「舞いあがれ!」悠人が解説する株の「損切り」、これって朝ドラ?<第64回>
本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町・東大阪で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。
本記事では、第64回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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「舞いあがれ!」第64回レビュー
2023年のはじまり。第14週「父の背中」(演出:田中正)のはじまりです。悠人(横山裕)が帰って来ました。
帰って来たといっても仕事で、とうそぶく悠人。仕事半分、父・浩太(高橋克典)の仕事を心配しているところもあるのでしょう。
単純に兄の帰還に喜ぶ舞(福原遥)は工場を案内します。
悠人は工場の音もニオイも好きじゃないけれど舞はそれらが好き。さすが、飛行機好きです。機械音やオイルのニオイにまみれてきただけあります。
悠人はさりげなく機械の価格を聞いています。さすがやり手の投資家です。こうやって会社の状況を調査しているのでしょう。
悠人はいったん、うめづに好物のお好み焼きを食べに行きますが、ちゃんと家に夕飯を食べに来ます。
最初は久しぶり4人家族が集まってほっこりしていますが、じょじょに悠人と浩太が対立をはじめます。
工場を売ることを勧める悠人。簡単にはそんなことできない浩太。
ふたりは平行線で、気まずくなって「帰れ!」「帰るわ!」と喧嘩別れになります。
実家あるあるですね。
実家を出て行った子供が、なかなか実家に戻らない。家の近所まで来ていても
立ち寄らないのは、忙しいのもあるけれど、なんだか寄る気が起こらない。でも本当は気にはなっている。いざ、実家に来ても、親と考え方を巡ってすぐに対立して苦い気持ちで家を出る。
なんでこうなってしまうのか……というやりきれない気持ちを、めぐみ(永作博美)と舞が語り合います。
「悠人も家のこと心配してくれてるんやろうけど あんな言い方したらお父ちゃん傷つくやんか」と嘆くめぐみに舞は、
「せやけど、お兄ちゃんも傷ついてるのとちゃうかな」と想像します。
他人の気持ちを慮ることが得意な舞。この思いやりがギスギスした親子喧嘩に違う視点をもたらします。沸騰してふきこぼれそうになった鍋に水をいれたようにすうと穏やかなものになります。しんどいことは好まれないから描かないようになっている昨今ですが、触れないのではなく、あるものはあると描いた上で別の視点を提示する。ここにトライしているエピソードが新年第一話めであったことに希望を感じます。
また、この流れは、悠人が以前贈ってきた謎の金の置物がきっかけになっています。いま、10倍になっているから売ればいいと言い、その流れから工場を売ったら良いと言い出します。いきなり本題に入らず、ちょっと脇道から行くところがいですね。
カフェノーサイドで舞がしょんぼりしているとき、久留美(山下美月)が「アイスえらいことになってるで」と溶けたアイスで舞の心情を心配するところも文学的。
リーマンショックの傷は深いですが、作者の筆致は豊かです。
投資家・悠人の投資教室は、いきなり「損切り」。なかなかシビアーでした。
【朝ドラ辞典 帰郷(ききょう)】ご当地ドラマ色の濃いドラマなので、主人公がいったん地元を出ても、なにかと帰郷し、故郷、実家の良さを味わうことが定番となっている。
(文:木俣冬)
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