「舞いあがれ!」家族3代、鍋をぐつぐつ。「美味しゅうなれ」と言うかと思った<第116回>
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第116回を紐解いていく。
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「未来の空を夢見る翼とよ」
【朝ドラ辞典 家族3代(かぞくさんだい)】「あまちゃん」「カムカムエヴリバディ」など、祖母、母、娘と3代が登場することが多く、それぞれの世代の代表として人生が描かれる。とりわけ「カムカム〜」は3部構成で3代がそれぞれヒロインとなる画期的構成だった。3人が集まって家の秘伝のあんこを煮る場面は名場面だった。「舞いあがれ!」116回でも家族3代が集まって祖母祥子のジャムを煮た。
祥子(高畑淳子)が東大阪にやって来ました。
玄関の表札には「梅津」「岩倉」のほかに「才津」が加わりました。
祥子は、仏壇のあるめぐみの部屋に、ベッドを置いて、そこで生活します。狭そう……。
こうなると2階の舞たちだけ広々暮らしていてバランス悪いですよね。1階も祥子用にリフォームしてあげてー。呼ぶのはいいけど、快適な環境にしてあげてほしい。狭くても不便でも家族が一緒に暮らせればいいってことじゃない気がするんですが、いかがでしょうか。筆者が老人だったらこんなの絶対にやだ。長く自分なりの哲学(暮らし)があった者がこんなに簡単に違う環境に入れないと思います。
広大な五島と違って、祥子は小さくなって見えます。すきやきもお好み焼きも美味しそうではありますがぽそぽそゆっくり食べています。
うめづの雪乃(くわばたりえ)がお好み焼きが口にあうか気にかけていて、「およ」と大騒ぎ。笠巻(古舘寛治:たちは土口)まで「およ」と言い出します。どうやら俳優たちのアドリブのようです。
笠巻もまた、老人のひとり。やることのない所在なさを、祥子と笠巻が背負っています。古舘さんはまだ五十代、高畑さんも素顔は華やかな女優さん、にもかかわらず老いをみごとに表現しています。
みんな、祥子に気遣い、祥子ができることーージャム作りをはじめます。その前に、貴司(赤楚衛二)にデラシネにつれていってもらって、沢村貞子の「私の台所」を読み始めます。
沢村貞子さんは昭和の名女優にして、朝ドラ「おていちゃん」(78年)の原作者でもあります。
「私の台所」(今出版されているのは「わたしの台所」)には「ドラマのなかの姑」という項目があり、いじわるな姑をやると視聴者に敬遠されるが、姑には姑の言い分があることを慮って綴っています。
古い女と書いて姑と本にもありますが、ドラマでは古くなった女の辛さを高畑さんがしんみり演じるなか、新しいことも着々と動いています。
刈谷先輩(高杉真宙)が空飛ぶクルマを開発しているのです。
「あの倉庫の片隅にうずくまっとうのは未来の空を夢みる翼とよ」(刈谷)
こういうセリフ、なにわバードマンのときは時々出てきて、心震わされました。あの頃のワクワクが戻ってきそう。舞も再び空に気持ちを持っていかれそうです。
(文:木俣冬)【朝ドラ辞典 ラジオ(らじお)】「舞いあがれ!」では祥子が夫の形見として大事に持っていた。「カムカムエヴリバディ」ではラジオ放送開始と同じ年にヒロイン・安子(上白石萌音)が生まれ、ラジオと共にドラマが描かれた。「本日も晴天なり」のヒロイン元子(原日出子)は女性としてははじめてラジオのアナウンサーになったひとりで、タイトルもマイクテスト用の言葉をもじっている。「花子とアン」の花子(吉高由里子)はラジオのおばさんをやっていた。なにかにつけラジオが朝ドラには登場してくる。
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