「初恋の悪魔」第9話レビュー:ラスト数分の驚き!死亡フラグと違和感の正体


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林遣都と仲野太賀がW主演を務める「初恋の悪魔」が2022年7月16日スタート。

本作は脚本家・坂元裕二が送るミステリアスコメディ。停職処分中の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)、総務課・馬淵悠日(仲野太賀)、生活安全課・摘木星砂(松岡茉優)、会計課・小鳥琉夏(柄本佑)ら曲者4人がそれぞれの事情を抱えつつ難事件に挑む姿を描いていく。警察モノ、ラブストーリー、謎解き、青春群像劇……全ての要素をはらんだ物語の結末はどこへ……?

本記事では、第9話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。

「初恋の悪魔」第9話レビュー

衝撃がじわじわと尾を引く、そんな回だった。


雪松(伊藤英明)の息子・弓弦(菅生新樹)を尾行する悠日(仲野太賀)と琉夏(柄本佑)。弓弦に疑いの目を向ける琉夏と、あくまでも疑っているのは雪松で、家族は関係ないと主張する悠日。でも確かに、雪松は出かける息子と会話するときやたらと気を遣っていたように見えたし、出かける前に妻と二人で話していたときも視線は息子がいるであろう2階を向いていた。今までのことは、息子をかばってという可能性はある。

一方、リサ(満島ひかり)と面会した鈴之介(林遣都)だったが、彼女は何も話してくれなかったという。一瞬映った彼女の顔には表情がなかった。当時彼女を担当していた弁護士によると、当初殺人を否認していたが、長期間にわたる執拗な捜査により途中で「もう何でもいいです、もう人とは会いたくないです」と言うようになったという。捜査は激しく人格否定をされ続けるようなものだったらしい。これまで出てきた、知らない人に親切にし、何人もの家出少女を面倒見るような彼女がそんな風になってしまうのはよっぽどのことだったろうと思うと心が痛む。

「リサを苦しめた人間を殺したい」と声を荒げる星砂(松岡茉優)を、鈴之介は抱きしめる。

そして森園(安田顕)は、被害者の3名の少年たちの家を訪ね、遺族に話を聞きに行く。そして、3人は小学生のとき同じアウトドアクラブに所属していたことを突き止める。

すぐにでも動こうとする森園を、鈴之介は止める。理由を振り返るべきだと。5年この事件を独自に追っていた森園は理由なんてどうでもいいと口論になり、出ていってしまう。

「生まれついて猟奇的な人間なんていません。もしいたとしても、僕たちはその理由を考えることを放棄してはいけない。人を殺して当たり前なんて人間はない」

鈴之介のこのセリフに、物語の冒頭で森園が猟奇的な殺人鬼なのではないかと期待していた彼を思い出し、彼がどんなに変わったのかを実感する。3人と出会ったことで友情や恋愛を知り、馬鹿にしていた感情の大切さに気付いた。数か月前あんなに求めていた猟奇殺人に触れても、今の鈴之介はちっともうれしそうじゃない。それがうれしい。


弓弦の監視を続けていた悠日と琉夏は、彼が先日の事件の被害者の靴を捨てようとすることを目撃する。弓弦は泣きながら、今までの事件はすべて父親がやったことを打ち明ける。これまでの3人だけでなく、同じアウトドアクラブの少年のことも皆の前で殺したのだという。

自分の友だちを殺しては「殺してなんかないよ、こうした方がこの子たちは愛されるんだよ、みんなこの子たちのために泣いてくれるんだよ。それはとても幸せなことなんだよ」と言ったという。

話を聞いた2人は鈴之介の家を訪ね、弓弦のことをかくまってもらう。

同時に雪松のもとを訪れた森園は、彼を追い詰める。

 「どんな理由があったって人を傷つけていい理由にはならない」
「人を傷つけたら駄目なんだよ馬鹿者」
「人を殺したら駄目なんだよ馬鹿者」

安田顕の演技がすごかった。
殺人鬼と2人でこんなことを言って、森園の身は大丈夫か心配になってしまうが、雪松は

「申し訳ありませんでした。私が、3人の子どもたちを殺害しました」

涙を流して謝罪した。そして流れるエンドロール。

これで真相は明らかになったのか? と思う一方で、あまりにすんなり明らかになったことに違和感を覚える。長年にわたって犯罪を犯し、もみ消してきた人がこんなにすんなり認めて、涙を流して謝るだろうか。

それに、弓弦の話では殺した子は4人なはずなのに、雪松は確かに3人と言った。もしすべての事件の犯人で謝るにしても、間違えるだろうか。

エンドロールの後も、物語は続いた。
悠日と鈴之介は雪松の元へ向かい、琉夏と星砂は留守番。
みんなのぶんのおにぎりをにぎる琉夏にオカンみを感じる。
なるほど、三角関係から外れている彼の役割はオカンだったのか……
なんて言っている場合じゃない。

悠日が家の前に停めたレンタカーが邪魔だと苦情が入り、琉夏は移動させにいってしまう。家に星砂が一人になった瞬間、感覚的にやばい、と思う。
星砂は地下室におにぎりを持っていき、毛布をかぶった人物に励ましの言葉をかける。

星砂、ゆっくり座って話さないで、逃げて……!!
鈴之介のコレクションのハサミが、むき出しになって置かれていた。
やっとそれに気づいた星砂は、ドアを閉めた後紐でしばろうとするが弓弦が出てくる。おにぎりをくわえながらハサミを持ち、楽し気に星砂を探す様子に恐怖を覚えた。弓弦こそがごはんを食べながら人を殺せてしまうような人、何の恨みもない星砂をためらいもなく殺そうと行動できる人……猟奇殺人鬼だったのだ。

脚本家・坂元裕二によるこの物語は、今までいつだってさまざまなセリフとともに真実が明らかになってきた。なのにこのシーンは、セリフ無しに視聴者に真実を”わからせる”ことに成功していて、観終わったあともざわざわが止まらなかった。

玄関を出たところで尻もちをついた星砂に、弓弦はハサミを振り上げる。
お願い誰か戻ってきて……。次の瞬間、星砂は無事、弓弦は突き飛ばされていた。助かった……? と思ったが、星砂に覆いかぶさった森園に、ハサミが刺さっていた……。

これまで幾度か身の危険が危ぶまれ、今回は序盤で妻(萩原みのり)から「フラグが立っちゃうから心配するのやめる」と言われた森園。そんなフラグやめて。お願いだから生きてくれ……。

そして中盤鈴之介が約束していた、鈴之介が星砂にリンゴの皮の剥き方を教える約束も守られてほしい。

弓弦を演じるのは菅田将暉の弟・菅生新樹で、この役が初演技だ。
あれだけ有名で実力も認められた俳優の弟として同じ職業でデビューするのは、どうしたって比べられるしやりづらそうだなと思っていたが、ラストのあの恐ろしさを出せる感じ、彼は彼ですごいものを持っている人なのかもしれないと思ったし、さすが恐ろしい犯人役もやってきた菅田将暉の弟! とも思った。今は彼の演技がもっと見たいなと思う。

さて、泣いても笑ってもあと1話で最終回。
お願いだからみんな幸せになってほしいよ……。

(文:ぐみ)


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