「silent」第3話レビュー:湊斗(鈴鹿央士)の”涙の理由”に泣いた


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川口春奈が主演、目黒蓮(Snow Man)が相手役となる「silent」が2022年10月6日スタート。

主人公・紬(川口春奈)は突然別れを告げられた元恋人・想(目黒蓮)と8年ぶりに再会。彼は難病により、ほとんど聴力を失っていた……。
音のない世界でもう一度“出会い直す”ことになった二人と、それを取り巻く人々が織り成す、せつなくも温かい物語。

本記事では、第3話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。

「silent」第3話レビュー

第3話は、湊斗(鈴鹿央士)回だった。

紬(川口春奈)と想(目黒蓮)が一緒にいるところを湊斗が見てしまうという、衝撃の再会で終わった前回。去っていく想に呼びかけたが、彼は振り返らなかった。聞こえないので、仕方ないのだが。内緒にしていたわけではないが、湊斗は苛立っている様子で、誘おうとしていたハンバーグの予定をまたにしようと言って帰ってしまう。

湊斗が思い出したのは高校時代のこと。紬に映画『ハチミツとクローバー』をおすすめされた湊は「『人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった』ってこんな感じか」と、想を好きになる紬を見て実感してしまう。

くぅ~! 第1話の告白シーンで想が紬に聴かせた曲、スピッツの「魔法のコトバ」は映画『ハチミツとクローバー』の主題歌だ。セリフ自体は真山なんだけど、湊斗の境遇は竹本だな……この伏線回収と、視聴者に絶妙に刺さるエンタメを出してくる感じがたまらない。

紬と想を近づけて、2人が付き合ったことも

「すごく仲の良い友達とすごく好きな人だったから、すごくうれしかった」
「すごく切なくて、ちょっとだけうれしかった」
「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、うれしかった」

と振り返っていて、切ないしいい奴すぎるだろと思う。

紬が新卒で上京してきたとき、終業後に明日までの資料を作らせたり、朝の挨拶のときに身体を触ってくる上司がいるような職場で働いていると知り、

「やればできるって、やらせるための呪文だよ」
「期待と圧力は違うよ」
「俺、人を殴ったことないし殴ったこともないのね。でも、その青羽の職場にいる青羽に挨拶するやつは、俺多分殴っちゃうと思う」

そう訴えかけ、紬は翌日退職願を出した。
だから紬はフリーターだったのか。湊斗、ずっと紬のためにいろんなことをして助けてきたんだな。

紬の弟・光(板垣李光人)と、想の妹・萌(桜田ひより)がそれぞれ姉・兄を想う気持ちも見えた回だった。湊斗と想が出くわしたことを知った光は湊斗のところに行って「湊斗くんはいなくなった人(想)の代わりなんかじゃないから」と言う。母親代わりに面倒を見てくれたという紬への想いもわかる場面だった。

萌は、紬が手話を習って想と会っているのをありがたいと思う反面、ずっと知らないでその間湊斗くんと楽しく過ごしていたくせに、と複雑な気持ちがあった。想が知らせなかったので仕方ないわけなのだが、彼の苦しみを知っているだけにそう感じてしまうのだろう。手話を完璧にマスターしていてすごい。
萌の前では想が声を出すのが聞けて、ちょっとうれしかった。

2人とも、めちゃくちゃ姉・兄想いのいい子だ。

想は、紬に「湊斗に悪いから2人で会うのはやめよう」と言うが、紬は「私、湊斗のことすごい好きなんだよね」「佐倉くんは違う」「好きじゃない」と言う。さすがに手話がわからず、変換アプリで伝えたので、想は文面でこれを見た。ちょっとひどい。いやそこまで言うことないだろなんだこの人……と一瞬思ってしまったが、想が去った後、紬は一人泣くのだった。

それってやっぱり、想が好きっていうことなんだろうか。
この前のくだり、バイト中の紬にたまたま会った想が「終わるまで待ってていい?」というところ、想がおりこうな大型のワンちゃんみたいでとてもかわいかった(伝わるだろうか)。

想がとある用があり紬の家に向かうと、紬は留守で湊斗が留守番をしていた。
慌てて帰る紬、湊斗は想を家に連れ帰って待つ。

想にビールを渡し、ソファに座る彼の背に話しかける。想のほうが先に誕生日があるから、湊斗の二十歳の誕生日に一緒に飲む約束をしていたのにもう26になってしまった。もちろん想には聞こえない。泣き出す湊斗の気配を感じたのか、振り返る想。

だから紬と別れたの? 想らしいけど、とまくしたて、
「何で俺に何も言ってくれなかったの?」
「力になれ…なれないけど、何かできるかもしれなかったのに」

ちょうど紬と光が帰ってきて、泣きながら飛び出す湊斗。
追ってきた紬にこう言って泣き崩れる。

「取られるんじゃないかって、そういうこと気にしてイライラしてるほうが楽だったから」
「想のこと悪く思えば、楽だったから」
「友達の病気受け入れるより、ずっと楽だったから」
「名前呼んで、振り返ってほしかっただけなのに」

湊斗がつらかったのは、紬を想に取られるかもしれないことよりも、友達である想が自分に何も言ってくれなかったこと、何より想が病気になったことだったのだ。なんて優しい人なんだ……。

湊斗が思い出したのが、高校時代名前を読んだら一瞬知らないふりをして歩いて行ってしまい、笑顔でいたずらっぽく振り返った想だというのがまた切ない。

1話のラストと同じく、湊斗の涙と一緒にこちらもどんどん泣いてしまうような、そんな演技だった。すごい、すごいなこのドラマ。


てんとう虫を逃がしてやるシーンとか、言葉以外でも湊斗の優しさが伝わってきた。あと想の家の来客でピカピカ光るシーン、名作ドラマ「愛していると言ってくれ」を思い出した。そしてろう者は8割ろう者同士で結婚する話をしてくる正輝(風間俊介)、やはりなんか闇を感じるな……。好きだった人がそうだったのだろうか。

来週が待てない……!

(文:ぐみ)


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