「おむすび」バイバイ糸島、神戸編突入【36話】


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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第36回を紐解いていく。

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結、ギャルファッションで旅立ち

第8週「さよなら糸島 ただいま神戸」(演出:盆子原誠)では、おじいちゃん(松平健)をなんとか説得し、結(橋本環奈)たちは神戸に向かいました。

少し長めのアヴァンは見送りシーン。
駅に、陽太(菅生新樹)おばあちゃん(宮崎美子)が見送ります。そこに永吉はいません。
結は陽太に、家族のように思っていた、お兄ちゃんみたいな弟みたいな、と言い、完全に陽太を振っています。報われない陽太。

神戸の震災で傷ついた心を抱えて糸島に来たとき、陽太が助けてくれたことを結は感謝します。彼女にとってとても大事なことだと思います。が、いかんせん、幼いときに陽太が結を守っていたエピソードが回想で描かれただけだったため、いまひとつぐっと来ない。
これをしっかり、本編として描いていたら、ここはかなりぐっと来たと思います。実感の大事さを考えさせられる場面でした。

私達は過去のことを実体験していないので過去として描かれたものにはどうも実感が沸かないようです。だからこそ、過去をいまと地続きと思わせるための方法を模索している。「おむすび」の場合、過去を過去として描いていて、極めてリアリストだなと感じます。実際、過去を実体験として認識することなんてできない、どうしたって漠然としてしまう。そういう現実を痛感させられます。

過去と分断されてしまう人間の本質を冷めた眼で見ている「おむすび」。
あんまり夢を持たせず、意外とドライだと思うのは、永吉の描写です。駅に見送りに来ないので、朝ドラあるある、主人公がバスや電車に乗っている途中で、ひとり見送る感動場面がくるかと期待したらーー
なくて、結たちが電車に乗って旅立つとき、永吉はひとり畑作業をしています。
松平健さんの存在感と糸島ロケのせいか、しんみりいいシーンでした。うんと引いた画とオルゴールの劇伴も良かった。

タイトルバック明けは、いよいよ神戸。
震災から12年、みごとに復興した商店街にはアーケードができていました。
本来、自分が率先して携わるはずだったアーケードを見て、聖人(北村有起哉)は早く、この街の役にたちたいと心を逸らせます。

商店街の住人たちは、あの頃と変わらず、みんな元気でにぎやかで、明るく結たちを迎えます。美佐江(キムラ緑子)は惣菜屋さんからパン屋に職種替えしていました。

みんな、結の変貌にはびっくり。なにしろギャルですから。
結は、12年前の地震のことを少し思い出し、心を揺らしますが、みんなの明るい歓迎に、忘れることができたようです。いや、はたしてほんとうに大丈夫なのか、どこかでひょいと傷が顔を出したりするのでしょうか。気になります。単に、思わせぶりな描写でないことを願います。

では、ここで、高橋テーラーの店主・高橋要蔵役の内場勝則さんのコメントをご紹介します。



Q1 出演が決まったときの気持ちは?

前回出演した『わろてんか』から7年。時間の流れは早いですね。また呼んでいただけるのはありがたいです。
震災を真っ向から描いている作品です。僕自身も大阪で阪神・淡路大震災を体験しました。風化させないためにもこうした作品は続けないといけないですし、作品と向き合うことで 30 年経て初めてわかることもあるのではと感じています。
今回、ぼくは神戸編での出演ですが、じつは糸島に縁があって。父の実家が福岡の博多で、父方の墓が糸島にありました。まだ僕の戸籍は糸島にあるんですよ。幼い頃、島に墓参りして海で泳いだ記憶があります。今回朝ドラで糸島が舞台と聞き、不思議な縁を感じましたね。

Q2 演じる役・高橋要蔵について

おそらく店を継ぐ気はなかったのに、仕方なく二代目を継いだのでしょうね。そのうち仕事が面白くなって今も続けているんでしょう。商店街でもリーダーシップをとるわけでも、重要なことをなにかするわけでもない(笑)。
ほぼヘアサロンヨネダに入り浸っていて、ただワイワイガヤガヤしています。そういえば僕の店は、一切登場しないんですよ(笑)。ほとんど理髪店に入り浸っている。いつ仕事しているんでしょうね(笑)

Q3 神戸編撮影時のエピソードについて

商店街のメンバーとは、この仕事で初めて会った方々なのですが、初めて会った気がしなくて、ずっと前から仲良しな感じがします。撮影にもすっと入ることができました。理髪店のセットがまた素晴らしくて。平成時代の漫画
があったり、コンサートのポスターが貼ってあったり、待ち時間の合間に、「こんなコンサートあったね」と皆でワイワイ思い出話に花を咲かせています。
米田家が神戸に戻ってきたシーンは、僕らの撮影も震災のシーン以来で久々だったので、本当の再会のようでした。商店街はひとつの家族みたいなもので、一人でも欠けたらアカンという感じがあるんでしょうね。みんなで集
まる理髪店は茶の間みたいな感じで、結ちゃんや歩ちゃんは“みんなの子ども”という感覚もあるんだと思います。これでピースが揃ったというか、「やっと帰って来たか」という思いなのでしょう。

Q4 視聴者へのメッセージと見どころ
物語では、今後もいろいろ問題が起きますが、人と人との繋がりがあれば乗り越えられる、ひとりじゃないよというメッセージが伝わってほしいですね。

(文:木俣冬)

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