「らんまん」竹様(志尊淳)の洋装。「カラダの半分が足だね」<第37回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第37回を紐解いていく。
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家賃は竹雄の稼ぎから?
張り切って大学に来たものの、疎外感を味わう万太郎(神木隆之介)。学生からは「君とは違う」と距離をとられ、徳永助教授(田中哲司)は「よそ者」と冷たく、ほかの学生たちもあからさまに避けていきます。研究室のボス・田邊教授(要潤)が許可したにもかかわらず、誰ひとり、万太郎に親切にしないところは、むしろすがすがしい。ふつう、田邊におもねって、万太郎に本音はともかく親切にする人物もいそうなものですが、それがないというのは、みんなちゃんと自立しているとも言えるでしょう。
やって来た画工・野宮朔太郎(亀田佳明)も、植物画を見せてほしいと万太郎が頼むと、「君、よそ者でしょ」とぴしゃり。とはいえ、教授の許可をもらってきます、と言うので、ほかの人よりは割り切ってはいるようです。教授の言うことは聞くけれど、個人的には「よそ者」を認めない。
万太郎は植物が好きで、植物を愛する者同士、仲良くしたいのでしょうけれど、相手はそういう気持ちにはさらさらなれません。
研究室の人たちの気持ちに、クサ長屋の差配・江口りん(安藤玉恵)が理解を示します。
「よそから来る者はこわいよ」
(りん)
万太郎は善意100%だけど、相手側としたら、どんな人が簡単にはわからないから身構える。それが世の中というもの。
「わからないものは気味悪いよ」
(りん)
りんが、そう言ったとき、手を付けていないステーキが映ります。
万太郎がお世話になっている彼女にごちそうしたものですが、ナイフとフォークで食べる、外国人の食べ物である、分厚い肉は、食べたら美味しいけれど、初見では不気味なものです。
誰もが美味しそうと思う肉すら理解できないとこわいもの。差別ない平等とはこういう認識があってはじめて可能になるのです。
「お箸ちょうだい」とりんに言われて、箸を持ってくる竹雄(志尊淳)。このお店でボウイとして働くことになった竹雄は、真っ白な洋装(金ボタンに白手袋)がお似合い。シュッとしている。
「竹ちゃん、カラダの半分が足だね」
(りん)
となんだか見違えたようで、女性客の視線を独り占めします。
竹雄の場合、服を替えたら、ポテンシャルが発揮されて、注目度が上がった。それまで誰にも注目されず脇役(使用人)だった彼が外の世界に出たら、いい方向で注目されたパターンです。
キランソウという花に万太郎がたとえる竹雄の輝きを、単にサービス場面ではなく、いる場所によって見られ方が変わるという社会の仕組みの一例として描いています。ステーキを食べることに戸惑い苦労するりんの姿は、明治になって急速に欧米化した日本を表しているようでもあります。
「らんまん」はものすごーく俯瞰で世界を眺めていて、一方的な私情にまみれていないから心が楽になります。
今日はしょんぼりの万太郎でしたが、家賃は竹雄の稼ぎでなんとかなると、お気楽お坊ちゃんの面は変わっていません。「あさイチ」で博多大吉さんにもツッコまれていました。しかも、りんへのごちそうは、もしかして竹雄のおごりってことでしょうか。
キランソウは地獄に落ちずに済むと言われる花ということは、竹雄のおかげで地獄に落ちずに済むという意味かと思ったら、竹雄の役割、ものすごく重要です。
(文:木俣冬)
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