「ブギウギ」小夜ちゃん、プロポーズされる<第74回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第74回を紐解いていく。
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スズ子は猛反対
舞台の稽古がはじまりましたが、スズ子(趣里)はうまくできず、共演者には文句を言われ、タナケン(生瀬勝久)からは何も言ってもらえずで。相手にされないのはしんどいとストレスを感じます。
これまで、大和(蒼井優)も羽鳥(草彅剛)も鍛えてくれたと回想しますが、羽鳥も最初は教えることなく、そうではないそうではないと言ってスズ子を戸惑わせていたはず。
喉元すぎれば熱さ忘れる。たぶん、タナケンもスズ子の演技にピンとこないけれど、彼女らしさは彼女自身が気づくしかないと思っているのでしょう。タナケンがこうして、と言ったらそれはタナケンの想定内の面白さになってしまう。想定外のものを出したいのでしょう。
だから、ほかの俳優の役を取り替えてみたら、天井を見てセリフを言ったのが想定内で面白かったということなのです、たぶん。
役を代えられてしまった俳優は、スズ子の間が悪いせいだと怒りますが、山下(近藤芳正)はスズ子に独特の可笑しみがあると励まします。それには愛助(水上恒司)も同意します。でも、洗濯物を干している趣里さんに独特の可笑しみがあるかというと、そんな感じはあんまりないような…。
趣里さんはどちらかというと、ミステリアスな雰囲気で、現在公開中の映画「ほかげ」(塚本晋也監督)の陰なイメージのほうが魅力のような……。でも、姿勢よく生真面目で、常に力の入ったキチキチした身振りは個性的ではあり、好感ももてます。「ブギウギ」で新たな面を開拓しているところと思えば応援したい。
間の良さといえば、タイトルバックに入るときの、役が代わった人のボケとタナケンのツッコミ。この鮮やかさは気持ち良いです。
過去の自分を忘れているといえば、スズ子の小夜(富田望生)への態度です。小夜がサム(ジャック・ケネディ)と仲良くしていることが許せず、ガミガミ言います。以前は、小夜に、スズ子と愛助の関係を否定され、閉口していたはずが、今回はスズ子が小夜みたいになっています。
サムがアメリカに帰ると聞いて怒り、サムが小夜にプロポーズしたら、「あかんあかん」と猛反対。でもサムはやたらと不躾なスズ子を怒らず、小夜の家族と思い込みます。
「小夜ちゃんとられるの悔しい」とスズ子。
「ブギウギ」における家族観は、過剰な愛情、手元に置いておきたいという執着のようです。ツヤ(水川あさみ)が基点になっているのだと感じます。スズ子がツヤ化しはじめています。本来、ずっと孤独で寂しかった小夜がプロポーズされてうれしい局面のはずが、スズ子がガミガミ反対して、小夜の喜びが抑制されてしまいます。不憫やわあ。
かなり極端に描かれてはいますが、意外とこういう感覚って身内の間であるように思います。親がなにかと干渉してきてぶつかってしまうということはありがち。心配だからこそ反対してしまい、でもその気持ちは相手には伝わらず喧嘩になってしまう。
このまったく洗練されていない極端にいびつで素朴な感情は、厄介ですが、味わいではあります。
(文:木俣冬)
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