インタビュー

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2023年06月13日

『育休刑事』のパパ刑事役は新境地!?キャリア10年目を迎える金子大地が見据える、次なる地平とは

『育休刑事』のパパ刑事役は新境地!?キャリア10年目を迎える金子大地が見据える、次なる地平とは


「『育休刑事』でのお芝居はある種のトライ」

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──確かに。でも、その両方の表現を皮膚感覚で知っているというのも、金子さんの強みだと思うんですよね。話題の配信ドラマ『サンクチュアリ ー聖域ー』(Netflix)にも出ていらっしゃいますし。


金子:出番はそんなに多くないんですけど、『サンクチュアリ〜』では『育休〜』の春風とは正反対なクズ野郎の役をいただいて。今まで数々のクズを演じてきましたが、ぶっちぎりのクズをやっています(笑)。一ノ瀬ワタルさんが演じていらっしゃる猿桜=小瀬清のタニマチ(・村田拓真)役なんですけど、清々しいくらいの憎まれ役なので、こちらも観ていただけたらうれしいですね。

でも、『鎌倉殿の13人』(NHK総合ほか/22年)の(源)頼家のように感情を爆発させる人物だったり、あるいは繊細で壊れやすいような人だったり、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系/18年)のモンスター新入社員だったり、特徴的なキャラクターを演じることが多かったので、『育休刑事』みたいにフラットな作品でのお芝居はある種トライでもあったなと思っていて。何にしても春風のように素直な役を演じられたことは、自分にとってすごく良い経験になりました。

──『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21年)の自動車教習所教官・新谷歩役のように、さわやか系の役も演じていらっしゃいますよね。

金子:でも、あの役も黒木(華演じる早川佐和子)さんと社会的に許されない恋をしちゃいますし(笑)。ただ、(堀江貴大)監督からは「マンガから飛び出してきた雰囲気で演じてください」と言われたので、さわやか系に入るのかな……? それで言うと『サマーフィルムにのって』の凛太郎も好青年でしたけど、まだまだ、もっといろいろな役を演じてみたいです。

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──キャラクターもさることながら、さまざまな職業の役がこれから増えてくるかもしれないですね。

金子:何度かご一緒した作り手の方からすると、「大地はこういう役、得意だよね?」って把握してくださっていると思いますし、自分でもその辺の自覚はあるんです。繊細な役だったり、鼻持ちならない若者の役だったり。

だから、そうじゃない役を今後は演じていくためにも、準備をしていかなければいけないなと思っていて。少しずつ見えてきた30代へ向けて、もうワンステップ大人になった役を演じられるかどうか──というところが、僕の課題なのかなと。クズ役は『サンクチュアリ〜』でやりきった感もあるので(笑)、そうじゃないところで幅を広げていきたいですね。

そういえば(村上)虹郎と会ったときに、「大地はアミューズの若手の中でも一番泥水をすすっている俳優だよね」と言われたんですけど、「そうか、周りにはそういう風に見えていたりもするんだなぁ。でも、確かにアミューズの若い俳優は華やかというイメージがあるかもしれないからなぁ」って、何か妙に納得してしまって(笑)。

──すすった泥水は、いつかきれいな水へと浄化されて放出される、という捉え方もできますよね。でも、どんなにクズの役で共感ができなくても、演じる以上は理解しようと努めるのだろうなと想像しているんですが、金子さんの場合はいかがですか?

金子:そうですね……人間誰しもウラとオモテがありますし、多かれ少なかれ悪意を持っていたりもするじゃないですか。それを隠しながら生きているわけですけど、芝居の世界は唯一、そういった自分の恥ずかしい部分だったり、隠しておきたい部分だったりを見せられる場でもあるんですよね。役者はそれを見せる勇気があるかないかだと、僕は思っていて。

自分としては何も恥ずかしいものはないですし、それをさらけ出したときにどう見えるかに本質があるんじゃないかなって。だから、どこまでさらけ出せるか、そしてどこまで思いやりを持てるかということをずっと考え続けなきゃいけない仕事なんじゃないかな、と捉えています。

ただ、単にさらけ出すだけなら自分のやりやすい環境に芝居を持っていくこともできるんですよ。でも、それだと面白くないし、自分だけが気持ちよくなっているお芝居ほど、客観的に見てつまらないものもないんです。そうじゃなくて、いかに自分を不安定にするか──みたいな作業が最近は面白いなと感じているんですけど、お芝居そのものは難しくなっていくばかりですね。何が正解なのかはずっと分からないままです。

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──それはいわゆる、見ている側に考えさせる、あるいは想像させるお芝居をしたいということでしょうか?

金子:ちょっとした余白を残しておきたいんです。お芝居に役者の自我が出ちゃうと、見ていて「ウッ」と胸焼けしちゃうと思うので。と言いつつ、『サンクチュアリ〜』の村田はウザさ100%の役なので、むしろ自我を出しまくっていて(笑)。とにかく観ている人をムカつかせたいと思っていたので、余白ゼロ・ウザさMAXで演じました。でも、少しずつでも余白のある素敵な俳優になっていけたら──と思っています。

──期待しております。で。これが締めの質問になりますが……金子さんがオーディションを受けて合格してから、今年の秋でちょうど10年目の節目に入ります。

金子:えっ、もう……!? この10年で何か残せたのかな──? 

──ご自身としては、まだまだ達成感も充実感も得られていない、と?

金子:いえ、素晴らしい作品と素敵な人たちと出会うことができた10年だったので、そこに対する感謝の思いは常に忘れないようにしていて。それもこれもご縁とタイミングなので、これからも焦らずにがんばろうと思います。ただ、「焦らずがんばる」って言っているときが、実は一番焦っていたりするんですよね(笑)。何にしても、これまでにご一緒した方々とは再びのご縁を、まだご一緒していない方々とは新しく素敵なご縁をいただけるように、ひたむきにお芝居と向き合っていく心づもりでいます。

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(撮影=Marco Perboni/取材・文=平田真人)

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