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2023年01月16日

「Get Ready!」第2話:柄本明の芝居に圧倒される一時間。ただやっぱり結末に違和感

「Get Ready!」第2話:柄本明の芝居に圧倒される一時間。ただやっぱり結末に違和感


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妻夫木聡主演のドラマ「Get Ready!」が2023年1月8日放送スタート。

本作は、多額の報酬と引き換えに、手段を選ばず患者の命を救う正体不明の闇医者チームの活躍を描いたダーク医療エンターテインメント。闇医者チームのメンバーには、主人公で孤高の天才執刀医・波佐間永介(通称:エース)を妻夫木、その相棒である交渉人・下山田譲(通称:ジョーカー)を藤原竜也、凄腕オペナース・依田沙姫(通称:クイーン)を松下奈緒、若き万能ハッカー・白瀬剛人(通称:スペード)を日向亘が演じる。

本記事では、第2話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

「Get Ready!」第2話レビュー


初回の放送で池松壮亮が登場したように、ドラマ「Get Ready!」は毎話のゲストが豪華だ。第2話には一癖も二癖もある役柄をこなしてきた柄本明が出演し、圧巻の芝居を披露した。

多額の報酬と引き換えに、日本では認められていない術式と未承認の薬剤を使って患者の命を救う。世間から“仮面ドクターズ”と呼ばれる闇医者チームのメンバーは普段、正体を隠して暮らしている。

現在の医療界では不可能なオペもこなす敏腕執刀医“エース”こと、波佐間の表の顔はパティシエ。手先の器用さを生かした彼の繊細なケーキには、水面(當真あみ)のように熱心なファンが付いている。

一方、波佐間に仕事を与える交渉人のジョーカー(藤原竜也)は下山田という名前で普段は国際弁護士として活躍。そんな彼のもとに、元妻の千秋(市川由衣)と一人息子の優人(相澤壮太)が訪ねてくる。


千秋の用件は、医者志望の優人を城和大学附属小学校に裏口入学させるため、2億円を用意して欲しいとのことだった。近年、とあるプロジェクトで莫大な金を得ているという城和大学。

理事長である坊城(柄本明)は自分の学校に子供を入学させたい保護者たちに裏口入学を案内し、多額の寄付金を手に入れていた。それだけじゃない。製薬会社からのキックバック、政界との癒着と利権などが噂される金の亡者だ。


そんな坊城に、ジョーカーは2つの顔で近づく。表の顔で坊城に近づく目的は2億円を学校へ収める代わりに息子である優人を入学させてもらうため。

そして、裏の顔では、坊城に多額の報酬と引き換えにした手術を持ちかける。坊城は肝内胆管癌を患っており、余命数カ月を宣告されていたのだ。しかし、坊城はたとえこのまま放っておいたら自分が死ぬとしても、2億円以上は払えないと断る。

こんな状況でもお金を優先させる坊城に、モニターで交渉の様子を見守っていたクイーン(松下奈緒)とスペード(日向亘)もあきれ顔だ。

坊城に反発する声がないわけではなく、副理事長で息子の康之(三浦貴大)もまた坊城のやり方には辟易していた。自身が幼い頃から坊城は家庭を顧みず、医師の仕事に奔走し、結果的に母親の病気を見逃した。


そして、今や金のためにやりたい放題の父親を黙って見てはいられず、康之はマスコミに坊城の悪行をリークし、引責辞任を言い渡す。坊城は息子の手により、理事長の座から引き摺り落とされた。

そんな一見救いようのない悪人に対しても、エースは「生き延びる価値があるのかどうか」を問いかける。エースが納得するような答えは返ってこないと思われたが、「金のない理想など、無意味なんだよ」という坊城の言葉が彼の心を捉える。

果たして、坊城にとっての理想とは何か。チームが調べた結果、坊城は以前から僻地に最新設備の整った病院を建設するため奔走していたことが分かる。方々に頭を下げ、自分に残された時間でやるべきことを全うする坊城の姿がそこにはあった。


そんな坊城にジョーカーは、城和大学で医師を志した卒業生たちや関係者の前で最後の講義を行わせる。そこで坊城が語ったのは、「地方に一つでも多くの優秀な病院を作り、一人でも多くの優秀な医者を育てる」という息子の康之も知らない自分の理想だった。

政治家に任せていたら一向に解決しない地域格差を埋めるため、どんなに汚い手を使ってでも資金づくりに奔走した坊城。しかし、死を目の前にして、坊城は家族との関係性も含め、多くのことを犠牲にしてきたことに対し、後悔したという。

「一つだけ伝えたいことがあります。過ちに気づけば人はやり直せるということです。私は気がついたところからやり直してみました。過ちを正す瞬間の風景は鮮やかだ。勇気を持って正したからこそ見える景色もある。だから、恐れずぶつかってみてください」


やってきたことは決して褒められたわけではないが、自分の手を汚してでも医療の発展に尽くしてきた坊城の熱いメッセージは若き医療従事者たちの心に届いた。死の間際に立ち、残り火を燃やし尽くすかのごとく、柄本明の芝居に圧倒される。坊城の講義シーンには、まるで最終回のような迫力と熱量があった。

結果、坊城は「生き延びる価値がある」とエースに判断され、オペでその命を救われる。前回と同じく、どんな悪人もその人なりの正義や使命感を持っており、死を前にそれが色濃くなる様子が描かれた。しかし、康之が語ったように「理想の犠牲者」はやっぱりいる。

池松壮亮が演じた渋谷に追い詰められ、死を選んだ人がいるように、坊城から裏口入学の話を持ちかけられ、寄付金のために悪事に手を染めた保護者や、それによって苦しめられた人もいるかもしれない。そう考えると、どんなに改心したとしても、過去の悪行が許されるものだとは到底思えないのだ。

しかし、エースたちはそうした人間の命を、普通の人なら払えない多額の報酬と引き換えに救う。自分たちの力を、技術を、渋谷や坊城のような強者から普段虐げられている人のためには使わない。

そこにどうしても違和感を覚えてしまい、豪華俳優陣の演技に感動こそすれど、結末にイマイチ納得できない。ただ、闇医療チームの本当の目的もこの先明らかになってくるのだろうから、この違和感を持ちつつも物語を引き続き追っていきたいと思う。

(文:苫とり子)

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