インタビュー

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2023年02月07日

「4分は逃げ切れても、6分はごまかしきれない」スーパーマラドーナ・武智が考えるM-1とTHE SECOND

「4分は逃げ切れても、6分はごまかしきれない」スーパーマラドーナ・武智が考えるM-1とTHE SECOND

プロ・アマチュア問わず、結成15年以内の漫才師が競い合うM-1グランプリ。

その影響力は計り知れず、ファイナリスト、優勝者の多くは、決勝の舞台を境に、その後の芸人人生を大きく一変させてきた。

一方、ラストイヤーまでに結果を残せずモヤモヤとした日々を過ごす芸人たちも。昨年末に発表された新たな賞レース「THE SECOND~漫才トーナメント~」は、結成16年以上の漫才師のための大会だ。

M-1で何度もチャンピオンの座を掴みかけ、「THE SECOND」への出場も表明しているスーパーマラドーナの武智は、2つの賞レースをどう見ているのか。その思いを聞いた。

>>「準決勝に進むために必要なものは、ウケと色」スーパーマラドーナ・武智が見たM-1GP2022

(画像提供:スーパーマラドーナ劇場/OmO)

人生のターニングポイントにM-1が現れる

――武智さんといえばM-1への思いが非常に強いイメージがあります。

ありがとうございます(笑)。

――いつ頃からM-1で結果を残したいと思うようになったのでしょう?

2003年から参加させてもらい、笑い飯さんや千鳥さんを見て「すげえ、おもしろい先輩がおるな」と憧れてはいました。でも、想いが強くなったのは2004年だと思います。

――なぜ2004年なのですか?

2004年頃の僕ら(スーパーマラドーナ)って、なにをやってもウケなかったんですよ。劇場でライブしてても、僕らが出てきたら休憩時間みたいな扱いを受けてて、「どうにもならんから解散するか」と相方の田中と話をしていたくらい。

そのときに「最後にもう1回だけ、M-1に出てみよう」って出場したら、準決勝まで進んだんですよね。

そしたら、劇場での扱いやお客さんからの目が一気に変わって、今までウケてなかったネタがウケるようになっていったんです。そのときに、M-1に助けてもらったなと感じて「決勝に出たい」「優勝したい」と思うようになりました。

――M-1は2010年に1度終了し、2015年に復活しました。その時の気持ちはどうでしたか?

「また助けられたな」って思いました。

M-1がない期間は、他の賞レースに挑んで、ある程度の結果を残すことはできたものの、仕事がめっちゃ減ったんです。その一方、僕は結婚して、子どももいたので「そろそろ続けられへんな」って思っていたらM-1が復活することになって。1年間、死に物狂いでネタを書き続けました。

――すごいタイミングだったんですね。

不思議なことに、M-1は僕の人生のターニングポイントに現れるんですよ。実際、2015年に初めて決勝にいけて、また仕事が戻ってきましたから。そこでまた想いが強くなっていきました。

――2015年大会が初の決勝ということで、決勝の舞台の感覚がわからないままネタを作り続けたのではないかなと思います。「こうすれば優勝できる」という確信がない中で、不安はなかったのでしょうか?

そうなんですよ。どれぐらいウケれば、決勝にいけるのかすらわからなかったので、365日やみくもにネタを書き続けていました。だから、決勝進出が決まったときはすごく嬉しかったですね。「人生を変えるためには、これだけの努力がいるんや」とも思いました。

――そのとき周りの芸人さんは、どのような反応を?

お世話になっている笑い飯の西田さんは、準決勝をわざわざ会場まで観にこようとしてくれていたので、報告したらめっちゃ喜んでくれました。決勝進出者の会見やら、キービジュアルの撮影が終わったのが朝5時やったんですけど、西田さんに連絡してみたら「まだ居酒屋で飲んでるからおいで」って言っていただいて、お祝いしてもらいました。あと、モンスターエンジンの西森が待っててくれて「やりましたね」って言ってくれて。あの日のことはずっと覚えています。

4度の決勝出場「やっぱり優勝したかった」

――2015年からラストイヤーの2018年まで4年連続で決勝進出しました。出場し続けると、周りからの期待も上がっていったのではないかと思います。

そうですね。だから、西田さんやいろんな先輩からも「お前らが優勝するなら、2015か2016やったな」って言われました。というのも、2017と2018は決勝にいくのがやっとだったんですよ。ない知恵を絞り出して、新しいパターンを咀嚼したり、手の中にある引き出しでなんとかごまかしたりしながらだったので、決勝で勝負できるような状態ではなかったと思います。

――これまでにも多くの芸人さんから言われていることですが、ファイナリストとして出場した翌年から多忙になってしまったことの影響も大きいのでしょうか?

たしかに時間はなかったですね。特にラストイヤーの2018年のときは、関西でレギュラーを5本やりつつ、1日10ステして、営業にも行ってと朝から22時くらいまで働いていました。それが終わって家に帰ってから、ネタを書くんですけど、気力も残ってないし、眠たいしとフラフラで。コンビニのエクレア2個とダイエットコーラを買って、なんとか眠くならないようにネタを書いて、また朝が来たら仕事に行くという生活を繰り返していました。時間がなさすぎて、準決勝前は2週間で7キロ痩せましたもん。

――でも、仕事が増え多忙になっても、M-1には出続けたんですね?

そうですね。M-1は芸人にとっての甲子園みたいなもので、漫才をしている以上、優勝を目指すのは当たり前だと思っていました。だから、やっぱり優勝したかったなって思います。

THE SECONDは、ごまかしきれない猛者同士の戦い

――「THE SECOND~漫才トーナメント~」が始まることが発表されたとき、どう思いましたか?

ネタを作る上でのわかりやすい目標ができたなと思いました。正直M-1のラストイヤーが終わってから「何に向けてネタを作っているんだろう」とモチベーションが下がってしまって。2019〜2022年は、いいネタが1〜2本しかできてなかったんです。

でも「ここに向けてネタを作ればいいんだ」という指標ができた途端に、いいネタができて。自分はわかりやすい目標がないと頑張れない、ダメ人間なんだなとつくづく思いました(笑)。

――M-1は4分ネタですが、「THE SECOND」は6分ネタでの勝負になります。4分と6分のネタでは作り方も変わるものでしょうか?

全然違いますね。4分は逃げ切れるんですよ。1つの設定で疾走して、走り切れる。でも、6分は逃げきれないと思います。ごまかしきられへんのが6分やなと。

――その中で勝てるネタというものは、どんなものになってくるのでしょう?

M-1が駆け抜けるような漫才やとしたら、「THE SECOND」はどっしり漫才を求められているのかなと。ただトーナメント戦なので、勝てなかったら負けてしまう。だから、どっしりとしながらも、ビシバシ笑い取っていかなきゃいけないとは思います。

――かなり高レベルな戦いになりそうですね。

M-1はアマチュアの方や芸歴1〜2年目の子も出れますが、「THE SECOND」は16年以上、芸人として生き残った人らの戦いですから、その時点で僕はすごいと思っています。

全員、猛者。簡単な相手は1組もいない

――たしかに積み重ねてきたものがダイレクトに反映されそうですね。

半端じゃないと思います。そんな中で、自分らがどれぐらいやれるのかが楽しみです。

――武智さんが出場してほしいと思っているコンビはいますか?

テレビで活躍している人全員に出てほしいです。トーナメントでかまいたちvsオードリーとか、千鳥vs麒麟とかめっちゃ観たいと思うんです。その中で「ちょっとすいませんけど、ジャイアントキリングさせてもらいます」っていうコンビが生まれたら楽しいですよね。

――お話を聞いて、すでに「THE SECOND」が大きな目標になっているのだなと感じました。

おそらく人生最後の賞レースやと思うので。どれくらい続くかはわからないですけど、いずれ必ず取りたいです。

――いずれ、なんですね?

今のところラストイヤーがないからこそ作戦が必要なんじゃないかなとも思っているんです。あえて出場せずに絶対に優勝できる3本がそろったときに、本気で挑むこともできるし、いつ優勝するか戦略立てるコンビもいると思います。「今年は出ないけど、来年は出よう」とか「今年はもう出し尽くしたから2年休むわ」とかもあり得るんじゃないかなと。

今は、この賞レースに向けてネタを作ることが幸せなので、楽しみたいなと思います。

(取材・文=於ありさ)

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