菜)は、和彦(宮沢氷魚)に権田の話をします。新聞記者なんだから、社会の闇にも詳しいでしょうし、もっと心配してもいいと思うのですが、和彦の興味は、房子と三郎がなぜ結婚しなかったかなのでした。和彦、意外と恋愛脳。沖縄戦の取材のついでに暢子に会いに行ってちゃっかり結婚を決めてしまったし……。

人間なんてそんなもの。すごい仕事をしている人が恋におぼれていることなどよくあることです。

翌日、重子(鈴木保奈美)が和彦と共に食事に来ます。重子はあまゆといい、なんだかんだ言いながら、来るから、取り付く島があります。

前菜(ペペローネリピエーロ)が出て、一口食べたとき、房子が「いかがですか」とやって来ます。
重子は房子の経歴も調べていました。
いろんなことがありました。いまの法律や常識では考えられないことも。
と答える房子。そのいろいろあった過去を隠すつもりはなく、「過去も未来も含めて私の人生」と毅然と言います。

この”いまの法律や常識では考えられないこと”。は、いまも暢子たちのまわりでは起きているように感じます。

いろいろオブラートに包んでいるので、焦点がぼけてしまうのですが、重子は、暢子の血筋が青柳家とは合わないと考えています。考え直してもらうためのお食事です。

暢子はあえていつもどおりの料理を出します。いつもどおりといったって名店の味なのですから、
自慢の料理に変わりはありません。「特別」とか「いつもどおり」とか「仕込み」とか中身の伴わないセリフばかり。

ただ、沖縄では一回しかレストランに行ったことがないという思い出だけは中身があります。史彦(戸次重幸)につれていってもらったとなぜお礼を言わないのかわかりませんが、その話を聞いた和彦の表情はやさしくて、きっとあのときを思い出しています。

アメリカの統治下にあって、貧しい生活を余儀なくされて、本土と切り離されていた時代に生まれた女の子が、レストランではじめて美味しいものを食べて、美味しいものを作りたいと思った、暢子の仕事の原点。そのとき、共にいた和彦。ふたりには特別な絆があるのです。それをもっともっとドラマティックに描いたものが見たかった。

アコーディオンかバンドネオンの劇伴は、飼ってた豚を食べたときにかかって以来、汚れても懸命に生きる輝きを伴ったすてきな曲で、そこにすべてがこもっているように受け止められるのです。

「汚れつちまつた悲しみに」とうたった中原中也のように、悲しみにもっと向き合ってほしいのだけれど、ざっくりと、猥雑な部分ばかりが強調されていきます。

汚れつちまつた悲しみにの詩がアタマのなかを駆け巡ります。


(文:木俣冬)

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