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2023年03月13日

「Get Ready!」最終話:生きる価値とは?妻夫木聡×藤原竜也ら闇医者チームからの問い

「Get Ready!」最終話:生きる価値とは?妻夫木聡×藤原竜也ら闇医者チームからの問い

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妻夫木聡主演のドラマ「Get Ready!」が2023年1月8日放送スタート。

本作は、多額の報酬と引き換えに、手段を選ばず患者の命を救う正体不明の闇医者チームの活躍を描いたダーク医療エンターテインメント。闇医者チームのメンバーには、主人公で孤高の天才執刀医・波佐間永介(通称:エース)を妻夫木、その相棒である交渉人・下山田譲(通称:ジョーカー)を藤原竜也、凄腕オペナース・依田沙姫(通称:クイーン)を松下奈緒、若き万能ハッカー・白瀬剛人(通称:スペード)を日向亘が演じる。

本記事では、最終話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

「Get Ready!」最終話レビュー


13年前、自分が行った手術のせいで本来なら救えるはずだった少女の命を救えなかったエース(妻夫木聡)。その母親に「娘に生きる価値はなかったんでしょうか?」と問われた彼は、自分にしか救えぬ患者に“生きる価値”を問う闇医者になった。

患者に生きる価値があると判断した場合、エースは仲間たちに合図を送る。「Get Ready!」と。ついに迎えた最終話では、エースが闇医者として最後の手術に臨んだ。

ジョーカー(藤原竜也)が不在の中、闇医者チームに届いたのは「幼い娘を救ってほしい」という母親からの依頼。娘の結衣(小田愛結)は重度の左心低形成症候群を患っており、余命3カ月を宣告されていた。

しかし、母の香苗(徳永えり)は一人で結衣を育てており、生活が苦しく多額の報酬は望めない。にもかかわらず、闇医者チームの目に留まったのは、結衣が一泊十万もする千代田医大の特別室に入院していたからだ。


実は、結衣を特別室に入院させたのは染谷(一ノ瀬颯)だった。前回、婚約者である玲於奈(結城モエ)の命を救ってもらった染谷は、エースの技術をもってしてなら結衣を助けられると思い、闇医者チームに気づいてもらえるよう手配したのである。

そうとは知らないクイーン(松下奈緒)とスペード(日向亘)は「警察の罠かもしれない」と今回の依頼は見送りにしようとする。だが、エースが手術をすると言って聞かなかった。13年前に救えなかった少女・青葉(志水心音)と結衣のことを重ねているのだろう。どうしても救いたい気持ちはあるが、同時にトラウマからエースの手は震えが止まらなくなる。


一方、高城(沢村一樹)が指揮する警察の捜査は、闇医者チームの目前まで迫っていた。「最後は自宅で過ごさせたい」と香苗が突然結衣を退院させたことで、闇医者チームと繋がっているのではないかと彼らは踏んだのだ。

危険を察知したジョーカーは、自ら取り調べに応じる。だが、重要なことは何も吐かないジョーカーに高城は自分の過去を打ち明けるのだった。実は高城には4歳年下の妹がいたのだが、結衣と同じく左心低形成症候群で命を落とした。

通常の医療では助からなかった妹の命も、闇医者チームになら救えたのかもしれない。心のどこかでそう思っていた高城はこんな言葉をジョーカーに投げかける。

「君たちは今、法を破って命を救おうとしている。我々は法に従って命を奪うことになるかもしれない。正義とは悩ましいものです。そして今、その正義の運命を握っているのは君だ」


神様は、エースに医者として恵まれた才能を与えた。自分にしか救えない命がある。それはとても怖いことだ。その力で今にも消え入りそうな命を救うも救わないも自由。もし悪人が持てば、いかようにも利用して優位に立てる恐ろしい力である。

エースの場合は真摯に患者と向き合っていたが、他人にその力を利用された。結果として救えるはずの命を救えず、絶望したエースは一度医療界から退いだ。だが、かつてジョーカーに言われたようにエースは手放せなかったのだ。失われゆく命を目の前にした時に「救いたい」という気持ちが湧き上がる、医者としての性(さが)を。

偶然再会した青葉の母・広江(菊池亜希子)にエースは「これからもたくさんの命を救ってください」と声をかけられる。広江は青葉の死後、臓器提供を待つ子供を支援するNPOで働いているのだが、数年前から匿名で多額の寄付が届くようになったという。そう、エースが闇医者として稼いだお金を寄付していたのだ。


エースが闇医者になった当初の目的は、自分の力を利用した者たちへの復讐だったのかもしれない。だけど、一番は「救える命があるのならば、救いたい」という純粋な願いによるものだ。

エースのような力が有る無しにかかわらず、その願いは人間が普遍的に抱いているもの。高城が言うように、闇医者チームを捕まえることは彼らが救えるはずだった命を奪うことになる。

だけど、それは本来誰も望んでいない結果だ。命と天秤にかけたら、法という力でさえも揺るぎ始める。


そのことを交渉人であるジョーカーはよく分かっていた。最後に彼は、高城にある交渉を持ちかける。それは米国の高官をエースに手術させる代わりに、自分以外の仲間たちの罪を免責してほしいというもの。ジョーカーは高官を救えば、米国政府への交渉を日本政府が優位に進められるという国家も動かす大きな切り札を切ったのだ。

だけど、それは高城に結衣の命を救うための言い訳を与えたに過ぎないのかもしれない。医者である染谷が法を犯す闇医者チームに希望を見出したように、また警察である佐倉(矢島健一)が彼らを捕まえられなかった(=結衣の命が救われた)ことに思わずホッとしてしまったように、誰にとっても命は尊い。結局のところ、本作が伝えたかったのはそういうことなんじゃないだろうか。


結衣の手術を成功させた後、エースは一度チームを解散する。だが、その一年後にまた出所したジョーカーを含めた4人でチームを結成することになった。

「俺はこの手が動く限り命を救い続けたい。それが俺の生きる価値だ」

生きるに値しない生など、この世には存在しない。本人が生きたいと思うのならば、それだけで十分に価値がある。当たり前のことだが、その当たり前が揺るぎやすい時代において、改めて命の尊さを突きつけるこのドラマは必要だったと言えるだろう。

(文:苫とり子)

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