続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年05月29日

「虎に翼」直言は弱くてだめな愚かな父親として死んでいった<第43回>

「虎に翼」直言は弱くてだめな愚かな父親として死んでいった<第43回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第43回を紐解いていく。

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花岡の下宿にも行っていた直言

優三(仲野太賀)の戦病死の通知を、直言(岡部たかし)がひた隠しにしていました。
たまたま倒れたときに、寅子(伊藤沙莉)が見つけてしまったのですが、もしもこのまま直言が亡くなって、通知がみつからずにいたら、寅子は優三を待ち続けたでしょうか。

往診に来た医者は「もう長くはないでしょう。ご覚悟なさってください」とわりと淡々と言い放ちます。
直言はそのまま衰弱し、寝たきりになり……。
寅子は直言が隠していたことについて問い詰めることもできないまま、ただ、優三の死を抱え込んでつらそうです。

ある日の食事中、直言は家族を枕元に呼びます。そこで直言は寅子に、花江(森田望智)直道(上川周作)が亡くなっても猪爪家にいてもいいんだよなと質問。寅子は「はい」とシンプルに返事をします。

こういうとき、憲法第◯条では――とか言ってほしかったけれど、いまの寅子はそんなテンションではなく、「話は終わりましたか」と冷たく去ろうとします。そこへ花江が口を挟みます。
「いまする話 それじゃないです」「お父さんのしたこととんでもなくひどいと思う」「罵倒してもいい」「おとうさんとは生きてるうちにお別れできるんだから」等々歯に衣きせない物言いは、花江だからありです。寅子が通知を見つけた日に言いたかったであろうことを、花江が代弁したようでもあります。

花江のおかげで、わだかまってしまった父と娘の確執がほどける突破口が開けます。ナイスアシスト。

ようやく、なぜ隠したのかを話し出す直言。
「俺はこのとおり弱いだめなおろかな男なんだ」「いっつも寅に頼りっぱなしで」と謝罪。たぶん、みんなを呼んだのも、ちゃんと話したかったのに、寅子がむすっとしていたから言えなくなったのだと思います。

直言は興が乗って、結婚相手は花岡(岩田剛典)のほうがよかったと告白。
ここ、コメディ仕立てなので、スルーしそうになりますが、
結局、優三のことを結婚相手として認めてない、わりと差別的だったということが暴露されたのです。以前、優三が結婚してからも食卓から離れて食事をしていた場面が確かあったのは、そのせいだったのでしょうか。だから、通知を先に読み、隠してしまったのかもしれません。
孫もできて、夫婦仲もよかったとはいえ、契約結婚だったわけですから、父としてはもやもやがあっても無理はないともいえるでしょう。

あれやこれや一生分の懺悔(by寅子)をしはじめるお父さん。
しだいに、寅子の気持ちも軟化して、父の愛情に感謝を述べます。なんだかんだで寅子を認め育んでくれたのは父でした。

そしてそのままお父さんは――と思ったら
「まだよ」とはる(石田ゆり子)。ただ寝てしまっただけでした。真面目そうな直明(三山凌輝)が「こんな体勢で?困ったな」とツッコむのが面白かった。

いろんなわだかまりが溶け、みんな、なごやかな気持ちで直言を見送りします。

朝ドラで、誰かが亡くなる場面で、こういう展開ははじめてではないでしょうか。ずいぶん
思いきったなあと思います。
お父さんが弱くてだめ、というのは朝ドラあるあるではありますが、弱くてだめなところが魅力的に描けたのは快挙でしょう。

今週、岡部さんの衰弱演技がどうも嘘くさく、コントのように見えていたのは、この終わり方のためだったのはわかりましたし、旧態依然としたものをぶち破り、朝ドラに新風を吹かせようとしていることは讃えたい。

お父さんは当時、かなりエリートだったはずで。もちろん、欠点もあったとは思いますが、ここまで弱くてだめで寅子に頼りっぱなしではなかったのでは、という違和感もあるにはあります。でもその感覚は、男・家長はしっかりしているもの、威厳のあるものと刷り込まれてしまっているからかもしれず。このドラマはそういうことからの脱却を描いているのでしょう。

花岡の下宿を見に行ったり、知り合いに佐賀の実家にも偵察に行ってもらったりというのは岡部さんが演じているからこそぴったり。直言は弱くてだめだったけど、実家が太くて良い大学、良い会社に入って出世したすえ、汚職事件に巻き込まれ、退職し、でもうまいこと会社を起こして戦争中まではなんとか逃げ切ったのだと思うことにします。お父さん、最後まで「モン・パパ」の歌詞のような人でした。安らかに。


(文:木俣冬)

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