インタビュー

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2024年02月29日

息子役が「錦戸くんでよかった」リリー・フランキーと錦戸亮が現場で紡いだ絆

息子役が「錦戸くんでよかった」リリー・フランキーと錦戸亮が現場で紡いだ絆

3月1日(金)に映画『コットンテール』が公開となる。

本作はローマ国際映画祭で最優秀初長編作品賞を受賞した日英合作だ。長年連れ添ってきた妻・明子が夫・兼三郎に遺した言葉は「イギリスのウィンダミア湖に遺灰を撒いてほしい」。妻の願いを叶えるため、兼三郎は疎遠だった息子・慧とその家族と共にイギリスへと向かう。しかし、互いに長年のわだかまりを抱えている父と息子はことあるごとに衝突し……。

今回、父と息子という関係性を演じたリリー・フランキーと錦戸亮。インタビュー現場で顔を合わせると、嬉しそうにしっかりと握手をした。初共演ながら、築かれたその絆とは。

この息子がいるからちゃんと父親に見える

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――錦戸さんは『羊の木』(2018年)以来の映画出演となります。

錦戸亮(以下、錦戸):撮影自体が2021年。僕ごとなんですけど、2019年に独立したりいろいろあった中でいただいたオファーでした。
リリーさんが出演されるであったり、パトリック監督のことだったりをお聞きしてぜひお願いします、と。すごく光栄なことでしたから、精一杯できることをやろう、と撮影に臨みました。

――今回、初共演になるかと思うのですが、いかがでしたか?

リリー(以下、リリー・フランキー):前からすごく好きな俳優さんだったんですよ。最初に観たドラマが「ラストフレンズ」だったかな。あと吉田大八監督の『羊の木』も本当に素晴らしかった。当時、アイドルなのに、オフビートの受けの芝居をすると言うか。キラキラした役というよりも……。

錦戸:普通というか。

リリー:ずっと心に溜め込んで、耐える役だよね。今回の慧も思っていることをじっと溜め込んで、不器用に真面目にやる。すごく難しい役で、これは本当に亮ちゃんでないとできない役ですね。あと、監督がイギリス人だから、日本人が出ているけれど、日本人にない感覚がたくさん入っているんですよ。

錦戸:ありましたね。

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リリー:例えば、慧が父親ともっと話をしたかった、というシーンは、ヨーロッパの映画ではよく観るけど、日本人の親子だとあまりない関係。たぶん、イメージとしては亮ちゃんにパトリックの想いをしゃべらせているんですよね。
でも、あのやりとりを成立させるのがなかなか難しい。なんか、この人が慧の顔しているのを見ていると、ちょっと泣けてくるんですよ。2人で話すシーンが多いからね。

錦戸:最後のほうにもありますもんね。

リリー:それに、このおっさん(兼三郎)があんまり話さないから、ほとんど慧が喋ってる。

錦戸:確かに、慧がバーッと喋って、兼三郎がボソッと何か言って。

リリー:だから、本当に錦戸くんでよかったな。すごくやりやすくさせてもらいました。この息子がいるから、このふんわりしたおじさんがちゃんと父親に見えるんですよね。

まるで「世界中のお父さんの言い訳を聞いているよう」

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――錦戸さんが演じられた慧は息子であり、父親でもあるという立場ですが、その立場から見て、兼三郎にどのような印象を持たれましたか。

錦戸:慧にとっては母親ですけど、最愛の人を亡くしているわけじゃないですか。ああなるのは僕は理解できるとは思います。前を向こうよ、という気持ちはあったとしても、そこはケツ叩くことでもないし。
少しずつ、衝突することで整理されていく部分もあると思いますから、何か……こうしてほしい、ああしてほしいというのはたくさんあると思いますけど、何よりやっぱり「悲しいよね」という理解はあると思います。

リリー:あとやっぱり慧の存在感が説明していないところも説明してくれるんですよ。この人はお母さんっ子だったんだろうな、という感じがするし、お父さんが仕事を言い訳に家族をないがしろにして、葬式に行くのさえもケツを叩かれ……。

錦戸:冒頭からそうですね(笑)。

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リリー:ずっとこの人はこうだったんだろうな、と。そんな売れっ子の小説家でもなかったのに、慧に詰められると「いや、忙しかったんだよ」って言ったり。でもこれは世界中のお父さんの言い訳を聞いているかのようなんですよね。
慧は逆に、反面教師というか、こういう親にならないでおこうとしている。子煩悩だし。

――いいお父さん、という感じでしたよね。

錦戸:……になろうと努力してるというかね。

毎日おにぎりを握っていた錦戸亮

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――撮影に入る前に何かおふたりでお話されたんですか?

錦戸:特にはしてないですよね。

リリー:最近、斉藤和義さんと会ってる? とかそんな話よ(笑)。

錦戸:はははっ。やっぱり隔離という苦しみを一緒に経験しているのが強かったですね。

リリー:あれはつり橋効果だよね。

錦戸:みんな耐えてると思ったら……(笑)。

リリー:そうそう、取材のネタになりますよね、って言っていたのが、この人が古風というか。イギリスのものを全く食べようとしないんですよ。日本から米を持ってきて炊いて、みそ汁作って。

錦戸:そうです、そうです。毎朝、自分で作って。

リリー:ケータリングも美味しそうなのに食べずに自分で作ったおにぎりばっかり。で、隔離が終わって出られるようになったら、ロンドンの日本食屋さんに行ったり。

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錦戸:パブも行きましたよね。ビール飲んでイギリスを感じてました。

リリー:ロンドンで1週間ほど滞在した後に湖水地方に行ったのもおもしろかったね。でもコロナで閉まっている店も多くて、晩飯を食べるのに苦労しました。

錦戸:だから僕はおにぎりで済ませてました(笑)。

リリー:正解だったかも(笑)。

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――ちなみにお米はどれぐらい持って行かれたんですか。

錦戸:1合のパックが10個で1セットになっているものを多分2、3パック……。

――だいぶですね(笑)。

錦戸:あれで僕はもう生きられたので(笑)。

リリー:そんなに自分でおにぎり食べそうなイメージがなくない? おにぎりを握りそうじゃないじゃないですか。

錦戸:ラップで包んで作ってました。

リリー:やっぱり面白いな、この人って思いましたね。

錦戸:そこだけは譲れなかったんですよね。

家族でも「言葉にしないとわからないこともある」

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――兼三郎と慧は優しさがありつつもすれ違いがあります。どの家族でも多かれ少なかれあることだとは思うんですが、家族が円満に過ごすためにはどうしたら良いと思われますか?

リリー:兼三郎は昭和のお父さんというか。仕事を理由に、家族のことは奥さんに任せているし、言葉が足りない。でもなかなか、日本人のメンタルで家族としっかり言葉のコミュニケーションができる人は少ないですよね。でもこの映画の中で慧が言っていたように、やっぱり言葉にしないとわからないこともあるだろうから。
錦戸くんは実際に家族とは仲良いもんね。

錦戸:めちゃめちゃ仲いいですね。

リリー:やっぱり家に帰ったらよく喋るの?

錦戸:僕は14~5歳ぐらいから家族と過ごす機会がどんどん少なくなっていっていて、ひどいときは 1年に1回とか。会いに行こうと思えば、ほんまは会いにいけるんですけど、やっぱり大阪におるんで。
それこそ、この映画の撮影が終わってからすぐ、大阪に戻ってしばらく住んでたんですよ。でも、大阪におってもめっちゃ会いに行くわけでもなかったので、なんで会える状況なのに会いに行かへんねやろ?っていう後ろめたさがあったんです。
正直、親ってあと何回会えるか分からないから、できるうちはたくさん話そうとか、一緒に酒飲んだりはしとこうと思います。だから秘訣は後ろめたさじゃないですか。

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リリー:それが錦戸くんみたいに親が生きている間に気付けた人と、親が亡くなってから気づく人がいるよね。でもどれだけ親孝行したって絶対みんな後悔するから。

錦戸:そうですよね。

リリー:だから、もう親のためじゃなくて、自分のためにやったほうがいいっていうのはあるかもしれない。

世界が愛おしく見える

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――最後に。兼三郎は「いつも自分だけの世界にいる」、そして慧は「その世界の中に入れてほしかった」というセリフが作中にあったんですが、おふたりが自分の世界の中で大切にしていることはなんですか?

リリー:この人はいっぱいありますよ。趣味人でもあるし、没頭することがたくさんある。

錦戸:なんやろな……。やりたいことをちゃんと好き勝手にやることじゃないですか。綺麗に生きてるわけでもないし、欲に任せてる部分ももちろんたくさんありますし。
だから、最終的にね、僕が死んだときに、なんか寂しいなって泣いて、笑ってくれたりとかしたらいいなって漠然と思うだけで。生きている中で何か考えて、というのは正直今はまだ思いつかないですかね。

リリー:似た感覚ではいるけど、他の人から見たら、「その世界に私を入れてくれなかった」となるんでしょうね。だから、慧の願望を叶えるのはなかなか難しいですね。
例えば、親や家族が一生懸命になっている世界に俺も混ぜて欲しいっていうのは難しいですし。

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錦戸:タイミングもあるでしょうしね。

リリー:でも海外のニュースの中で見る人たちもこの映画の中で言っているようなことと同じことを考えて、同じ問題に直面しているんでしょうね。あの戦場にいる人も、今ここでライブをやっている人も、結局同じ家族の問題を抱えているんだろうな、と思うと世界が愛おしく見えます。

(ヘアメイク=Aki Kudo<リリー>、加藤恭子<錦戸>/スタイリスト=本多徳生<錦戸>/撮影=渡会春加/取材・文=ふくだりょうこ)

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