<アトムの童(こ)>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
▶︎「アトムの童(こ)」画像をすべて見る
山﨑賢人主演、岸井ゆきのや松下洸平が出演する日曜劇場「アトムの童(こ)」が、2022年10月16日より放送を開始。
山﨑賢人演じる安積那由他(あづみ・なゆた)は、凄腕の若きゲームクリエイター。とある事件をきっかけに開発から離れているが、企業や販売元を通さずに個人で制作していたスタイルは「ゲーム業界のバンクシー」「インディー」と呼ばれ、知る人ぞ知る存在だった。そんな彼を探しているのが、経営崖っぷちの老舗おもちゃメーカー・アトム。ゲーム業界の覇権争いを描くドラマが、始まる。
CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。
もくじ
・第1話ストーリー&レビュー・第2話ストーリー&レビュー
・第3話ストーリー&レビュー
・第4話ストーリー&レビュー
・第5話ストーリー&レビュー
・第6話ストーリー&レビュー
・第7話ストーリー&レビュー
・第8話ストーリー&レビュー
・最終回ストーリー&レビュー
・「アトムの童(こ)」作品情報
第1話ストーリー&レビュー
第1話のストーリー
▶︎「アトムの童(こ)」画像をすべて見る
安積那由他(山﨑賢人)は大手企業や販売元を介さず個人でゲームを制作する、通称「インディー」と呼ばれる若き天才ゲーム開発者。「ジョン・ドゥ」という名前で活動し、誰もその素顔を知らないことから「ゲーム業界のバンクシー」と称される存在。しかし、現在は自動車整備工場で働き、ゲーム開発からは離れ静かに暮らしていた。
そんな中、老舗玩具メーカーの「アトム玩具」は海外との価格競争などの影響で、廃業の危機を迎えていた。そこで一発逆転の経営再建をはかり、ゲーム制作へ参入すべく、「ジョン・ドゥ」を探し始める。資金もノウハウも持たないアトムは、藁にも縋る思いで「ジョン・ドゥ」とコンタクトを取ろうと奔走するが…。
第1話のレビュー
任天堂からファミリーコンピュータ(通称ファミコン)が発売されたのが、1983年。SONYからプレイステーション(通称プレステ)が発売されたのが、1994年。冒頭から余談で恐縮だけれど、1989年生まれの筆者にとって、幼少期の思い出を語るのにゲームは切っても切り離せない。ファミコンで「じゃりン子チエ」のゲームをやったのが、もっとも古い記憶。「聖剣伝説」「ぷよぷよ」も狂ったようにやりまくった。プレステでは「クラッシュ・バンディクーシリーズ」「チョコボの不思議なダンジョン」「テイルズオブシリーズ」「パラッパラッパー」をやり込みまくり……。ああ、書いていて懐かしさが込み上げてくる!
本作で山崎賢人が演じる那由多は、個人でゲームを開発する「インディー開発者」。素性は知られておらず、ゲーム業界のバンクシーとも言われている。
彼がゲームや玩具にそそぐ愛情も並大抵のものではない。老舗玩具メーカー・アトムの娘である海(岸井ゆきの)と出会ったときも、彼は「俺は夢を買ってるんです。カプセルトイってのは、一期一会なんだよ」と熱弁を古いながら、ネッキーのガチャガチャに興じていた(そう、このドラマにはファミ通でお馴染みのネッキーが出てくる!)。
作中におけるネッキーは、アトムの看板キャラクター。アトムの作る玩具に対し、那由多は「作り手の熱をこっちも感じて、ワクワクする」と評するほどの熱狂的ファンなのである。
そんな那由多だが、現在はゲーム開発から離れ、知り合いのツテをたどり車の整備工場で仕事をしている。ネットカフェの店長である知り合いは、那由多がふたたびゲーム業界へ戻ることを熱望しているが……「俺はゲームはしない」の一点張りを崩さない。
那由多は菅生隼人(松下洸平)、緒方公哉(柳俊太郎)とともに、「ジョン・ドゥ」名義で伝説的ゲームを世に残した過去がある。しかし、大手IT企業「SAGAS」の興津社長(オダギリジョー)との間に、何らかの揉め事が。
おそらく、ジョン・ドゥが作ったゲームの権利が興津に奪われ、責任を感じた公哉は自死。それをきっかけに、那由多と隼人も袂を分かつことになったと推測できる。
日曜劇場に初主演となら山崎賢人も素晴らしいが、これまでとは少々違った印象の演技をしている松下洸平にも注目したい。「最愛」(TBS)で演じていた大ちゃん、「やんごとなき一族」(フジテレビ)で演じていた健太など、彼が近年演じてきた役柄とは一味違っている。
メガネをかけた鋭利なイメージは、たびたび挟まれる回想シーンで見られる隼人とは別人のようだ。いったい、那由多・隼人の共同名義であるジョン・ドゥには、何があったのか。那由多がゲーム開発から離れていた6年の溝は、想像よりも深そうである。
そんな那由多を、ふたたびゲーム業界に引き戻したのは、父の代わりにアトムを継ぐことになった海の熱意だった。
銀行で働く海にとって、自身の実家である玩具メーカー・アトムは歓迎できない存在だった。他では作れない唯一のおもちゃ作りに精魂を込める父は、その過度な情熱により妻に愛想を尽かされてしまう。
アトムの看板キャラクター・ネッキーの生みの親である海にとって、父の背中は尊敬の対象から軽蔑のそれに成り代わってしまった。彼女からしたら、家族を壊してまでおもちゃを作り続けることにどれだけの意味があるのか、はかりかねてしまったのだろう。
時代の流れとともに、アトムの業績は悪化する一方。おもちゃやゲーム業界も進歩し続けるなかで、カプセルトイやプラモデル、ソフビ人形のみで経営を続けるのは、確かに厳しいのかもしれない。社長である父が脳梗塞で倒れ、アトム本社が火事になってしまった事件も手伝い、海は会社を畳む方向で動こうとする。
そのタイミングで、渡りに船というべきか、興津が社長を務める大手IT企業「SAGAS」がアトムを買収したいと申し出てきた。アトムが特許を取得している独自の技術を使えば、これまでにない新たなゲーム開発ができる。興津はその技術欲しさだけで、アトムに声をかけてきたのだ。
これ以上ない話に飛び乗ろうとする海だが……。那由多が語る、アトム製のおもちゃに対する愛情、そして父親の叫びに心を動かされ、一転、アトムを継ぐことに決める。
「おもちゃなんかなくたって、誰も困らねえ」
「でも、あればワクワクするし、笑顔になる。俺たちはそういうものに、人生かけてきたんだからよ」
おもちゃやゲームは決して、不要不急なんかじゃない。コロナ禍によって世界は様変わりしたが、各国において芸術やエンタメ業界への対応は二分した。あらためて、自国の姿勢を問われるセリフだとも感じられる。
アトムを再興させるため、海が目をつけたのはゲーム開発事業。伝説のインディー開発者であるジョン・ドゥとコンタクトを取り、アトムのゲーム開発に参加してもらおうと計画を立てる。
表舞台にはいないジョン・ドゥを引っ張り出すには、たった一作だけ世に残っているゲームをやり尽くし、バグを探して報告するしかない。海はネットカフェに陣取りながら必死でバグ探しに打ち込む。
那由多が一言「俺がジョン・ドゥだ」と言えば済む話だが、最後の最後まで、海がバグを見つけ出す瞬間まで名乗りを上げることはなかった。彼女の熱意と根性を見込み、リスペクトしたうえでの判断だったのかもしれない。
彼女の姿を見て奮起した那由多は、6年間の沈黙を破り、ふたたびゲーム業界へ戻ってくる。
「アイデアで勝つところを、俺が見せてやる!」
大手で、資金も人材も潤沢にある環境じゃなければ、面白いゲームは作れないのか? そうじゃない。少数精鋭でお金なんかかけなくても、アイデアで面白いゲームは作れる。それを証明するため、そして、いわゆる“過去の雪辱”を晴らすために、那由多はアトムのゲーム制作に手を貸すことを決めた。
大手 VS 老舗の覇権争いが、ここから始まるのだ。
少々、不穏な予感をさせるのが、隼人の動向である。那由多と同じくジョン・ドゥの名義を持つ彼は、興津と接触した。隼人もまたSAGASと手を組み、ゲーム開発に乗り出すのだとしたら……。元は仲間だった二人が、全面的に対決することになる。
1話から見どころ満載。何とも面白くなりそうだ。
※この記事は「アトムの童(こ)」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)TBS