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2023年02月05日

『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』で再確認する映画館の意義

『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』で再確認する映画館の意義


最後にバトルがなく終わってしまう構成は子どもには不評?



筆者は「鬼滅の刃」が好きな保育園児、5歳と6歳の甥っ子と一緒に本作を鑑賞したのが、率直な感想を聞くと、それぞれ「最後に鬼と戦ってくれないから、面白くなかった」「面白かったけど、もっと観たかったのになあ」だった。観ている間は特にぐずったりはせず楽しんでいた様子だったが、残念ながら満足度そのものは高くなかったようだ。

その理由はもちろん「そういう構成になっている」からだろう。仕方がないことだが、「刀鍛冶の里編」第一話はエピソードの序盤も序盤、その場所に行くところで終わってしまうし、子どもがもっとも期待しているであろうバトルシーンはないに等しい。おそらく彼らの視点からすれば、激しいバトル→悲しいお話→会議→新たな物語の初めも初めだけで終わる、という流れだからこそテンションがどんどん下がってしまったのではないだろうか。

そして筆者個人としても、これこそが「映画ではない」という印象を持った理由である。映画はごく一部の例外を除き、2時間の映画の中で起承転結のある物語を紡ぎ、その終わりまでを見届けることができる、だからこその感動やカタルシスが得られる娯楽であり芸術だ。

だが『上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』はそうはなってはない。観る前からわかりきっていたことではあるし、そういう内容だと筆者は甥っ子2人に事前に説明してはいたのだが、やはり良くも悪くも「テレビアニメの最後と最初のところだけを観た」という印象を持つ方は多いだろう。

少しだけでも劇場のための編集をしてほしかった気も?


個人的にさらに気になったのは、テレビアニメ版をつなげた作品の特徴上、スタッフロールが複数あったこと、はたまた「前の話のあらすじ」として同じシーンが繰り返されていたことだった。1週間の放送の間隔があるテレビアニメとしては真っ当ではあるが、映画館で続け様に観ると、テンポの悪さや煩わしさを感じてしまった、というのも正直なところだ。

例えば、Disney+(ディズニープラス)で配信中の「四畳半タイムマシーンブルース」は劇場公開と配信が近い時期に行われており、劇場公開版はOPやスタッフロールを挟まない、独自の編集がされていた。個人的な好みではいえば、『上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』も、こちらと同様の「劇場でかける作品ならではの編集」をしてほしかったのだ。



とはいえ、やはりそれは個人的な好き嫌いの範疇。スタッフロールそのものが演出として機能しているところもあったし、余計な編集やカットをせずに「そのまま」提示してくれたことを感謝するファンもいるはずだ。Aimerによる「遊郭編」の主題歌「残響散歌」がかかるOP映像を、劇場で観られるのも嬉しかった。

映画館で映画を観る観客がさらに増えることを願って……


筆者は映画ファンのひとりとして「鬼滅の刃」に心から感謝していることがある。それは、コロナ禍のために映画館に足を運ぶ人が一時的にいなくなり、客足が以前のように戻るのか何もかもが不明瞭だった2020年10月に『無限列車編』がたくさんの人を映画館へと招いてくれたことだ。

『無限列車編』が映画館の経営そのものを救ったのも間違いないが、さらに重要なのは、特に子どもたちに「映画館を体験する」機会を与えてくれたことだ。彼ら彼女らにとって、タブレットで観るYouTubeが普段観ている映像であり、劇場に足を運ぶことはおろか、映画という娯楽に触れてこなかった可能性もある。前述した通り、大画面や音響、何より「みんなで一緒に観る」場所である映画館の素晴らしさを、初めて知った子どもも多いと思うのだ。

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そして、今回の『上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』を観た親子連れの皆さんには、ぜひ他の作品も映画館で観てほしいと心から願う。

例えば、現在公開中の『金の国 水の国』は小学校高学年くらいから楽しめる、優しい物語が紡がれた、スクリーン映えするアニメの美しさも存分に堪能できる作品だ。



今回の『上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』でも、きっと映画館という場所ならではの「体験」を改めて知った子どもや親御さんも多いはず。すでに配信&放送されているテレビアニメの内容を含んでいるからこそ、その比較で「映画館っていいな」とより思えるのではないか。『鬼滅の刃』という作品そのものが、さらに映画館で映画を観る楽しみを拡大させてくれることを、心から願っている。

(文:ヒナタカ)

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