成田凌インタビュー|演じたのは「素に近い自分」。『コンビニエンス・ストーリー』撮影秘話
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成田凌が主演を務める、三木聡監督最新作『コンビニエンス・ストーリー』が8月5日(金)に公開される。
売れない脚本家・加藤(成田)は、山奥のコンビニ「リソーマート」で働く妖艶な人妻・惠子(前田敦子)と出会う。加藤が乗ってきたはずの消えたトラック、惠子の夫・南雲(六角精児)が指揮する謎のクラシック音楽、死者の魂が集う温泉街……三木監督ならではの世界観で送るアドベンチャー作品だ。
今回cinemas PLUSでは、デビュー前から三木作品への出演を熱望していたという成田凌にインタビュー。撮影エピソードを中心にお話を伺った。
三木作品の魅力は「リアルなセリフが作り出す嘘っぽい世界」
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──公式サイトのコメントで三木監督について「デビュー前からご一緒したかった」と語っていたのが印象的でした。
成田凌(以下、成田):事務所に入って初めてマネージャーさんと話をしたときから、三木聡さんといつかご一緒したいと言っていました。だから、今回のオファーをいただいたときは、念願だった夢が叶って嬉しかったです。
順番は定かじゃないけど、やっぱり『時効警察』が最初だったのかなー。『図鑑に載ってない虫』も好きだし、『転々』も好きだし、全作品を通して好きなんですよね。
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──成田さんは、三木監督作品のどこに惹かれたんでしょうか?
成田:なんで面白いのかなーって考えると、まずいつだってキャストがいいですよね。その上で、映像や照明、美術、衣装も含めて、すごく独特のいい世界を作っている。脚本はお芝居が、生々しいのにどこか嘘っぽいのも、素晴らしいんですよね。
脚本に関しては一つエピソードがあって、自分のデビュー作(『FLASHBACK』)で豊原功補さんとご一緒させていただいたときに、「三木監督はどうですか?」と聞いたんです(豊原は、『時効警察』に出演している)。そしたら豊原さんは、「すごいぞ! セリフを一言一句、完璧に言うんだ」って。その話を聞いて、「そうなんだ。すごいなー。自分にできるかな?」と思ってたんですけど、今回の『コンビニエンス・ストーリー』でいざ脚本を読んでみたら、「え? あ、はい」とか、「あ、ありがとうございます」とか。セリフがすごく言いやすいんですよ。そのセリフの「え?」とか「あ、」にちゃんと意味があるというか、辻褄が合っている。
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例えば、「ありがとうございます」ではなくて「あ、ありがとうございます」なのは、褒められたことに対するリアクションなんですけど、その褒められ方が「お父さんが、面白いって言ってました」という少し微妙な褒められ方だから、ストレートに「ありがとうございます」じゃなくて「あ、ありがとうございます」になる。それがリアルなんだけど、演技をする場合はそのリアルさが逆に嘘っぽさを生むことになっていたりもして。
ドラマや映画で女性が「知らないわ」ってセリフを言っても、そんなに違和感を感じることはないじゃないですか。普段の生活で、実際に「知らないわ」と言っている女性は少ないのに。でも、その逆に「え? あ、はい」とか「あ、ありがとうございます」と、普段の生活で実際にあるようなリアルなセリフで演じると、嘘っぽくなって本当みたいな嘘の世界を作れるというか。それが三木監督の作品なんだなと、今回演じてみて思いました。
「前田さんとせんべい」の楽しい時間も
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──撮影中は、三木監督とどんなコミュニケーションを?
成田:三木監督は、シャイでやさしい方で、いわゆる演出らしい演出はしないんです。「そこに行って立って、こう言って」みたなことを言うだけで、その気持ちをこちらが汲んでいくというか。「この画で、一歩前に行ってほしいんだよね」とか。「ここのセリフの間って、ワンテンポ遅らせます? それとも、スパスパって言ったほうがいいですか?」って聞くと、「うーん、3(テンポ遅らせる)かな」って返ってきて、その通りやってみたら面白かったり。そういうことが、要所要所でありました。やっぱりすごい人だなと思いましたし、今までやったことのない撮影でしたね。
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──今までやったことがない撮影という意味では、かなり楽しくて面白い体験でもありましたか?
成田:楽しかったです。ロケバスで待機しているとき、前田(敦子)さんと一緒にお菓子を食べている時間も楽しかったです。あまりにも待機時間が長いから、深夜にコンビニまで差し入れのお菓子を買いに行ったことがあったんですね。でも、撮影現場は照明とかカメラアングルの調整をしていて緊張感があったから、差し入れを持って行ける雰囲気じゃなくて。それで結局、ロケバスの中で差し入れ用のお菓子を食べたんです。その中にあったせんべいが今まで食べた中で一番おいしい! って話していて。そのせんべいを、後日前田さんが都内で見つけて、また買ってきてくれたんです。そしたら、その時に感じた味とは違ったので、疲れていると些細なことにでも感動することに気づきました(笑)。
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──今、前田さんの名前が出ましたけど、前田さんが演じるコンビニで働く人妻・惠子をはじめ、みんなエキセントリックな登場人物ばかりで、成田さんが演じるスランプ中の脚本家・加藤が一番ノーマルですよね。
成田:そうなんです。だから、立ち位置としては映画を観るお客さんと一緒ですね。お客さんと同じタイミングで驚くし、同じタイミングで「ん?」と思うし、自分からアクションを起こすことはそうそうないですから。
──作品の異世界に観客を導く水先案内人という立ち位置ですよね。
成田:なので、何かをしようと思ったらダメだな、ひたすら普通でいようと思っていました。この作品の世界の中では、何をしたところで一番色のない人間になるんですけど(笑)、とにかく余計なことをしない。脚本が面白いので、それを素直に演じることに集中しました。だから、素の僕がセリフを覚えて撮影現場に行くっていう感じですかね。根本的にお芝居ってそういうものだと思うんですけど、そこからもっと手ぶらで現場に行くというか。実際、映像を観たんですけど、自分でも素に近いなと感じました。
──それで成立するぐらい、“世界”があった。
成田:そうです。その世界に、お客さんとして行くみたいな感覚です。
「劇場に人を呼べる役者に」成田凌が目指す役者像
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──劇中に登場するのは何でも手に入るコンビニですが、今の成田さんが手に入れたいものは?
成田:何だろうな? うーん……あ、休み(笑)。
──休みが取れたら、何をしますか?
成田:どこかリフレッシュしに行きたいです。海外もいいけど、夏だから国内の山に登ってもいいし、海に行ってもいいし。
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──デビュー前からの念願だった三木聡監督作品に出演した今、今後の役者人生についてはどんな未来を思い描いていますか?
成田:消費されないようにしないとなーと思っています。そして、いろんな人に映画館に来てもらえるような人間にならないといけないなと思っていますね。劇場に人を呼べる役者にならないといけないって、切実に思います。
──そう思うのは、自分が映画館に足を運んで、いろいろなものを得た人間だからこそ?
成田:はい。それと、こないだティーチインで地方の映画館に行っていたんですけど、人間関係で落ち込んで悩んでいるときに、そこの映画館にたまたま足を運んで『くれなずめ』(’21年公開の成田凌主演映画)を観て、そこから友だちもできて仲間っていいなって思えるようになったっていう10代の子に会ったんです。その子、来年から映像の学校に通うんですよ。
──最高にいい話ですね。
成田:すごくいいなと。そんな人にまた出会えるように、これからも頑張っていきたいですね。
(撮影=渡会春加/取材・文=大久保和則)
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