映画『ハウ』を観てほしい“6つ”の理由


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婚約者に突然ふられ、2人で住むための一軒家に一人で住む羽目になった市役所職員・民夫(田中圭)。からっぽの日々を過ごす中、上司の勧めで飼い主に捨てられ保護犬となった、真っ白い大型犬を飼うことになる(押し付けられたともいう)。

とある理由から「ワン」と鳴けず、「ハウ」とかすれた声を出すこの犬をハウと名付け、民夫の人生は優しくて温かいものになった……。

メインビジュアルとあらすじから、ペットムービーだと思う人も多いだろう。だが『ハウ』は、いい意味で予想外な展開の連続なのだ。

単なるペットの話ではなく、1匹の犬をめぐってさまざまな物語が何重にも折り重なった、味わい深い物語だった。特にラストは誰にも想像できなかった、でもこの作品らしいと思える。

本記事では、映画『ハウ』のおすすめポイントを紹介していく。

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1:ハウと民夫、ふたりのかわいさ



本作のもう1人の主人公、おっきくて真っ白な犬・ハウ。表現豊かで、犬の形をした人間のようにも見えるハウがとにかくかわいいためそれだけで癒され、おっきいワンコをモフモフしたい欲にかられる! 

主人公・民夫を演じる田中圭も大型犬っぽさがあるため(伝わるだろうか)おっきいワンコが2匹いるようにも感じる。とにかくかわいい1人と1匹の生活の様子は、観ていて心が温まるのだ。



2:伝説のドッグトレーナーが育てた俳優犬・ベックの演技



“ハウ”はゴールデンドゥードゥルの“ベック”が演じている。動物が出てくる映画は他にもあるが、本作ではあまりにもさまざまな場面をバリエーション豊かに演じており、出演時間が圧倒的に長く、負担も大きい印象だった。「犬がここまでの演技をすることって可能なんだろうか?」と驚くほどだが、CGはいっさい使わずすべて本人(本犬?)による演技だという。

実はベックは『ハチ公物語』『クイール』『ひまわりと子犬の七日間』などを数々の動物映画を手掛けた、伝説のドッグトレーナー・宮忠臣が指導している。また、当初出演予定だった成犬がいたのだが、コロナ禍で撮影が1年以上延期されたために、出演が懸念されるようになってしまったのだという。

そんな中、宮が子犬から育て上げたのがベックなのだ。数多くの俳優犬を指導してきた彼も、“作賓のため”というのは初めての試みらしい。そんな奇跡が重なったベックの演技を、ぜひ大画面で味わってほしい。

3:ハウがいくつもの物語に出会うロードムービー

ずっと続くかと思われたハウと民夫の幸せな生活は、ある日突然終わりを迎えた。悪い偶然が重なり、ハウが遠い北の地・青森へ運ばれてしまったのだ。当然民夫は知る由もなく、悲しみに暮れた。

民夫の優しい声を思い出し「もう一度、会いたい」と思うハウは、798キロの道のりを走って帰ろうとする道中で、さまざまな人に出会う。出会う人々は、みんな何かしらの悩みや孤独を抱えている人だった。



中学生・麻衣(長澤樹)は、とある理由でいじめられており、学校に行こうとしても行けない日々が続いていた。ついてくるなと言ってもついてくるハウは、麻衣のそばにずっといる。無人駅でのハウと麻衣の交流によって、変化は訪れるのか……?



さびれた商店街で傘屋をやっている志津(宮本信子)は、最愛の夫(石橋蓮司)を亡くしたばかり。自分に寄り添うハウを見るうちに、志津はなぜか、ハウに夫の面影を見るようになり……。



夫からの激しいDVから逃れるため、修道院のシェルターに保護され生活していためぐみ(モトーラ瀬里奈)、彼女を支えるシスター(市川実和子)。そこへ紛れ込んできたハウは、やたらとめぐみになつく。その理由は……?

何かを抱えた人々のところへ流れ着いたハウがどんなことをして、彼らの問題はどのように変化するのか、解決するのか。ひとつの映画を観ているのに、いくつもの物語を堪能できる贅沢さがあったし、それぞれの人にとって優しい存在であるハウが、たまらなく愛おしくなった。

4:いい味が出てる、人間たちの演技



ここまでハウの話中心になってしまったが、人間たちの演技もとてもいい。田中圭が演じる主人公・民夫は、ちょっと頼りないが優しい青年で、彼にぴったりだ。制作陣がぜひ田中さんに演じてほしいと思ったというのも頷ける。

今やさまざまな作品に主役級のポジションで出演する田中圭だが、いい意味でこなれず、同世代の俳優よりも民夫のような“悩める不器用な青年ポジション”が似合う気がする。いつまでもそんな役が似合う彼でいてほしい。



民夫を温かく見守るまわりの人たちもいい。まず池田エライザが演じる、同僚の足立桃子。一見不愛想だが、民夫のことを心配して手を差し伸べてくれる。桃子の新たな一面がどんどん見えてくるのも、この作品の見どころのひとつだ。

野間口徹演じる上司の鍋島が、さまざまなことで落ち込む民夫にかけてくれる言葉が優しくて深くて、こんな上司の下で働きたいと思った。渡辺真紀子演じる鍋島の妻でハウと民夫を引き合わせた麗子もよかった。

5:ナレーションは石田ゆり子



『ハウ』物語を彩り、時にはハウの気持ちを代弁する声は、石田ゆり子のもの。自身も何匹もの犬や猫と生活する彼女の優しい声にも、ぜひ注目(注耳)してほしい。

6:ある意味この作品らしい、前代未聞のラスト



大きなネタバレになるので書けないのだが、こ『ハウ』のラストは想像できなかったなと思う。ここでこうくるか……!と思うけど、ある意味ものすごくこの作品らしいラストだった。賛否が分かれるかもしれないが、公開後このラストにどんな意見が出るかも楽しみだ。

犬が好きな人はもちろん、最近疲れているという人や心がささくれ立っている人、優しさのかたまりのようなこの作品を観てほしい。あなたの心をじんわり温めてくれると思う。

(文:ぐみ)

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