「舞いあがれ!」今年最後を締めた悠人(横山裕)の不穏<第63回>
本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町・東大阪で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。
本記事では、第63回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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不良品を見つける舞
3人の優秀なパートさんがいなくなったあと、たったひとりでねじの検品&梱包を行う舞(福原遥)。髪の毛もちゃんとうしろで一本に束ねています。最初は束ねないで視聴者のツッコミを呼ぶ、もはやお約束ですね。でも束ねようと思ったらゴムやシュシュ持ってこなかった〜しもた〜という経験は誰しもあることでしょう。お約束といえば、3人の中年女性のいびりがあるかと思いきや、なかったと安堵した矢先、若い女性社員・山田紗江(大浦千佳)が「『私、頑張ったぁちゅう』アピールかと思いました」と不意に舞へ嫌味を言います。社長のお嬢さんにそんなん言います? ただでさえリストラに怯えているはずなのに社長の心象悪くしてどうするのでしょうか。そのあと、社長には感じよく挨拶していて、こわかったー。
いびりは、本格的には描かないけれどアクセントとしては必須アイテムのようです。大量のねじのなかの不良品のようなもの?
西口(マエダユミ)に「最後の砦」と言い残された舞は、なかなか見つけられない程度の不良品をその慧眼で発見します。
舞が雑炊をつくって浩太と食べる場面は、このドラマのテーマを語る重要な場面でした。
「舞は不良品探してる時でもええとこ見つけるんやな」浩太(高橋克典)は舞を褒めます。
だからきっと山田の嫌味も舞にとっては、ほかのひとたちのあたたかみに気づくものなのでしょう。
「パイロットはリレーのアンカーやねん」と言う舞は浩太も工場のパイロットだと讃えます。
そう、3人は無念にも辞めさせてしまったけれど、あとに残った社員を守らなくてはいけません。結城(葵揚)は3人の子供をもつ身で転職すべきか悩んでいます。古川輝海(中村靖日)は寝たきりの母の看病をしながら働いています。料理も裁縫も得意。笠巻(古舘寛治)は長年、IWAKURA に身を捧げてきた職人です。
みんなの生活と思いを背負って責任もって空を飛ぶ、うえに立つひとはその認識が重要です。
なんとか光明が見えてきたとホッとしたのもつかの間、悠人(横山裕)がやってきて、不穏なセリフをつぶやきます。予告もまた、気になるもので、年明けはどうする「舞いあがれ!」? 2023年は1月4日(水)からです。
【朝ドラ辞典 髪を束ねる(かみをたばねる)】労働にあたり長い髪は束ねるのが常識。マナーの点からいってもそうだし、単純にうつむいたとき顔にかぶる髪の毛が煩わしいからだ。ところがなぜか朝ドラでは主人公が束ねないときがあり、SNSでツッコミが入る。これはもうドラマと視聴者のコール&レスポンスという伝統なのだろう。
(文:木俣冬)
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