インタビュー

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2023年05月18日

『街録ch』三谷三四郎が語る絶望と希望——YouTubeで目指す幸せなディレクター人生とは

『街録ch』三谷三四郎が語る絶望と希望——YouTubeで目指す幸せなディレクター人生とは



2023年5月24日(水)、豊洲PITにてイベント・街録chライブ『笑える絶望2』が開催される。フリーランスディレクター・三谷三四郎氏が運営するYouTubeチャンネル『街録ch』のリアルイベントで、東野幸治や平成ノブシコブシ・吉村崇、大森靖子らが集う、豪華なライブになる予定だ。
『街録ch』は、様々なバックグラウンドを持つ人物に、三谷氏がひたすらインタビューをするチャンネル。取材人数は、なんと800人を超えているという。チャンネル開設の背景には、三谷氏がそれまで働いていた“テレビ業界”に対する絶望がある。かつて感じていたというテレビ業界への憤り、インタビューを続ける理由、そしてYouTubeチャンネルがリアルイベントを決行する裏側について、話を聞いた。


お金より、幸せなディレクター人生を

——三谷さんは、元はテレビ業界でフリーランスのディレクターをしていたそうですね。なぜテレビ業界を辞めたのでしょうか?

三谷:フリーランスディレクターの最高峰って、どう頑張っても「雇われ店長」だなと気付いたんです。権限もないし、最終的にはテレビ局員の指示に従わざるを得ない。この仕事を続ける限り、自分の好きなものを自由に作れるようになる未来は来ないなと。意外と、希望のない世界だなと思っちゃったんです。業界自体、古い体制ですしね。

——具体的には、どんなことがあったんでしょうか?

三谷:たとえば、なにか企画を始めるにしても形にするまでに1か月。そこから放送されるまでに1か月半かかったりする。しかも、“局員を説得するための期間”もあったりします。

以前「今流行ってるドリンクを調べてほしい」と言われたことがあります。でも、その当時は新型コロナが流行し始めた時期だったんですよ。つまり、人が外に出ていないので流行自体が生まれていない。ちょっと考えれば分かることですけど、ダイレクトに伝えてしまうと局員のプライドが傷付いてしまうじゃないですか(笑)。だから、その人を納得させるために“流行っているドリンクは無い”というリサーチをするわけです。



——企画を捨てるために、時間をかけてリサーチするということですか?

三谷:そうです。何週間もかけてリサーチしても、時間の無駄なんです。本来であればもっと早いスパンで作れるのに、ただ時間を使っているだけみたいな状態。面白いものを作るために、真っ直ぐ時間を使えていないんです。

あと、「他とは違う新しい番組を作りたい」と言うくせに、他局で流行った番組の模倣をしたりもするんです。「あの番組っぽく撮ってきて」みたいな指示をされたこともありますよ。そんなことが続いて、「こんな面白くない世界でずっと働かなきゃいけないのかな?」って思っちゃったんです。

ただ、一方で「俺はこの人たちからお金をもらってるんだから、言うこと聞かなきゃいけないよな」とも思って。お金をいただいている以上は文句を言うのも筋違いだと思ったので、テレビ業界で出世することは諦めようと。

——フリーランスという言葉だけ見ると自由に思えますが、実際やっていることは“社畜”みたいな感じだったんですね。

三谷:そう、社畜になってたんです(笑)。落ち着きがない子どもだったので、親からは「スーツを着れるような仕事は絶対できないよ」って言われてたんですよ。それなのに、いつのまにか中間管理職みたいなことをやっていました。

上から言われたことを下に指示して、上が納得しそうな雰囲気のものを仕上げて提出するみたいな。フリーランスで出世した先にあるのは、そういう仕事ばかりです。偉くなると、現場にも出なくなりますしね。別に、この働き方が悪いと言っているわけではないですよ。そういう仕事が好きで、向いている人もいますから。ただ、僕がやりたいこととは違っていただけで。


——YouTuberへの軌道変更は、自分が「面白い」と思える仕事をするためだったんですね。

三谷:『街録ch』を始めた当初は、お金になるかも分かりませんでした。でも「自分は面白いことをやってる」と思えることをやっているほうが、ディレクター人生としては絶対に幸せだと思ったんです。

——ひと昔前までは、「YouTubeはテレビより下」という風潮があったと思います。テレビ業界からYouTubeに活動の場を移すことに、抵抗は無かったんですか?

三谷:YouTuberさんが出てきたくらいの時期は、「YouTubeはチープで面白くない」みたいな見方をする人はいましたね。特に、僕よりも上の世代にそういう人が多かったように思います。その影響を受けて、僕も「面白くない」と思っていた時期がありました。でも、YouTuberを見て「めちゃめちゃうらやましい」と思ったんですよ。

テレビ業界はなにをするにしても許可取りが必要だけど、YouTubeでは自由に撮影や編集をしている。仮に僕が同じような動画を作っても、テレビ局は絶対にOKを出しません。その映像がよくないからではなく、テレビの様式美に当てはまらないだけなんですけどね。YouTuberと自分を比較したとき、自分のいる世界が「窮屈だな」と思っちゃったんです。

——実際にYouTubeに力を入れ始めてからは、どう思いましたか?

三谷:それまでよりも強く、「YouTuberって、とてつもないことをしているんだな」と思いました。テレビは1番組作るのに何十人も関わるけど、YouTubeは基本ひとりですべてやるじゃないですか。駆け上がっていくために考えて、作って、毎日投稿して……。「面白いものを作りたい」という気持ちは、テレビ業界にいる人より強いんじゃないかなと思います。

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