続・朝ドライフ

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2022年09月20日

「ちむどんどん」第117回:まだ弱気の虫に悩んでいた歌子。山小屋から懐中電灯も持たずに帰れるの?

「ちむどんどん」第117回:まだ弱気の虫に悩んでいた歌子。山小屋から懐中電灯も持たずに帰れるの?


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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第117回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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「ちむどんどん」第117回レビュー

暢子(黒島結菜)親子がやんばるに里帰りしたので、みんなで集まることになりました。

暢子はすっかり童心に帰った感じで、
「うち畑の野菜使っていろいろ作ってみたい」


「絶対忘れないでよ。約束だよ。いっぱいだからね」


暢子「あっ うち あれも食べたい オオタニワタリ」
優子「暢子 あんたばっかり」

などと子供みたいなしゃべり方をしながらはしゃいでいます。

暢子「砂川豆腐のゆし豆腐、これは東京では食べられないわけよ」

優子「昨日も食べたでしょ」

この会話もすごい。

暢子「ゆし豆腐今日も食べようね」

健彦「うん」

これもすごい。

ゆし豆腐推し、暢子はゆし豆腐が好きで好きでたまらないことを表すために繰り返しているんですね。

昭和のドラマだったら 砂川豆腐の経営状況やら智の家族の近況やら、ゆし豆腐を東京で食べたかったけど食べることができなかった顛末などをべらべらと説明的に語るのでしょうけれど、日常でそんなに意味のあることや情報量の多いことは言わないというリアリティーを追求はじめたのが00年代以降です。90年代にあった静かな演劇ブームが遅れてドラマにも影響を及ぼし始め、定着していきます。その結果、こういうセリフに変化していったのでしょう。ドラマにおけるセリフの歴史を考えさせる一例です。


さて、暢子がオオタニワタリを食べたいと言ったため、智(前田公輝)が山に行き、歌子(上白石萌歌)がついていき、また口喧嘩をして、智が怪我して……。

山小屋に入ったふたり。ここで歌子が心情を吐露する長ゼリフを語りだします。

ふいに心情吐露は、坂元裕二さんのドラマ「最高の離婚」(13年)で盛り上がって以降、多用されるようになりました。

歌子は東京ですっかり弱気の虫を克服したのかと思ったら、そうではなく、まだもやもやを抱えていました。

「もっと欲張りになれ」

と智は励ましますが、彼が思いきって歌子とつきあう、あるいはプロポーズすれば歌子の気持ちは落ち着くのですが、そこに気づいてなくて、理想論を吐く。

それでも不器用ながらようやくムードが盛り上がったとき、それをぶち壊したのはーー

まだ火曜日ですから、引っ張りますねえ。いや、しかし、何年こんなことをしているのか。もちろん、長い恋もありますけれど。智も歌子もさほど忙しそうでもないので恋どころじゃないってこともないし、東京で歌子が2年働いているうちに進展しても良さそうですよね。このシーン、演じている前田さんと上白石さん、どんなお気持ちだったでしょうか。

山小屋から出ていく歌子。懐中電灯も持たずに危ないですよー。


ところで、和彦(宮沢氷魚)。半分に切ったノートはお父さん・史彦(戸次重幸)のものでした。
沖縄をテーマにしたい和彦。沖縄に住みたい。

「僕の仕事は依頼を受け 原稿を書いて送ればいいから どこに住んでいてもいいけれど」

この頃はネットはまだ普及していませんが、原稿をFAXで送ればいいから、和彦の言ってることは間違いではないとはいえ、さほど売れていなそうなフリーライターが東京から離れ地方で取材して原稿を送るなんてことは通用したのかしら、というか仕事として成り立つのかしら……といささか疑問です。それとももう売れっ子に?

ドラマよりもっと先の00年代頃の筆者の思い出として、海外を飛び回っているベテランライターがパソコンを使わず手書きで外国からFAXを送ってきてそれを打ち込むのが面倒くさいと愚痴る編集の人がいました。しかもFAX料金をケチるためちまちま文字を書いていて判読しづらいとかで……。海外の貴重な取材をしてくれるから仕方なかったみたいですけれど。

民俗学者なんて実家が裕福かパトロンがいないとなかなか成り立たない気がしますが、和彦は重子の資産もありそうなので、テーマを沖縄のみに絞って、じっくり腰を据えて好きなことだけやっていきたいのでしょうね。

その頃暢子もやんばるに戻ってきたいと考えはじめていました。暢子と和彦って惹かれ合っただけあって、あまりベタベタはしないけれど、気が合っていますね。


(文:木俣冬)

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