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田中圭が大好きになったから、2022年の大活躍を愛を込めて語りたい。

映画『女子高生に殺されたい』より (C)2022 日活

俳優・田中圭が大好きだ。筆者はまだまだファン歴が浅いのだが、数年前からドラマや映画で見かけるたびに「すごく存在感がある俳優さんだなぁ」と次第に思うようになり、主役でなくても(後述もするが、だからこそ)その場を「支配する」と言ってもいいほどの演技力に、恐れ慄くほどの衝撃を受けた。

それから田中圭の過去作をいくつか観て、情報を調べて「ええっ!?『トリビアの泉』のあの甘いマスクで笑いかけてくれた青年も田中圭だったの?」「あっ…もうご結婚されているんですか…そうですか…(ちょっとショック)」と思うなど、すっかりファンになっていた。

2021年は『哀愁しんでれら』『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』『総理の夫』『そして、バトンは渡された』『あなたの番です 劇場版』などと大活躍だった田中圭が、この2022年はさらに、誰もが認めざるを得ないほどの、俳優としての力を見せつけたと思うのだ。その映画作品を振り返ってみよう。

『女子高生に殺されたい』(4月1日公開)主演・東山春人 役



『帝一の國』などで知られる古屋兎丸による同名コミックを実写映画化。題材からインモラルのため敬遠される方もいるかもしれないが、実は直接的な残酷描写はほとんどなく、作中のモラルは真っ当、エンターテインメント性も高いので、意外にも万人におすすめしやすい内容だった。

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田中圭が演じるのはタイトル通り女子高生に殺されたいという、共感はできない願望を持つ高校教師。何しろクズやサイコな役も上手い田中圭のことだから、今度はどんなヤバい役を演じてくれるんだろう〜(超ワクワク)!と大期待して観始めたら、映画開始5秒で期待の遥か斜め上大気圏を突破した衝撃が待ち受けていた。

何しろ、冒頭のビデオ映像で、田中圭は泣き出してしまいそうな寸前、溢れ出る激情を抑えているかのような、生真面目さ、不器用さ、絶望までも同居させたような表情をしている。そこから、わかるのだ。彼は、震えながら許されざる「自身の望み」を告白しそうになっているのだと。その様から、観ているこっちは彼が「女子高生に殺されたい」と考えていることがわかりきっているのに、「理解してあげたくなってしまう」ことに、良い意味でゾッとさせられた。

その後も田中圭は、観客からすれば「どう考えもこの人はヤバいのに、ついつい心を許してしまいそう」にもなるし、モノローグで真っ当も真っ当なことも考えていることもわかるので、ちょっと応援してしまいそうにもなってくることが怖い。それもまた、田中圭というその人が持つ魅力があってこそだ。

また、シリアスな犯罪サスペンスと思いきや、実はブラックコメディ的な要素もある。終盤で田中圭が放つとある「自己正当化上等」なセリフ、それに対しての細田佳央太からの真っ当すぎるツッコミには(個人的に)爆笑してしまったので、ぜひその意味でも観ていただきたい。記事が公開された時点ではAmazonプライムビデオで見放題となっている。

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『ザ・ロストシティ』(6月24日公開)チャニング・テイタムの吹き替え



美男美女が南の島で大冒険!というシンプルなアドベンチャー&ロマンス映画だ。田中圭は、シリアスからコメディまで幅広くこなす、同じく演じる役の幅が広い俳優チャニング・テイタムの日本語吹き替えを担当している。

正直に申し上げると、地声が低いチャニング・テイタムに、若々しい田中圭の声が重なったので、序盤はギャップを感じてしまったところもある。だが、そんな違和感は次第になくなり、「この声がいい!」「田中圭をキャスティングしてくれてありがとう!」と拝む気持ちになった。何しろ、チャニング・テイタム演じるこのアランという男性は、「一見するとセクシーでカッコいいけど、実はけっこう間が抜けていてカッコ悪くて、でも誠実に主人公のことを考えてくれている、めちゃくちゃイイやつ」なのである。

確認のためにもう一度、本作のチャニング・テイタム(声:田中圭)のキャラの魅力を箇条書きで記そう。



・初手:セクシーでカッコいい外見と声に惚れる

・次手:間が抜けていてカッコ悪い言動のギャップで萌える

・決まり手:内面は誠実でめちゃくちゃイイやつで大好きになるフルコンボ



それって……それって、『総理の夫』『そして、バトンは渡された』でも田中圭が演じたキャラに通ずる、田中圭にドンピシャの役ではないですか。このキャスティングをした人は神か(拝みながら)!あと、冒頭の不意打ちセクシーボイスで「あっ心の準備がまだですでも良いです」と動悸を激しくしてくれてありがとう!

なお、過去の田中圭による吹き替えには、俳優の年齢がだいぶ上であったこともあり評判が良くなく、ご本人も「辛い収録だった」と振り返り、筆者個人も田中圭への愛を持ってしても残念ながら肯定できない、悲しいキャスティングミスがされた某怪獣映画もあった。だが、今回はまさに面目躍如、キャラクターに田中圭の「らしさ」が最大限にマッチした、もちろん田中圭の演技力も存分に活かされた、見事なリベンジを果たした吹き替えと言えるだろう。

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『ハウ』(8月19日公開) 主演・赤西民夫 役



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田中圭 × 大きなワンコという組み合わせだけで「はい好きです」で条件反射してしまう勢いだが、もちろんそれだけでない。こちらも『女子高生に殺されたい』と同様に、映画開始からすぐに田中圭に感情移入してくれるのである。「婚約者で一軒家も買った田中圭を結婚直前に振る女性」がいきなり登場するために。

田中圭を(しかも結婚直前に)振る人間という、この世ならざる存在を目の当たりにし、筆者は善逸を別の生き物を見るような目で見る炭治郎の顔になっていた気もするが、もちろんそれも作品には必要なものだ。深い喪失感を抱え、一人では大きすぎる一軒家に住む彼の心の穴を埋める、いや東京スカイツリー級の幸せを積み立てるような尊みを、この大きな犬のハウは見せつけてくれるのだから。田中圭とハウの写真集を出してもいいと思う(買います)。

そして、実は「犬が飼い主の元を目指し長い時間をかけて長い旅をする」という作品の特性上、田中圭主演作ながら、彼が出演しないパートが多い内容でもある。だが、ガッカリする必要はない。田中圭はその圧倒的な存在感、ハウを恋しく思う心情、そして随所で「ちょっと行き過ぎなほどのいいヤツ」ぶりを見せるので、観る側はハウと同じく「常に田中圭を頭の片隅における」ような感覚でいられるのだ。

また、ほのぼのとしたパッと見のイメージに対し、意外にシビアかつ咀嚼しにくいエピソードが続き、直接的に暴力を見せるシーンもあって、賛否両論もある作品だ。だが、犬に限らず愛おしい誰かと交流することで、何かの問題が少しだけでも解決に向かうことはある。そんな現実にフィードバックできるヒントももらえる、誠実な作品だと思うのだ。記事が公開された時点ではAmazonプライムビデオで見放題である。

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『耳をすませば』(10月14日公開)園村真琴 役



スタジオジブリによるアニメ版が有名な柊あおいの漫画を原作としつつ、主人公2人が大人になった10年後のオリジナルストーリーが紡がれた内容だ。主演は清野菜名と松坂桃李。田中圭は編集者となった主人公・雫が担当する、物静かな作家として登場する。

つまり、田中圭は主役ではない、あくまでサブキャラクターとしての出演なのだが、映画全体の物語に寄与する重要な役だった。何しろ、雫は自身が作家になる夢へどう向き合えばいいかわからなくなり、編集者の仕事もただ上司に言われるがまま処理するだけで、担当する作家にも正直な意見が言えずにいる。

対して、その田中圭演じる作家は、とことん自身の作品を介して、目の前の編集者に「正直な感想を聞きたい」という言葉通りのことを、その言葉以上の意志を必死で訴ったえているようだった。田中圭演のその振る舞いや表情は、仕事に対してのストイックさ、いや信念も感じさせたのだ。

その後の「やりすぎ」な雫の行動に対して、物語上で安易な解決をしなかったこと、そこでの田中圭の言葉、「声の掛け方」も誠実だった。そのような大人の雫の描き方に賛否両論があるのは致し方がないが、少なくとも田中圭の役どころに関しては、これ以上なく真摯に考えられた作品だったように思う。

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『月の満ち欠け』(12月2日公開)正木竜之介 役



2組の男女の物語が数十年の時を経てつながっていく、壮大なミステリーにしてラブストーリーなのだが……「もはやホラー」な怖さも一部で話題になった作品だ。

何しろ、「この人はあの人の生まれ変わりなんです」と訴える人物が現れたら、どうかしている、もしくは詐欺か何かだと思ってゾッとする方がほとんどだろう。その恐怖はもちろん意図的なもので、大泉洋演じる実質的な主人公が、そのことに強い拒否反応を示すことも重要な内容だった。

その「実は怖い」物語に加えて、ストレートにめちゃくちゃ怖いのが田中圭だった。これまでもモラハラやパワハラ男を演じてきた田中圭が、今回はずっと敬語で丁寧に、理性的に話していることがむしろ不穏で、その時点で怖い。案の定、その話し方がある一点で「急変」する様は、2022年の他のどんなホラー映画をも凌駕する最恐シーンだった。

そんな役を演じれば、ただひたすらに嫌悪感を持ってしまってもおかしくないのに、そうはならない、なんなら哀れで同情をしてしまいそうにもなるのは、やはり田中圭の演技力によるところが大きい。特に、あのアップでとらえた「眼差し」は、もう一生忘れられない。前述の『耳をすませば』と同じく、主役ではないのにここまでのインパクトを残せる田中圭を、賞賛せざるを得ないではないか。

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的確かつ誰も傷つけない『大怪獣のあとしまつ』の公式コメント

その他、『極主夫道 ザ・シネマ』のナレーションやHulu配信のドラマ『死神さん2』など、2022年は「田中圭イヤー」と言っても過言ではない大活躍だったのだが、さらに「映画の公式コメント」まで素晴らしい、ということを訴えなければならないだろう。

それは、良くも悪くも(おおむね悪い)2022年の話題をかっさらった、Amazonプライムビデオでの見放題配信もスタートした『大怪獣のあとしまつ』である。田中圭は同作のギャグ部分についてこのように批評しているのである。

「どれだけボケるんだろう。と思わずにはいられない程、至る所に笑いの種を撒き散らしていて、大怪獣の後始末にはみんな一生懸命なくせに、笑いの後始末はあまりしてくれませんw 出てくる人出てくる人みんな投げっぱなしジャーマン繰り出してる」


「笑いの後始末はあまりしてくれない」「出てくる人出てくる人みんな投げっぱなしジャーマン繰り出してる」、これは『大怪獣のあとしまつ』のギャグの本質であると共に、実に興味を惹く文言であり例えはないか。さらに「涼ちゃん、たおちゃん、グッジョブです!」と自身と共演経験があり、実際に同作で好演されていた山田涼介と土屋太鳳にエールを送って締めることも100点満点だ。

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その他、『大怪獣のあとしまつ』は公式サイトの著名人のコメントが秀逸(特に注目は脚本家の小林靖子と作家の京極夏彦)なので、田中圭のコメント全文を確認するためにもぜひ読んでみることをおすすめする。その中でも、しっかりと作品の特徴を示しつつ、かつ誰も傷つけないコメントをした田中圭のことを、改めて大好きにならざる得ない。これからもファンで居続けます。グッジョブです!

(文:ヒナタカ)

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