続・朝ドライフ

SPECIAL

2023年03月09日

「舞いあがれ!」やっぱりお嬢様。舞のお人好しにもやもやした<第110回>

「舞いあがれ!」やっぱりお嬢様。舞のお人好しにもやもやした<第110回>


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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。

本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第110回を紐解いていく。

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信用問題

ようやくできたパンチングメタルを使ったランプを、大手のインテリアメーカーが目をつけて海外の工場を使って大量生産したいと言ってきました。

パンチングメタルの会社・仙波(森下じんせい)はすっかりノリ気です。
信用第一の職人の世界と思ったら、意外と薄情で……。

御園(山口紗弥加)は認められないと立腹しますが、舞(福原遥)はそもそも
町工場を盛り上げるためにはじめた事業なので自分たちの利益よりも町工場の魅力が広がるほうを選択します。

ただし、御園がアイデア提供と試作開発費をしっかり請求することにして、丸く収めます。御園がしっかり者でよかった。こういうときは彼女のように相手に気を使わない現実的な人が大事です。

結局、舞はあまりお金に困ってないんですね。「お嬢様の道楽」と言われるわけもよくわかる一件でした。

せっかく助けてくれた我妻(久保田磨希)をこんねくとに呼びつけて、企画が頓挫したことを伝える非常識。これはドラマあるあるで、撮影場所の都合で、
先方に出向くことができないのでしょう。でもこういうところにもやもやします。

我妻さんの工場を見せてもらったというセリフもあって。仕事するに当たって、挨拶がてら、舞たちがまず出向くべきでは? と思ってしまいますが、ドラマだから、ということと同時に、IWAKURAがいかに大きな会社で、東大阪の町工場のなかで顔役的な存在であることを表現しているとも考えられます。

当初、我妻はIWAKURAさんだから話を聞きに来たと言っていました。つまり、我妻はひじょうに尊大な態度をとってはいますが、出入り業者として、IWAKURA の傘下のこんねくとに御用伺いに来たようなものなのです。

何の実績のない新興のこんねくとですが、IWAKURAの威光という下駄を履かせてもらっています。かつて浩太(高橋克典)がせっせと汗水たらし自ら各所に出向いていた下請け時代とは違うのです。そう思うとめぐみ(永作博美)ってすごい! ここまでにIWAKURA をしたんですねえ。
めぐみは貫禄十分に、信用は簡単に手にはいらないものだと、舞を鼓舞します。

それにしても最初の仕事でこんなぐだぐだなことをして、我妻は怒らせたらこわい存在だったようなのに、仙波もどういう神経なのか。しょせん人間、私利私欲。ビジネスの世界、これが当たり前なのでしょうか。だからこそ、最初に契約を取り決めておいたほうがいいと視聴者にもいい学びになりました。

もうひとつのもやもやは、佳晴(松尾諭)のプロポーズ。津田(たくませいこ)とようやく長い春を終えようとしますが、もちかけ方がまるで「家政婦」
が必要みたいな感じで津田の機嫌を損ねてしまいました。

もやもや回でしたが、たぶん、明日の金曜日にはこのもやもやが晴れるにちがいありません。それがドラマです。


【朝ドラ辞典 家政婦(かせいふ)】

朝ドラヒロインが結婚したときの「家政婦」問題は視聴者の共感問題として時々描かれる。はっきり言及したのは「マッサン」で、西洋人のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)は、「私、女中?」と夫の態度に抗議した。
一方、仕事として家政婦や女中が登場することもある。「スカーレット」の貴美子(戸田恵梨香)は大阪で住み込みのお手伝いさんをやり、「おちょやん」の千代(杉咲花)も最初は女中奉公した。ヒロインの家の一員として女中キャラが描かれることもある。いずれも明治〜昭和初期までを舞台にした作品のなかである。
(文:木俣冬)

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