続・朝ドライフ

SPECIAL

2023年07月13日

「らんまん」めくるめく回想で、またも最終回かと思った<第74回>

「らんまん」めくるめく回想で、またも最終回かと思った<第74回>

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第74回を紐解いていく。

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新種発見!

アヴァンなしではじまった第74回。
「どうしてここへ来たかより、それでもみんな今、ここにおって 今日も植物学を生きゆう、それだけでいいがじゃと思います」(万太郎)

いきなり万太郎の名台詞と、終盤の新種発見で、最終回みたいでした。

名家に生まれながらも、進路がままならない大窪(今野浩喜)は、植物学と田邊(要潤)にすがるしかなかった。植物を好きなわけではなく、地位を得るために必死で勉強しただけ。田邊の植物学への執着も、地位のためだし、ほかの人達もほかに居場所がなかったから植物学教室にやって来るしかなかったのです。

純粋に植物が好きなのは万太郎だけ。

万太郎の純粋な植物愛が、東大の植物学教室の権威を高める可能性を秘めています。

「おまえはただ植物が好きだと笑った」
「このままじゃ 誰もお前に勝てない。だから、好きになりたい(後略)」

……等々、大窪は突如、これまでの物語における万太郎の功績をまとめます。
つまり、吹き溜まりでくさくさしていた人たちのところに、純粋な万太郎が現れたことで、みんなの気持ちが動いた、ということです。

大窪は万太郎に共同研究を持ちかけます。
万太郎の植物への並々ならぬ探究心を持ってすれば、新種を発見し、東大植物学教室の権威が高まる。でも、万太郎の個人の実績にはなりません。

それでも万太郎はその申し出を引き受けます。なぜなら、彼は、大窪や田邊、徳永(田中哲司)、波多野(前原滉)、藤丸(前原瑞樹)の個性を知ったから。

みんなそれぞれ、好きな植物を見つけ、愛しはじめているから。

新種発見の栄誉を教室に譲ることを受け入れる万太郎と、ユズリハが重なります。ユズリハは若干こじつけぽい感じもしないでありませんが、新しい葉が出てくるとゆずるように古い葉が落ちることから、新しい年を迎えるときの正月の飾りに使用されるということで、年が変わる時期であることが示されているのです。

植物の個体の違いを丁寧に観察し、細分化していく万太郎と大窪。
ときを忘れ、大晦日になってしまい、万太郎は慌てて帰宅します。

寿恵子(浜辺美波)は少しも怒らず、笑っています。できた妻!

そして、新種発見。
みんなと抱き合って喜びながら、万太郎のこれまでの歩みが浮かんできます。
ほ〜ら、最終回のよう。

一見、似て見えても、細部は違う。植物はこんなにも違いがあって、分類されているのに、人間の分類はわりとざっくりしています。区別が差別になるのは良くないですが、ひとりひとりの違いを認めることは大事です。

ふたりで懸命になにかする物語は、神木隆之介さんの代表作「桐島、部活やめるってよ」を思い出します。お笑い芸人コンビの話なども、視聴者は大好物ですから、万太郎と大窪を演じる神木さんと今野さんの息のあったお芝居には魅入られたことでしょう。

でも、めでたしめでたし、最終回ではありません。
田邊の心にじっとりとなにかが募っていきます。
田邊のシーンにはシダが好みそうな雨が多く、ペンのインクがじわじわと滲んでいく。
彼の心象風景のようでした。

(文:木俣冬)

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