「舞いあがれ!」奥様ですかと間違えられて、どうする舞<第90回>
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第90回を紐解いていく。
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一番近くにおんのに
突然現れた秋月史子(八木莉可子)は貴司(赤楚衛二)の短歌のファンで、自分も短歌を作っているから見てほしいと頼みます。なかなか積極的なひとであります。舞(福原遥)が店番を交代し、貴司は奥の間で史子の短歌を講評することにします。
史子のある歌に
一番近くにおんのにどうしても伝えられない切なさを貴司は感じます。この感情はきっと貴司のなかにもあるものなのでしょう。
怖くて誰にも見せられない心のうちを短歌にしてきた貴司と史子。でも、
ひとに見せることで 自分の世界がまた広がっていくんですよねと貴司は言います。
今まで誰にも見せられなかった心を貴司と共有できたことを喜ぶ史子は帰りがけに、舞に「奥さんですか?」と聞きます。「まさか」と全力で否定する舞。小さく「よかった」とほっとする史子。
その話を聞いた久留美(山下美月)は史子に貴司が取られてしまうのではないかと心配しますが、舞は自分の気持ちがよくわかっていないようです。
悠人(横山裕)のインサイダー取引問題という固い問題が解決したら、恋愛問題というやわらかい問題にシフトのようで、三角関係のムードが漂ってきたうえ、五島から来た一太(若林元太)は百花(尾本祐菜)に夢中です。
自分の気持ちを曖昧にしているにもかかわらず、舞は一太に「百花さんとつきおうてんの?」とからかいます。自分のことはわからないが他人のことはわかりやすいということでしょうか。
東大阪と五島と距離が遠いし、住む世界が違いそうですし、うまくいくのか心配になりますが、一太には幸せになってほしいです。五島が好きな同士、気が合いそうというところで気になるのは、貴司と史子も、短歌の話をしているとき、舞が入っていけなそうな、専門的な話を深く楽しそうにしていることです。
一太と桃花が共通言語でうまくいくとしたら、貴司と史子も……。そもそも舞は貴司のことを好きなのでしょうか。まずは、舞の気持ちがはっきりするところからでしょう。
サブタイトル「告白」は誰の誰への告白なのかーー。
舞の部屋で一太と舞が話しているとき、さくら(長濱ねる)がただ布団にくるまって寝ているだけでも存在していることが涙ぐましかったです。長濱ねるさんは協力的なかたなんですね。
ところで、史子の短歌も桑原亮子さんが書いていると思うので、貴司と史子の違いを出すのは複数の人物のせりふを書き分ける以上に難しそうな気がするのと同時に、ふたりが互いの短歌を褒め合うことは、桑原さんの宇宙が循環しているようでドラマティックだなとも感じます。
【朝ドラ辞典 マ―な一族(まーないちぞく)】デラシネで大樹(中須翔真)と陽菜(徳網まゆ)が買っていった「マ―な一族」は「カムカムエヴリバディ」でひなたの本棚にあった漫画。放送当時、某名作漫画のオマージュであろうと話題になった。
このように番組間を小道具が縦断することが時々、朝ドラにはある。類語:使いまわし
(文:木俣冬)
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