インタビュー

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2023年03月09日

<桜庭ななみインタビュー>映画『有り、触れた、未来』で感じた「生きる」ことは未来への決意

<桜庭ななみインタビュー>映画『有り、触れた、未来』で感じた「生きる」ことは未来への決意

映画『有り、触れた、未来』が2023年3月3日(金)宮城県をかわきりに、3月10日(金)から全国で公開される。

監督と脚本を務めるのは映画『グッモーエビアン!』や『九月の恋と出会うまで』を手掛けた山本透。その山本監督が総勢22人の若手俳優からなるプロデューサーチーム・UNCHAIN10+1(アンチェインイレブン)と共に、「生きづらさ」を強く感じている人へ「生きる力」を届ける映画を制作した。 

いくつもの物語が交差する本作には、桜庭ななみをはじめ、杉本哲太、手塚理美、北村有起哉など多くの実力派俳優とフレッシュな若手俳優たちが出演。

今回CINEMAS+では、佐々木愛実を演じた桜庭ななみにインタビュー。本作を通して桜庭が感じたことを中心にお話を伺った。
 

経験したことのない状況と感情に向き合う作業を繰り返した数か月間


――静かに哀しみが押し寄せてくる作品でした。まずは、完成した作品をご覧になって印象に残っているシーンはどこですか?


桜庭ななみ(以下、桜庭):私が演じた愛実のストーリー以外にも「命」と向き合ったいくつものお話が展開していく作品だったのですが、最後のシーンでひとつに重なったところが印象深いです。それぞれの登場人物が「生きづらさ」を感じながらも未来を向いて生きていく決意が感じられ、とても良かったです。

――撮影前に意識したことや準備したことがあれば聞かせてください。

桜庭:今回の役を演じるにあたり、経験したことがないことが多かったので、とにかく台本を読み込みました。そこから自分なりに想像したり、考えたりを繰り返し、現地に入ってからは共演者さんとのやり取りの中でさらに役に向き合っていきました。
また、作中でギターを弾くシーンがあったのですが、これが大変でしたね。とにかく2か月くらいかけて猛練習しました。


――今回は保育士の役でしたが、役作りするにあたってどんなことを意識しましたか?

桜庭:初めての保育士役だったので、まずは保育関係の本を読んでシミュレーションをしましたが、実際はそんな簡単なことではなかったですね。子どもの目線に立つことの大変さがよくわかりました。

――お母さまが保育士だと伺ったのですが……。

桜庭:そうなんです。保育士の役を演じることを報告したら喜んでくれました。演じてみて感じたのですが、保育士は気力、体力面共にたいへんな仕事だということがよくわかりました。改めて母のことを尊敬しています。でも、保育園でのシーンは恥ずかしいので観てほしくないですね(笑)。
 

心の奥底に悲しみを抱えている女性を演じ、感じたこととは?


――作品の中に「生きる覚悟」や「生きることが苦しい」という言葉が出てきましたが、桜庭さんの思う「生きる」とはどんなことだと思いますか?


桜庭:まず、最初の火葬場のシーンが私の誕生日だったので、作品の中とはいえ、誰かの命が亡くなったことと自分が誕生した日が重なり、命の尊さを感じました。
私にとって「生きる」ということはあまりにも当たり前のことなので、そこまで深く考えたことがありませんでした。でも、改めて考えてみると、「生きる」の真逆のところには「死」という存在があると思うと、少し怖く感じています。

――今回、愛実を演じる上でどんなところが難しかったですか?

桜庭:本作は、大切な人を亡くした悲しみを抱えながら生きている登場人物が多かったのですが、私が演じた愛実は10年前に事故で彼を亡くしたものの、ずっとその悲しみを抱えているという状態ではありませんでした。むしろ、日常を普通に過ごしながらも、実は心の奥底には亡くなった彼の存在がある、という役だったので、そのバランスを表現することが難しかったです。

――東日本大震災”が大きなキーワードの一つになっているということですが、震災に対する桜庭さんの想いをお聞かせください。

桜庭:セリフの中に「大人が元気でなかったら震災の後に生まれた子どもたちにその悲しみが伝わってしまう」というニュアンスのセリフがあるのですが、東日本大震災から10年以上の月日が過ぎても被災された方たちの傷はまだまだ癒えていないんだということを強く感じました。

――監督との掛け合いで覚えていることを教えてください。

桜庭:愛実はアップダウンのある女性ではなく、心の奥底で秘めた想いを抱いているタイプなので、細かい表情については相談をさせてもらいました。監督からその都度OKをもらえると自信に繋がっていきましたし、自分の中での役作りを大切にさせてもらえたので撮影はとても楽しかったです。

今の自分だから演じられる役に取り組んでみたい


――「どうして命って大切だと思う?」という愛実先生のセリフに子どもたちが一生懸命話してくれたシーンがとても印象的でした。


桜庭:投げかけた質問に対して子どもたちが決められたセリフを話すのではなく、それぞれの気持ちを聞くシーンだったので私も印象深いです。実際はどんな風に声をかけたら純粋な言葉を引き出せるか、試行錯誤しながらの撮影でした。


――このシーンを演じる上でお母さまに相談はされたのでしょうか。

桜庭:母は、「子どもだからどんな答えが返ってくるかはわからないよ」と話してくれました。結果、母の言葉通り、子どもたちは大人にとっては意外で心に刺さるストレートな意見をたくさん話してくれました。
今回の作品ではこうして母といろんな感情を共有できたことも嬉しかったです。

――今後はどんな役を演じていきたいですか?

桜庭:そうですね。今の私だから演じられる役に挑戦していきたいですね。例えば…さまざまな選択肢の中で決断をしていかなければならない30代女性の物語や、仕事と恋愛や結婚などに揺れ動く女性のストーリーなど、等身大の女性を演じてみたいです。


(ヘアメイク=SAKURA/スタイリスト=井阪恵/撮影=渡会春加/取材・文=駒子)

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